会社法
6章 会社法(改訂・最新化版)
1.ミャンマー会社法の概略
1-1.ミャンマー会社法の変遷
ミャンマーでは、イギリス統治下において制定された旧会社法(Myanmar Companies Act, 1914)が、一部改正などはあったものの長らく適用されてきました。その後、新会社法(Myanmar Companies Law, 2017)が 2017年12月6日に公布され、翌年の 2018年8月1日より施行されました。【改訂1】新会社法は、オーストラリアの会社法などを参考に作られたと言われています。新会社法の施行に伴い、会社登記などを行うオンラインシステム(MyCO:Myanmar Companies Online)も導入され、これ以降、オンライン上で処理がなされるようになりました。
【追記8】MyCOの一般公開アクセスについて MyCOは本来、企業登記情報を広く検索・閲覧できる公開登記簿として設計されています。もっとも、2021年2月の政変以降、当局が公衆による企業登記情報へのアクセスを停止しており、第三者が登記情報を自由に検索・取得することは現状では制限されています(出典:米国国務省 2025 Investment Climate Statements: Burma)。申請・届出のポータルとしての機能と、一般公開の可否は分けて理解する必要があります。現地での運用状況を都度ご確認ください。
また、ミャンマーの会社法の他に、特別会社法(Special Company Act, 1950)というものがあり、国営企業などの特殊な会社は、特別会社法に基づいて設立・運営されており、特別会社法は、新会社法の施行後も引き続き有効な法律として機能しています。
旧会社法と新会社法の重要な変更点として、「外資企業の定義」が変わり、また、全ての外資企業に要求されていた「営業許可」の取得が廃止されたことが挙げられます。
従来、外国資本が1株でも保有していれば、全て外資企業として区分され、ミャンマー国内において行う事業活動について「営業許可(Permit)」の取得が必要で、その過程で所管省庁の承認を経る必要がありました。
しかし、新会社法においては、外国資本の持分割合が35%を超えない限り、外資企業には区分されません(第1条(c)(xiv))。【改訂2】また、外資企業に区分されても営業許可の取得は求められなくなりました。営業許可の取得は、ある意味、許可された範囲でのみ活動ができるということですが、新会社法下においては、事業活動の範囲については会社定款にすら記載することを求めず、他の法令の制限に従うという規定にとどまります。実際には、ミャンマー投資法に基づく規制とそれに紐づく省令などに定められるだけとなり、それらで禁止・制限されていない業種については、何らの手続なしで行うことが認められるようになりました(明確なネガティブリスト形式への移行)。
1-2.新旧会社法の主な相違点
項目 | 旧会社法(1914) | 新会社法(2017) |
|---|---|---|
外資企業の分類 | 1株でも外国資本が保有している会社 | 外国資本の持分比率が35%超の会社 |
株主の数 | 最低2名 | 最低1名 |
取締役の数 | 最低2名 | 私会社:最低1名/公開会社:最低3名(うち1名はミャンマー国民)【追記6】 |
最低資本金 | 外国企業は50,000米ドル | なし |
営業許可取得 | 外資企業は必要 | 不要 |
小会社規定 | なし | 各種免除規定あり |
なお、本章では、現行法である新会社法(Myanmar Companies Law, 2017)に関して、その理解・解釈について解説をしていきます。
2.会社及び法人
2-1.設立および登録可能な会社の種類
会社法上、同法に基づき設立可能な法人の種類として以下のものが列挙されています(第2条)。
- 有限責任株式会社(company limited by shares) — 非公開会社(private company)と公開会社(public company)に区分。
- 有限責任保証会社(company limited by guarantee)
- 無限責任会社(unlimited company)
有限責任株式会社は一般的な法人形態で、ほとんどの会社はこの形態で設立されています。その中で、株式の公開性(譲渡制限の有無、公募の有無)によって、非公開会社と公開会社に区分されます。
非公開有限責任株式会社(a private company limited by shares)は、株主数が50名以下(会社従業員は含めない)とされており、会社定款において株式の譲渡制限を規定することも許容されています。また、株式の市場流通を想定していないため、株主保護のための手続の一部について簡略的な対応が許容されています。
一方、公開有限責任株式会社(a public company limited by shares)は、株式の市場流通を想定しており、株式の譲渡制限を規定することができません。株式公開を進める企業以外で、公開会社を採用することは多くありません。
なお、設立された法人の種類の変更については、以下のケースが可能とされています(第57条)。
- 非公開有限責任株式会社から公開有限責任株式会社への変更
- 公開有限責任株式会社から非公開有限責任株式会社への変更
- 有限責任保証会社から有限責任株式会社(公開・非公開)への変更
- 無限責任会社から有限責任株式会社(公開・非公開)への変更
また、法人の設立以外に登録可能な組織形態として、以下のものが列挙されています(第3条)。
- 事業組合(business association)
- 海外企業(overseas corporation)
- その他の法律で登録が認められた法人
- 連邦大臣が定めるその他の団体
通常、外国企業の現地法人(子会社や合弁会社)は「非公開有限責任株式会社(private company limited by shares)」が用いられます。支店や駐在員事務所の設置の場合には「海外企業(overseas corporation)」が用いられ、支店と駐在員事務所には会社法上の区分に違いはありません。
(会社の能力と権限)
ミャンマー会社法に基づき登記される会社は、株主とは異なる独立した存在として登記が抹消されるまで存在するとされ、また、ミャンマー国内外におけるあらゆる事業活動・行為を行う完全な法的能力を有するとされています。それには以下の事項が含まれます(第5条(a))。
- 株式・社債もしくは株式に転換される有価証券の発行
- 株式または社債を引き受けるための権利付与
- 会社の財産に対する担保権付与
- 株主に対する会社財産の分配
会社の能力や権限を制限する場合に限り、会社定款によって会社の能力・権利・権限・特権に関する条項を記載することが認められます(第5条(b))。つまり、会社の事業目的を記載する場合にはポジティブリスト形式の制限がかかるため、活動範囲を広げておく方が望ましい場合には、会社定款に事業目的を記載しない方がよいと言えます。ただし、合弁会社や外部から取締役を招聘するような場合には、取締役の暴走を防ぐ目的で、会社定款において事業目的を定め、その範囲でのみ運営するよう制限する意味はあります。
また、会社は他の会社の持株会社として行動することが可能で、複数の子会社の株式を保有することも認められています(第5条(c))。
2-2.非公開有限責任株式会社(private company limited by shares)
一般的に、多くの地場企業や外国企業の現地法人(子会社・合弁会社)で採用されている「非公開有限責任株式会社」について詳細をまとめます。
(会社の必要要件と機関) 非公開有限責任株式会社には以下が必須です(第4条1項)。
- 商号
- 会社定款
- 最低1株の株式発行
- 最低1名の株主
- 最低1名のミャンマー居住者である取締役
- ミャンマー国内の登記住所
また、任意で、取締役とは別に秘書役(secretary)の選任および会社印(common seal)の保持も認められています(第4条2項)。
2-3.海外企業(overseas corporation)
海外法人としてミャンマーで事業活動を行う場合には、海外企業(overseas corporation)として登録しなければならないとされています(第43条(a))。会社法上はいわゆる「支店」と「駐在員事務所」の区分がないため、いずれも海外企業として登録されます。なお、銀行や保険会社では所管当局のライセンス上、支店と駐在員事務所が明確に区分されますが、会社法上の取扱いは同一区分です。
ただし、以下の行為はミャンマーにおいて事業を行っているとはみなされず、これらの活動のみを行う場合には海外企業としての登録は不要です(第43条(b))。
- 裁判の当事者になること、裁判手続を行うこと、係争などの解決を図ること
- 取締役会・株主総会の開催や内務の管理に関わる活動を行うこと
- 銀行口座を保有すること
- 独立した契約者を通して資産の売却を行うこと
- ミャンマー国外で承諾される場合のみ拘束力を持つ契約の申込を勧誘・斡旋すること
- 金銭の貸与、債務の証書の作成、または財産に対する担保権の設定
- 債権の保全・回収、または当該債務にかかる担保権の実行
- 複数の類似取引が繰り返されることなく、30日以内に完了される単発契約の履行
- 自己資金の投資または資産の保有
ただし、登記官もしくは連邦大臣により、随時「事業を営んでいる」か否かに関する指針が別途発表される可能性があるため注意が必要です(第43条(c)(d))。
3.会社定款
3-1.会社定款
登記時に登録する定款は、投資企業管理局(DICA)が公表しているモデル定款をそのまま使用するか、企業独自の定款を作成・採用するかを選びます。会社、取締役会、各取締役、各株主(後日登録される新株主を含む)は会社定款に拘束されます。
非公開有限責任会社の場合、会社定款に「株主が有限責任であること」「発行予定の株式の種類および当該株式の表示通貨」「少なくとも1株は引き受けられなければならないこと」を記載しなければなりません。
会社定款の内容には、会社法に記載されている項目のほか任意の項目を含むことが可能(定款自治)ですが、会社法と矛盾する内容が記載されている場合、その項目は無効となります。
会社定款はミャンマー語で作成しなければならず、ミャンマー語に加えて英語での作成・採用が認められています。また、連続した番号により段落分けされた構成であることが求められます(第16条)。
設立形態ごとの追加必要事項は以下のとおりです。
・有限責任株式会社の場合(第13条)
- 商号 — 非公開会社:末尾に「Limited」または「Ltd.」/公開会社:末尾に「Public Limited Company」または「PLC」
- 株式の責任が限定されている旨
- 発行予定の株式の種類・通貨単位
- 設立時およびその後の株主は最低一株を所持すること
・有限責任保証会社の場合(第14条)
- 商号:末尾に「Limited by Guarantee」「Ltd Gty」
- 社員の責任の限度が補償金の範囲内であること
- 各社員が会社に所属している期間(もしくは過去一年以内に所属していた期間)に清算手続が開始された場合の、契約に基づく会社の義務・債務の支払い、清算費用・手数料の支払い、清算出資者間の権利調整のための清算出資の引受け(明示金額を超えない範囲)
- 会社が株式資本を有する場合:発行予定の株式の種類・通貨単位/設立時社員は最低一株を保有
・無限責任会社の場合(第15条)
- 商号:末尾に「Unlimited」
- 株主の責任が限定されていない旨
- 発行予定の株式の種類・通貨単位
- 設立時およびその後の株主は最低一株を所持
上記のとおり、ミャンマー会社法では会社定款に事業目的の記載義務はなく任意とされており(第12条(b))、モデル定款にも記載はありません。そのため、事業目的を規定しなければ、定款に縛られることなく事業を行うことが可能です(ただし、外資規制のある業種は別途許可が必要です)。
3-2.会社定款の変更
会社定款は、株主総会特別決議によって変更でき、決議日から28日以内に変更後の定款を登記官へ登記申請しなければなりません。登記が完了しない限り、変更後の定款は効力を有しません(第17~19条)。なお、変更前から株主であった者の責任が増すような変更は、別段の同意がある場合を除き効力を及ぼしません(第20条)。
3-3.会社定款の謄本請求権
全ての株主は会社定款の写しを請求する権利があり、請求および会社所定の費用(合理的な範囲に限る)の支払いがあった場合、請求から14日以内に写しを提供しなければなりません(第21条)。応じない場合、各違反につき10万チャットの罰金が科せられます(第22条)。
3-4.モデル定款
モデル定款は、必要要件を満たしつつ、過度に運営を縛らない柔軟な設計になっています。100%子会社で取締役も全て親会社が選任するような場合には、親会社の方針に反することが考えにくいため、モデル定款で十分と考えられます。一方、合弁会社などで外部出資者が存在する場合や、M&Aによる買収で100%子会社であっても親会社からの出向・兼務でない取締役が含まれる場合には、活動範囲を制限するなどの対応が必要となるため、モデル定款より縛りの強い定款の採用を検討すべきです。
4.商号
4-1.商号
会社の商号は、会社として、もしくは会社を代表して作成された全ての文書、会社の確証・法的責任を生じる書類に、明確に記載することが求められます(第27条)。
ミャンマー国内に既に登記されている事業体と同一、もしくは類似して誤解を与える可能性があると判断される商号は登記できません。類似商号の場合、単語を一つ追加する程度で許可が出る場合もあります。なお、同一・類似商号を持つ企業が解散手続中で、かつ商号使用を認める旨の同意があれば、当該商号を使用できます(第25条(a))。
また、商号決定時には「National Government」「State」「Central Bank」「Union Government」「President」「Ministry」「Municipal」など、政府・省庁・地方自治体・各法律に関連する事業体であると誤認させる単語の使用は禁止されています(第25条(c))。
4-2.法人の種類を表す商業表記
- 非公開有限責任株式会社:語尾に「Limited」または「Ltd」(第13条(a))
- 公開有限責任株式会社:「Public Limited Company」または「PLC」(第13条(a))
- 有限責任保証会社:「Limited by Guarantee」または「Ltd Gty」(第14条(a)(i))
- 無限責任会社:「Unlimited」(第15条(a))
4-3.商号の変更
商号変更(会社定款の変更)には特別決議による承認を要し、決議より28日以内に届け出ることで変更が可能です(第25条(d))。商号変更の登記は決議後28日以内の届出が必須で、取締役・株主変更などと異なり、28日以内に届出がなされない場合はその変更自体が絶対的に無効となります(第25条(f))。
変更後は新商号が反映された設立証明書が発行され、発行時点から商号変更が有効となります(第25条(e))。従前の商号の下で行われていた法的手続などは商号変更後も継続されます(第25条(g))。
一度承認された商号でも、登記官が合理的根拠から変更すべきと判断した場合、変更期限(最短でも60日以内)を記載した書面通知が発行されます。期限内に変更が行われない場合、登記官の判断により新しい商号を登録でき、新商号の設立証明書が発行されます(第27条)。
5.株式および株主
会社設立時には、最低1株以上の株式発行と1名以上の株主が必要です(第13条(d))。非公開有限責任株式会社の株主数は50名以下(従業員を除く)ですが、公開有限責任株式会社には上限規定はありません(第2条(a))。旧会社法下では株主は2名以上必要でしたが、新会社法では最低株主数は1名となりました。
(株式の発行) 会社が発行した株式は動産であるとされ、法規および会社定款に従い譲渡可能です(第60条(a))。株式に額面金額は付されません(第60条(b))。旧会社法下では授権資本金額の設定と1株当たり払込金額(額面)が設定されており、増資時の発行価額調整が難しく持分比率の変動・希薄化の問題が生じていましたが、これが解消されました。
株式は全額払込または部分払込で発行でき、部分払込の場合は未払込残高の請求時期を特定し、支払請求に応じて払込を行う必要があります(第63条)。会社定款に定めることで、(1) 株主ごとに異なる払込価格・時期の設定、(2) 株主の要求による(未請求部分に限る)払込の保留、(3) 各株式の払込金額に応じた配当金の支払い、が認められます(第70条)。
(現物出資) 現金以外を株式発行の対価とする(現物出資)場合、取締役会において、(1) 対象現物資産を特定可能な程度に詳細に記録、(2) 現金価値を妥当な範囲で決定し算定根拠を記録、(3) 条件が全株主にとって公平かつ合理的であり、現物資産の価値が発行株式により充当される金額以上であること、を決議する必要があります(第64条)。
(株式の種類) 普通株式のほか、異なる種類の株式、償還可能株式、資本・収益の分配における優先株式・劣後株式、特別議決権・制限的議決権・条件付き議決権が付された株式、無議決権株式があります(第62条(a))。また、会社法・その他法規・定款に従い、新株予約権、株式に転換可能な証券、その他の権利を持つ有価証券を発行することも可能です(第62条(b))。
6.会社の取引・設立前の活動・その他の法人
6-1.会社の取引(行為の有効性や契約)
ミャンマー会社法では、契約の締結・承認・終了といった権限行使は会社が定めた個人が会社を代表して行うものとされ、会社印の押印は必ずしも必要ではありません。
証書への調印においても、書面が証書として締結されることが明示され、以下のとおり取締役の署名があれば、会社印の押印なく締結可能です。会社印が押印される場合は、下記規定数の取締役の立会いがあれば締結可能です。
【署名、もしくは立会いが必要な取締役数】
- 取締役が1名のみの会社:その取締役
- 取締役が2名以上の会社:取締役2名
- 取締役1名と秘書役
6-2.設立前の活動
設立前の会社名称を使用している、もしくは会社設立に関する契約を会社の代表者によって締結したものは、会社設立前に行われた契約として扱われます。これらの契約は、契約書に定められた期間もしくは合理的期間内であれば追認することが可能で、会社が契約成立時から契約当事者であるとみなされます(第33条)。なお、追認されていない設立前契約と同等条件の契約を会社設立後に行った場合、損害賠償の支払いを含む黙示的保証に基づく責任は免責されます。
6-3.その他の法人(会社法以外の法律に基づく法人)
◆事業団体(business association)
商業の促進・経済発展のために形成される事業団体は、「Incorporated」を商号につけることで登記が可能です。事業団体は、利益の獲得を意図して他の事業を営む目的での設立は認められません。
有限責任会社として形成された団体が事業団体として登記する場合、(1) 商業の促進・経済発展のためであること、(2) 獲得した利益・収益をその目的のために使用すること、(3) 株主に配当を行わないこと、の3点を登記官が確認・証明した場合に登記が可能となります。登記された事業団体は、名称の一部に「Limited」を加えることで有限責任会社と同等の権利・義務を有します。「Limited」を加えない場合は全ての義務を負います(第42条)。
◆海外法人(overseas corporation)
海外法人がミャンマーで事業を行う場合、会社法に基づく登記が必要です(第43条)。支店形態でビジネスを行う場合はこの海外法人規定に従います。ミャンマーでは駐在員事務所の設立が限られた業種のみに認められるため、駐在員事務所を考える日系企業も一般に海外法人として支店登記を行うこととなります。
事業を行っているとはみなされない行為(登録不要となる活動)は、前掲「2-3.海外企業」の(i)~(ix)と同一です。登記官・連邦大臣が随時指針を発表する可能性がある点も同様です。
海外法人の登記には、海外法人またはその代表者の署名をした所定書式での申請の際、以下を示す必要があります(第47条)。
- 海外法人の商号
- 取締役・秘書役の氏名、生年月日、性別、国籍、居住住所
- 現地代表者(Authorised Officer:ミャンマーで海外法人を代表し書類を受け取る権限を授かった者)の選任、およびその氏名・生年月日・性別・国籍・居住住所
- 現地代表者の任命に関する承諾書(登記申請時には使用しないが保管義務あり)
- ミャンマー国内の全登記事務所の住所
- 登記事務所と事業所の住所が異なる場合の事業所住所(複数の場合は主たる事業所の住所)
- 海外法人の本社登記事務所もしくは主たる事業所の住所
- 申請書記載事項が真実かつ正確である旨の宣誓
- 海外法人の設立証(日本の場合は登記簿で代用可)および会社定款(いずれも英訳・ミャンマー語訳と、海外法人取締役による認証がなされた英語の要約書が必要)
上記をMyCOを通して登録することで、登記事項証明書が発行されます。登記した支店の商号は、会社により(または会社を代表して)送信される書面に明確に記載し、登記事務所・事業所に掲示することが求められます(第50条)。支店商号は本社商号と別に登録できますが、既登記の事業体と同一・類似の商号は登録できません。混同を避けるため、会社の設立国や差別化のための文言を加えて登記することは認められます。
なお、現地代表者(Authorised Officer)はミャンマー居住者(登記日より183日以上居住)であることが求められます(第1条(c)(iii)(xix))。
海外法人がミャンマーに登記した内容について、商号変更のほか以下の変更が生じた場合は28日以内の申請が必要です。
- 海外法人の定款変更
- 取締役の変更・取締役の氏名/住所の変更
- 海外での登記事務所・主たる事業所の住所変更
- ミャンマー国内の登記事務所・主たる事業所の住所変更(事象発生前に変更申請が必要)
- 現地代表者もしくはその住所変更、その他ミャンマーで海外法人を代表し書類を受け取る権限を授かった者の選任・変更(事象発生後7日以内の変更申請が必要)
期間内に申請しなかった場合、全取締役および現地代表者に25万チャットの罰金が科せられます(第51条・52条)。また、海外法人にはミャンマー国内事業に関する年次報告・財務諸表の提出義務があります(第53条)。
[年次報告(Annual Return)] 海外法人(本社)の会計年度末より28日以内に行う必要があります。会計報告ではなく、支店がActiveかどうかを確認する手続です。
[財務諸表] 年1回(1~12月の間)かつ前回提出より15ヶ月以内に本社の財務諸表を提出します。
- (aa) 前会計年度末日時点の貸借対照表
- (bb) 前会計年度のキャッシュフロー計算書の写し
- (cc) 前会計年度の損益計算書の写し
上記明細が含まれていれば提出形式に特段の規定はありません。本国で作成義務がなく未作成の場合は、別途作成・提出するか、ミャンマー事業に関する財務諸表を作成・届出します(その場合はミャンマー国内の公開会社に求められる書式または所定書式に基づくこと)。両申請を行わなかった場合、当該法人・全取締役・全現地代表者に25万チャットの罰金が科せられます。
【海外法人の清算手続について】 海外法人がミャンマーでの事業を終了する場合、終了後21日以内に所定書式での事業運営終了申請が求められます。事業を営んでいないと判断された場合は通知が行われ、通知日より28日以内に事業を営んでいる旨を回答しないと、官報に登記抹消の通知が公表され、公表日より3ヶ月後に登記簿から抹消されます。本社で清算・解散・登記抹消が行われた場合、発生日より28日以内に通知を行い、ミャンマー国内の海外法人の清算人を選任することが義務付けられています。
7.株式・その他資本(株式資本・その他有価証券)
【株主数】 非公開会社の株主数は50名以下、公開会社には上限規定はありません。設立時は最低1株以上の発行と1名以上の株主が必要です。旧会社法では株主2名以上が必要でしたが、新会社法では最低1名となりました。
<少数株主権> 会社法では資本多数決の原則が適用されますが、多数派株主の濫用により少数株主の権利が阻害されるおそれがあるため、一定割合以上を保有する株主に権限行使を認める規定があります。例えば、発行済株式総数の10%を保有する株主による総会開催要求規定があり、強制的な召集が可能です(取締役が召集したのと可能な限り同じ方法での開催や開催費用の負担等が求められます)。情報開示面では、単独株主に総会議事録(第157条(d))、取締役の利害関係(第172条(a)(iii))、株主総会提出の財務諸表(第260条(b))の閲覧が認められています。
■株式の種類 普通株式のほか、異なる種類の株式、償還可能株式、資本・収益の分配で優先・制限される株式、特別議決権・制限的議決権・条件付き議決権が伴う株式、無議決権株式があります(第62条)。会社法・その他適用法・定款に従い、新株予約権、株式転換可能証券、その他の権利を持つ有価証券も発行可能です。
■株式の発行 全部支払済または部分支払済で発行可能です。部分支払済の場合は残高請求の時期を特定し、請求に応じて払込を行います。株主ごとに異なる払込価格・時期の設定や、未請求の場合の支払保留も可能です。現物出資の場合、取締役会は対価を特定可能な程度に詳細記録し、現金価値を妥当な範囲で決定し算定根拠も記録する必要があります。さらに、株式発行の対価・条件が会社と全株主にとって公正かつ合理的であり、発行で充当される金額以上の現金価値があることを取締役会決議で定めなければなりません。現物出資による引受契約は、法に従った印紙を貼付のうえ保管します(第64条)。転換証券の発行でも同様に現金以外を対価とできます。
ただし、株式発行の対価設定における取締役の義務は以下の場合には適用されません。
- (a) 新株予約権の行使
- (b) 株式に転換可能なその他証券の転換
- (c) (同一種類株式の株主全員に対し)保有株式数に応じ、会社の内部留保による全部払込で行う株式発行
- (d) 株式・種類株式の数に応じた合併・分割
- (e) 株式・種類株式の数に応じた再分割
株式・有価証券は、発行日から21日以内に登記簿の更新と、対価および全部/一部支払済かの登記官への申請が必要です。申請を行い、保有者の氏名・名称が登記簿に記入された時点で正式に発効したとみなされます。違反した場合、全取締役に25万チャットの罰金が科せられます(第71条・72条)。
[優先株式] 発行は、定款に (1) 資本の払戻し、(2) 余剰資産・分配への参加、(3) 累積・非累積配当、(4) 投票、(5) 資本・配当支払いの優先権、(6) 償還の可否・条件、が規定されているか特別決議で承認された場合に可能です。償還可能優先株式の償還は、(1) 全部払込済、(2) 利益または消却目的の新株発行手取金で償却、(3) 償還後に支払能力検査を充足することについて取締役が合理的根拠に基づき決議、の場合に可能です。償還から21日以内に登記官への報告が必要で、違反時は全取締役に25万チャットの罰金が科せられます。
■社債 ミャンマー会社法では、本会社法の施行前に発行・実行されたか、償還可能性や満了までの期間を理由として社債が無効になることはありません。償還済社債の再発行や既存社債の代替としての社債発行には、新規発行と同様に印紙税の納税が必要です。ただし、会社法に従い再発行された社債のうち印紙が適法に支払われているものを担保とする貸付人がいる場合、印紙税の支払いなく証拠とできます(第77条)。
■株式・その他証券の譲渡 株式等の譲渡は、譲渡人・譲受人の署名押印済書類、対象株式の証書、会社の持分を確認する宣誓書の提出をもって、登記簿に譲受人の氏名を記載し、登記日より21日以内にMyCOで届出を行うことで可能です(第83条以下)。申請は譲渡人・譲受人のいずれでも可能です。
【改訂2】外資基準の表現について 譲渡の結果、外国資本が35%超となった場合(外国会社になった場合)、または外国会社でなくなった場合は、通知の際にその旨を申告する必要があります(旧稿の「35%以上」は定義部〔35%超〕と不整合のため是正)。MyCOでの届出や外国会社に関する変更の届出を行わなかった場合、関係取締役に75万チャットの罰金が科せられます。
会社が譲渡を拒否する場合、書類受領から21日以内に取締役会が拒否理由を示して決議し、決議日から7日以内に拒否理由を記載した通知を当事者に送付します。違反時は全取締役に15万チャットの罰金が、譲渡宣誓書に虚偽があった場合は当事者に75万チャットの罰金が科せられます。
■株式証書等権利証書 発行条件が別途記載されていない株式・社債を含む登記可能な権利証券の割当・譲渡の登記が行われた場合、割当日または登記日から28日以内に証書を完成させ交付可能な状態とする必要があります(第89条)。証書には会社の商号・登記住所のほか、株式証書の場合は株式数・種類・払込金額・払込未了金額・払込完了の程度を、株式以外の場合は数・種類・払込金額・(転換可能な場合)転換により付与される株式数等を記載します。
■株主等権利者の名簿(株主名簿) 会社は株主名簿の作成が義務付けられています(第90条)。氏名・住所・国籍に加え、名簿記入日・株主でなくなった日の記載が必要です。50名以上の株主がいる場合は株主目録の作成も必要で、変更があった場合は14日以内に更新します(株主名簿自体が目録を構成する場合は目録不要)。株式資本を持つ場合は、各株式の割当日、割当対象株式数、各株主の保有株式、種類、株式番号・証書番号、支払済金額、全額支払済か否か、未了金額(存在する場合)の記載も求められます。情報変更時は21日以内にMyCOで変更申請します。
オプション有権者名簿、社債保有者名簿、その他の権益・証券に関する名簿も別途作成し、主要事業所もしくはミャンマー国内で選出した第三者事務所で保管します。保管場所は登記官に届出し、変更時は21日以内に申請します(第95条)。閲覧・提示を行わない場合、会社・違反全取締役に25万チャットの罰金が科せられます。
■配当 株主への配当は、配当直後に会社が支払能力検査の要件を満たし、配当が株主全体に公平かつ合理的で、債権者への支払能力に影響を与えない場合に限り、現金・株式発行・オプション授与・資産譲渡により行えます(第106条以下)。同一種類株式の一部のみへの支払いや、(部分払込株式を除き)同一種類内で配当額に差が出る支払いは禁止されます。違反時は会社に加え取締役・役員に50万チャットの罰金が科せられます。配当支払い後に債権者への支払いが不能となった場合、取締役は責任財産を超過する部分を限度に債権者に責任を負います(第108条)。
配当の代わりに株式を発行する場合は、(1) 同一種類の全株主に同一条件を提示、(2) 株式関連の議決権・分配を受ける権利を受諾した旨の全株主の同意、(3) 承諾に21日以上の期間を設ける、(4) 発行株式は全株主に同一条件・同一権利、に従う必要があります。違反時は会社・取締役・役員に100万チャットの罰金が科せられます。なお、利益を資本に組み入れる際に通常は株式発行を必要としない旨も明記されています(第111条)。
■設立後の増資 資金不足時は株主総会特別決議により増資できます。株式の全部・一部を併合・分割し金額を増減する場合は普通決議で可能です(第112条)。各株主の保有株式数に応じ、種類を問わず引受申込を行う義務を定款で定めることも可能です(第63条(c))。登記株式数を超えて増資した場合、増資日から15日以内に登記局へ報告しなければなりません。
有限責任株式会社が行える株式資本の変更(第112条):
- 新株発行による増資
- 株式の併合・分割により元来より大きな金額の株式とすること(普通決議)
- 株式の併合・分割により元来より小さな金額の株式とすること(普通決議)
- 普通株式を優先株式へ転換(特別決議)
- 優先株式を普通株式へ転換(特別決議)
- 償還可能優先株式の償還
- 減資
- 自己株式の買戻し
- 会社株式の買取に関する資金援助の提供
上記2~7の変更は変更日から21日以内に届出が必要です。報告しなかった場合、会社・違反を認識していた取締役に100万チャットの罰金が科せられます。
【減資に関する規定】 減資は債権者の権利を害するため厳格に定められています。平等減資の場合は普通決議、選択的減資の場合は関連者が議決権を持たない特別決議または普通株主全員一致の賛成による承認が必要です(第116条)。減資の方法(第115条)は、(1) 未払込部分の払込債務の消滅・減少、(2) 払込債務の免除または喪失/裏付けのない部分の失効、(3) 必要を超えた払込済資本の払戻し、です。減資時は、(1) 直後に支払能力検査の条件を満たす、(2) 公平かつ合理的、(3) 債権者への債務に重大な害を与えない、(4) 指定方法で株主承認、の4条件が必要です。
支払能力検査(Solvency Test) とは、適用される会計基準により、通常業務の中で債務を期日内に支払えるか、または会社の資産が負債を超えているか、のいずれかの基準に従い行われるものです。
平等減資は、(1) 普通株式のみを対象、(2) 保有株式数に応じて、(3) 同一条件で行われる、の条件を満たすもので、これ以外は全て選択的減資です。
減資の招集通知には判断に重大な影響がある全事項を含め、通知送付前に招集通知と関連資料をMyCOを通して登記官に提出します。提出後28日以内に会社が発送許可を判断します。選択的減資が承認された場合、承認後21日以内に決議書の写しをMyCOで登記官に提出し、ミャンマー国内の日刊紙に公告します。掲載後28日経過で減資が可能となります。違反時は会社・違反全取締役に500万チャットの罰金が科せられ、減資後に支払不能となった場合、違反を認識していた取締役は債権者に対し減資額の範囲で責任を負います。
■株式の買戻し (1) 買戻後に支払能力検査を充足、(2) 株主に公平かつ合理的、(3) 債権者の支払能力に重大な影響を与えない、の条件を満たし、手続を行い株主に承認されることで可能です。平等買戻しの条件は、(i) 普通株式のみ対象、(ii) 全普通株主に保有株式数と同比率で提案、(iii) 株主が提案を受ける合理的機会を得る、(iv) 承諾期限経過まで買戻契約を締結しない、(v) 全提案を同一条件で行う、で、これ以外は選択的買戻しです。
平等買戻しは普通決議、選択的買戻しは特別決議(対価を受ける者・提携者は議決権なし)または普通株主全員賛成で承認します。招集通知には要件充足の旨と判断に重大な影響がある情報を記載し、送付前にMyCOで登記官へ提出します。提出後28日以内に登記官が可否を発表します。選択的買戻しが承認された場合、決議より21日以内に決議書写しをMyCOで提出し、概要を日刊紙に公告、28日経過後に買戻し可能です(第121条)。買戻契約締結時、対象株式の全権利は解除まで一時中断し、買戻した自己株式は処分が禁止され、譲渡が登記された直後に消却されます(第122条)。違反時は会社・違反全取締役に500万チャットの罰金が科せられます。
■株主権の変更(種類株式) 種類株主の権利の変更(廃止含む)は、定款に手続規定があればそれに従います(第126条)。規定がない場合は、特別決議に加え、(1) 当該種類株主による総会の特別決議、または (2) 当該種類株式の議決権の75%以上の書面同意、のいずれかで変更・解除できます。変更時は7日以内に種類株主へ書面通知し、決議成立・同意受領から21日以内にMyCOで登記官に届出ます。変更を受けた株式を10%以上保有し、賛同しなかった株主は、同意/決議成立日から21日以内に裁判所へ取消請求の申立てが可能です。会社は決定書受領から21日以内に写しを登記官へ提出します。違反時は関与した全取締役・役員に100万チャットの罰金が科せられます。
[資金援助] 有限責任会社は、原則として、当該会社・持株会社等の株式取得を目的とした資金援助を直接・間接を問わず行えません(第128条)。ただし通常業務・通常の事業範囲内の貸付は禁止されません。
許容される場合(株式取得への資金援助):
- (i) 取締役会が合理的理由から、(aa) 会社が資金援助を与えるべき、(bb) 会社の最善の利益、(cc) 株主にとって全体として公平かつ合理的、(dd) 債権者への支払能力を毀損しない、(ee) 直後に支払能力検査を充足、を決議(第130条)
- (ii) 株主総会特別決議(取得者・提携者は賛成議決権を行使しない)または普通株主全員同意で承認(第133条)
違反時は会社・関与した全取締役・役員に250万チャットの罰金が科せられ、資金援助後に支払不能となった場合、関与取締役は債権者に対し援助額の範囲で責任を負います。
[自己株式の取得] 会社は、会社法に従った方法もしくは裁判所命令を除き、自己株式の取得が禁止されています。会社発行株式・支配持株会社株式への担保設定、子会社に対する株式発行・自己株式譲渡も原則禁止です。ただし、(1) 子会社が受益権を持たず受託者として保有するのみの場合、(2) 持株会社が譲渡人となり、譲受人の子会社もその持株会社の子会社である場合、は認められます。
8.会社の運営・管理(運営管理・公募・抵当権・会計)
8-1.会社事務所と商号
[会社事務所登記] 会社は事務所を登記し、占有者から登記住所としての使用同意を得る必要がありますが、登記事務所内で業務を遂行する必要はありません。住所変更時は事象発生前にMyCOで登記官へ通知します。登記官が事業継続なしと判断した場合や占有者の同意がない/撤回されたと判断した場合、登記官は登記住所を居住取締役の住所に変更できます。通知発行日から28日以内に新事務所所在地を通知する必要があり、違反時は会社に40万チャットの罰金が科せられます(第141条・142条)。
[有限責任会社の商号] 全ての有限会社は、商号を登記事務所・営業所の良く見える位置に英語またはミャンマー語で掲示し、会社印にも印字する必要があります(第143条)。会社(またはその代理)が送付する書面・法的義務を生じる書面にも可読性のある商号を記載します。違反時は会社・違反全取締役・役員に5万チャットの罰金が科せられます。商号を記載しなかった書面が会社の法的義務を証明・作成する文書であった場合、一定の例外を除き、署名した役員等が会社と同一の責任を個人として負います。
8-2.取締役会・株主総会
取締役会は、定款に従い取締役が他の取締役に通知を送ることで招集できます。全取締役の同意があれば書面決議などの技術的方法(Technology Consented)でも可能で、定款記載の人数または取締役2名が定足数とされ、会期中は常に満たす必要があります。決議は投票資格のある取締役が投じた議決権の過半数で決定されます。議長は取締役が選定し、欠席時は代理も選定可能です。定款に従い、議長は取締役会でキャスティング・ボートを持てます。
8-3.株主総会
株主総会には年次総会(第146条)、創立総会(第148条)、特別総会の3種類があります。
[年次総会(定期株主総会)] 原則として1暦年に1度、前回から15ヶ月以内に開催し、決算報告や取締役等の選任・解任を決議します。設立後最初の年次総会は設立後18ヶ月以内でよいとされています(第146条)。議事には、(i) 年次財務報告・取締役会報告・監査役報告(必要な場合)、(ii) 取締役の選任、(iii) 監査役の選任(必要な場合)を含むことができます。取締役の任期について会社法に記載はなく、定款に定めがない場合は再任手続を行わなければ無期限で継続できるという解釈も可能ですが、定期株主総会で再任手続を行うのが一般的です。年次総会には監査役の参加も求められ、株主が監査・監査報告・帳簿について質問する機会を設ける必要があります。
小規模会社に該当する場合、定款・普通決議・登記官の指示により第146条適用が決定されない限り、年次総会の開催義務はありません。違反して開催しなかった場合、会社・違反全取締役・役員に25万チャットの罰金が科せられ、株主の申立てにより裁判所が招集を判断できます。
※「小規模会社」とは、公開会社・公開会社の子会社以外の会社のうち、その会社と子会社の労働者が30名以下で、かつ前会計年度の年間売上が合計5,000万チャット未満の企業をいいます(第1条)。
[創立総会] 公開会社および株式資本を有する有限責任保証会社は、設立日から28日以上6ヶ月以内に株主による創立総会を開催する必要があります(第148条)。創立総会の21日前までに取締役会は創立報告書を全株主に回覧します。報告書は2名以上の取締役か(代理が認められる場合)取締役会議長が証明します(取締役が1名のみの場合はその1名)。報告書には、割当株式総数・対価・払込額、受領現金総額、領収書要約、取締役/監査役/秘書役の名称・住所・国籍・説明と変更、契約の詳細・修正、引受契約の履行程度、取締役による請求の支払遅延、発行/売却に関連して支払われた手数料等の詳細を記載します(第148条(c))。創立報告書は監査役による内容正確性の証明を要し、株主送付後にMyCOで登記官に送付します。総会開催前に取締役は株主リストを用意し、総会中に閲覧可能とします。違反時は取締役・役員に25万チャットの罰金が科せられます。
[株主総会・議決権の通知] 株主総会の招集は21日前(公開会社は28日前)までに書面通知が必要です(全株主が同意する場合は別の方法・期日も可)。通知は議決権を有する全株主・取締役・監査役に対し、手渡し・郵送・電子的方法・定款記載の方法により行います。招集通知には、(aa) 場所・日時、(bb) 議題の一般的性質、(cc) 総会の種別、(dd) 提案決議の説明資料(特別決議・株主提案の別の記載含む)、(ee) 代理人・代表者選任に関する情報・指示、(ff) その他要求される情報、を記載します。
総会の議決は、(挙手制) 各株主1個、(投票制) 1株1議決権、(共有) 氏名記載の1名のみ、(キャスティングボート) 議長、です。投票制は議長、5名以上の株主、または議決権の10%以上を有する株主が要求でき、要求できる決議に制限はありません。異議申立ては総会に限り可能で、最終決定は議長が行います。
[会社が株主の場合] 会社が他の会社の株主である場合、取締役会決議により役員等に議決権行使権限を与えられます(第153条)。複数人に権限を与えられますが、行使できるのは代表者1名のみです。株主は議決権を行使する代理人を選定することも可能です。
[普通決議・特別決議]
普通決議 | 特別決議 | |
|---|---|---|
決議内容(例) | 取締役の選任・解任、株式の併合・分割、平等買戻し等 | 定款変更、商号変更、会社形態変更、優先株式発行、選択的減資、資金援助、清算等 |
定足数 | 最低2名、もしくは定款で規定された数 | 最低2名、もしくは定款で規定された数 |
決議要件 | 出席株主の過半数の賛成 | 出席株主の4分の3以上の賛成 |
※日本の会社法の特別決議は「出席株主の議決権の3分の2以上」(日本会社法309条2項)であり、要件が異なる点に注意。決議要件は定款で加重可能です。
[書面決議] 取締役1名の会社は取締役会を、株主1名の会社は株主総会を書面決議で行えます。投票権を持つ全取締役(または全株主)が決議に賛成する旨の文書に署名することで、会合を開催せず決議できます。写しへの各自署名でも可決とみなされます。非公開会社の場合、株主への情報通知、署名済招集通知写し・付随文書の登記官提出など、会社法・定款の要件を満たす必要があります。
[議事録] 総会開催から21日以内に、総会・取締役会・書面決議の全議事録を作成し、議長等が署名のうえ帳簿に保管します(第157条)。帳簿は営業時間中、毎日2時間以上、株主が手数料なしで閲覧できるようにします。総会から7日後より、株主は手数料を払い議事録・決議記録の謄写を請求でき、会社は請求から7日以内に写しを提供します。違反時は会社・故意/有過失の取締役に違反ごとに15万チャットの罰金が科せられます。
9.取締役(取締役会)
9-1.取締役の権限及び義務
(a) 会社事業の指揮は取締役会(取締役1名の場合はその取締役)が行う。(b) 取締役会は会社法・定款・株主による行使要求に従い会社の全権限を行使する。(c) 取締役会は定款に従い全権限を代表取締役に付与できる。(d) 取締役会は定款に従い、権限を取締役委員会・取締役・従業員等に委任できる。(e) 委任を受けた者は取締役会と同じ効力の権限を行使する。(f) 委任した取締役は自ら行使したのと同様の責任を負う(合理的根拠に基づき受任者が会社法・定款に従い権限を行使し、有能で信頼できると調査した場合を除く)。
取締役は必要に応じ会社の帳簿・記録を検査でき、辞任後7年以内であれば法的手続のために閲覧・謄写が可能です。公開会社(その子会社)の取締役、または定款に記載のある非公開会社の取締役は、事業の売却・処分や債務負担について株主総会決議での同意を要します。
取締役会で検討中の業務に重要かつ個人的な利害関係がある取締役は、その検討中の取締役会に出席・議決できません。ただし、以下の場合は出席・議決が可能です(第163条)。
- (i) 第172条に基づき利害関係の性質・範囲を説明のうえ、他の取締役が参加・議決を不適切でないと可決した場合
- (ii) 同様の効果を有する株主総会決議が可決された場合
- (iii) 当該利害関係が第172条に基づき開示不要の場合
9-2.取締役・その他役員の義務
取締役・役員は、適度な注意・配慮をもって権限行使・義務遂行を行う必要があります(第164~172条)。無謀な取引を避け、適切な目的のための情報収集・誠実な判断、会社の最善の利益のための行動、判断対象に重要かつ個人的な利害関係を持たないことが求められます。
子会社の取締役・役員は、定款明記(完全子会社)または定款明記+親会社を除く株主との事前合意(その他子会社)により、会社の最善の利益以上に親会社の最善の利益を意図した行動が可能です。合弁会社では、定款明記があれば、合弁会社の最善の利益とならない可能性がある場合も株主の最善の利益と信じる行動が認められます。取締役・役員は、従業員・ステークホルダー・環境・会社の評判への長期的影響を考慮し、株主間で公平な対応を行う必要があります。
[一定の利害関係を開示する義務(第172条)] 取締役は、会社事業の議事に重要かつ個人的な利害関係を有する場合、他の取締役に対し利害関係の性質・範囲の詳細を取締役会で通知する必要があります。ただし、(aa) 他株主と共通して生じるもの、(bb) 取締役報酬に関連するもの、(cc) 会社が提案し株主承認済で、承認なければ会社に義務を負わせない契約、(dd) 会社融資に関し保証人・補償・担保提供のみを理由とするもの、(ee) 上記保証等に関し代表権行使のみを理由とするもの、(ff) 役員賠償責任保険に関する契約、(gg) 第181条に基づく補償に関する支払い、(hh) 関連事業体との契約で取締役がその関連事業体の取締役であることのみを理由とするもの、等は通知不要の場合があります。継続的効力を有する通知も可能ですが、取締役の人員変更時は新取締役会で更新を要し、性質・範囲の重要部分が増加した場合は無効となります。
9-3.取締役の選任・報酬
会社設立後の取締役選任は普通決議で行います。欠員は取締役会が補填し、選任後最初の株主総会(6ヶ月以内)で承認を受けます(定足数を満たさない場合も同様)。
公開会社では毎年の年次総会で取締役の3分の1(に最も近い数)が任期の長い者から順に辞任します。非公開会社で唯一の取締役かつ株主は書面決議で他の取締役を選任できます。取締役選任決議は1名のみ選任でき、複数選任時は同じ総会で個別の決議を行います(第173条)。
【追記6】公開会社の取締役数 私会社の取締役は最低1名ですが、公開会社は最低3名の取締役を要し、うち少なくとも1名はミャンマー国民でなければなりません。加えて、全ての会社で**最低1名の取締役がミャンマー居住者(永住者または年間183日以上滞在)**である必要があります。
取締役の解任は、解任のために招集された普通決議または書面決議により行えます(第174条)。
取締役となれるのは健全な精神状態の18歳以上の自然人で、資格剥奪者・破産者はなれません。株式保有が求められる場合、選任後2ヶ月以内または定款所定期間内に保有する必要があります(第175条)。条件を満たさない/満たせなくなった場合、株式払込請求後6ヶ月以内に行わない場合、休職・代理選定なしに3回連続で取締役会を欠席または3ヶ月以内の全取締役会を欠席した場合等は解任されます。
[常駐義務] 新会社法から取締役の常駐義務が定められ、取締役のうち1人はミャンマー居住者(法律に基づく永住者または年間183日以上滞在)でなければなりません。満たせない場合は現地ミャンマー人を雇用するか、社員を183日以上ミャンマーに派遣する必要があります。
[秘書役] 18歳以上の健全な自然人を取締役会決議で選定します。定款に資格要件があればそれを満たす必要があります。
[責任の免除・補償] 取締役・役員等の義務違反・不履行に対し会社への責任を免除する規定は全て無効です。職務上の責務に対し会社・関連事業体が補償することも認められません。
[利益供与] 役員の退任に関し、法律・雇用契約に基づくもの以外の利益を株主承認なしに供与することはできません。会社・関連事業体の事業・資産の譲渡に関する利益供与も株主総会承認なしには禁止されます(第184~186条)。報酬・利益供与が会社の利益になると取締役会が認めた場合、承認のうえ利害関係簿に記載し、次回年次総会で詳細を株主に開示します(第187条)。これらは事前にMyCOでDICAに招集通知案等を提出し認められれば、株主総会で承認できます(MyCO申請結果は28日以内)。当事者・当該取締役は決議に参加できず、決議から14日以内に決議写しをMyCOで提出します(第188条)。
[取締役等の情報] 取締役・秘書役にかかる登記簿の保管・記載が必要です(第189条)。氏名・旧名、生年月日、住所、国籍、職業、兼任状況、重要な利害関係とそれに対し提供された利益、等を記載します。これらは年次報告(第97条)提出時に報告が求められ、変更時は事象発生から28日以内にMyCOで届出ます。パスポート番号も含まれるため、パスポート更新時にも届出が必要な点に注意。登記簿は毎日2時間以上閲覧可能とします。
[違反] 取締役の権限・義務に関する規定違反時は当事者に1,000万チャットの罰金が科せられます。義務の不履行を故意に行った場合、追加の罰則や取締役資格の失効の可能性があります。
10.株主の権利及び救済方法
株主の決議・決議案が、株主の利益に反し、または圧迫・不当・差別的である場合、裁判所は会社の代わりに、清算・定款変更/廃止・運営規制・損害賠償等の命令を行えます。株主・元株主は合理的理由があれば命令の申立てが可能です。
[代表訴訟] 株主・取締役・役員・元役員は、会社を代表して会社の名前で訴えを提起できます。会社自らが訴訟提起・責任追及を行わないと認められ、申立人の善意による申立てが会社の最善の利益となると認められる場合に許可されます。裁判所は調停の要求、作為/不作為命令、費用に関する命令等を出せます(第200条・201条)。
11.株式募集(公開会社・ミャンマー連邦外の会社)
公開会社の株式等の公募は第202条以下に規定されます。目論見書は日付入りで発行され、その日付が発行日となります。取締役署名入りの写しは、登記提出済みの旨を表紙に明記のうえ、発行日前にMyCOで登記官へ提出する必要があり、提出後に発行できます。未提出で発行した場合、会社・発行当事者に1,000万チャットの罰金が科せられます(第202~204条)。
目論見書記載事項(第205条)には、定款内容、当初株式保有者の情報、設立者・取締役・役員の保有株式数、利害関係の性質・範囲、償還可能優先株式、取締役の資格株式・報酬規定、配当に関する事項、過去の割当・募集、引受人情報、財産売却に関する事項、手数料・割引、創業費、重要契約、監査役情報、議決権・配当に関する権利、定款上の制限、等が含まれます。事業が行われている場合は、直近3事業年度の損益計算書(子会社含む)等の報告書の添付も必要です。
公募のための申込書の発行は、第205条の要件を満たす目論見書と共に行います(第207条)。要件を満たさず発行・違反した場合、記載された取締役に1,000万チャットの罰金が科せられます。設立時に目論見書を発行しない会社が割当を行う場合、目論見書に代わる所定書類に取締役・代理人の署名を付し登記官へ提出します。目論見書が引受者を勧誘する場合、発行時の全取締役・発起人等は、第214条の理由がない限り、誤解を招く表現・不実記載による損失の保証責任を負います。
■割当 目論見書記載額が取締役の意見に基づく最低額でない場合、公募された株式資本を割り当てられません。最小株式資本額については、(i) 控除のため購入する資産の購入価格、(ii) 予備費・手数料、(iii) 借入金返済金、(iv) 運転資金、を取締役会が定めます(第215条)。各株式の申込に対し支払う金額は株式金額の5%以上であることが必要です。目論見書の初回発行日から半年経過しても条件が満たされない場合、申込者から受領した金銭は金利を付けず返済する必要があり、190日以内に返済されない場合、取締役は連帯責任を負います。無効となる割当は、創立総会開催後28日以内に申込人の申出があれば無効とできます。取締役が割当規定違反を認識・許容していた場合、2年以内に損失補填手続を開始する必要があります(第217条)。
公開会社による株式募集に関し、(i) 最低引受金額を下回らない割当、(ii) 取締役の現金払込、(iii) 宣誓書の登記官提出、(iv) 目論見書に代わる書面の提出、の4条件を満たさない限り、事業開始・借入権限行使は禁止されます。違反時は責任者に100万チャットの罰金が科せられます。
■手数料・割引 株式引受等の対価として手数料を支払う場合、定款に記載・授権があり、授権金額・規定の範囲内である場合に可能です(第220条)。これ以外の手数料支払いは禁止されます。未償却の手数料は償却まで貸借対照表に記載します。
■ミャンマー国外で設立された会社の株式募集 ミャンマー国外で設立(予定)の会社で、国内に事業所を設立している会社が国内で公募・目論見書発行等を行うことは原則禁止されます。ただし、(aa) 取締役2名以上が認証した目論見書写しの登記官提出、(bb) 表紙に提出済の旨の記載、(cc) 日付記載、(dd) 会社法等への準拠、を全て満たせば可能です(第223条)。目論見書には会社の目的・定款・設立の有効性・設立日と設立国・国内主要事務所住所等を記載します。違反時は1,000万チャットの罰金が科せられます。
12.抵当権と担保権
会社の抵当権・担保権は第228条以下に規定されます。設定から28日以内に登記が必要です。認められる抵当権・担保権は、(i) 社債発行担保、(ii) 未払込株式資本、(iii) 不動産・その金利、(iv) 会社の債権、(v) 会社の動産(取引中株式を除く)への誓約のない担保、(vi) 会社事業・資産への浮動担保、です。国外不動産への設定の場合、必要書類が28日以内に発送されていることが必要です。社債引受等に手数料・割引があれば届出に記載します(第233条)。
登記すると登記事項証明書が発行され、被担保債権額が記載されます。社債等への支払義務が担保される旨の登記がされていれば、証明書写しへの裏書で譲渡が可能です(第237条)。必要事項の提出は会社の義務とされ、関係書類・登記簿を事務所に備え置きます(第238条・239条・247条)。
財産保全管理人を選任した場合、選任日から28日以内に登記官へ通知し、登記欄にも登記します。占有管理権を持つ場合は6ヶ月ごとに収支報告書を提出し、会社名入り請求書・発注書・事業文書に選任の事実を示す文言を記載します。任を解かれた場合も通知・登記します。違反時は取締役・役員・財産保全管理人を含む違反者に25万チャットの罰金が科せられます(第240~243条)。
担保設定書面の写しは、債権者・株主による合理的時間内の閲覧は無償、その他の者は合理的手数料で開示します。社債原簿は最低1日2時間以上閲覧に供します。信託証書写しは社債権者の請求により合理的手数料で発行します。拒否時は会社・事実を認識していた取締役等に25万チャットの罰金が科せられます(第249~252条)。
[海外法人による債権の設定] 上記規定は、財産保全管理人の規定を除き、海外法人として登記される会社の連邦内財産に設定された債権にも適用されます。財産保全管理人の規定(第240~243条)は国内登記の海外法人に準用されます。財務記録の備置きは、国内主要事業所への備置き要求に限定して準用されます(第256条)。
13.財務報告と会計監査人
会社法とミャンマー会計評議会法の要件に矛盾がある場合、ミャンマー会計評議会法が優先します。なお、以下を除き、年次貸借対照表・取締役報告・財務諸表の登記、謄写請求権、監査役選任義務は小規模会社には適用されません(第257条(c))。(i) 定款に適用要件が規定、(ii) 株主総会普通決議で適用決議、(iii) 登記官が適用決定、の場合は適用されます。
■会社の会計・監査と財務諸表 会社は定められた会計基準(ミャンマー会計基準)に従い、英語またはミャンマー語で財務諸表を作成します。会計記録の作成・閲覧可能化を怠った場合、取締役等に75万チャットの罰金が科せられます(第258条)。
年次貸借対照表・損益計算書(非営利は収支計算書)は、設立後18ヶ月以内かつ以後各暦年最低1回作成し、監査を行う必要があります。法定監査は小規模会社に該当する場合は免除可能です(第53条・146条)。
貸借対照表の内容は、会社の財産・負債、財産(固定資産の評価方法の詳細を含む)、資本金・負債の概要、です。損益計算書には各取締役の職務対価を詳細に示し、他社取締役を兼任する場合は自身が受領する報酬・給与も注釈に記載または資料添付します。持株会社の場合、財務諸表に加え監査済子会社の連結財務諸表も添付します。貸借対照表には取締役の署名が必要です。違反時は会社・取締役・役員に500万チャットの罰金が科せられます。
非公開会社以外の会社では、株主総会で財務諸表を提出後、取締役・秘書役署名の写しを年次報告時に登記官へ提出します。承認されなかった場合もその旨を記載し提出します。違反時は会社・取締役・役員に25万チャットの罰金が科せられます。
■検査 登記官が必要と判断した場合、検査が行われます。違法行為の可能性が示唆される場合、(i) 発行済株式の10分の1以上を有する株主、(ii) 株式資本を有さない場合は株主名簿記載者の5分の1以上、の申請、(iii) 登記官検査での情報不開示、(iv) 公共の利益、により検査役が選任されます。違法行為が認められ有罪判決がなされた場合、取締役・役員は判決日から5年間、裁判所の許可なく会社の取締役となること・経営参加ができません(第277条)。
■会計監査人の要件 全ての会社は年次総会で監査役を選任します。会計監査人はミャンマーの公認会計士でなければならず、(1) 当会社の取締役・役員、(2) その配偶者、(3) 公開会社(その子会社)の取締役・役員と雇用関係にある者、(4) 会社に債務のある者、はなれません(第279条)。日本では大会社・上場会社のみ会計監査人設置が義務付けられる点が大きく異なります。
■選任・解任 設立後最初の会計監査人は取締役が選任し、最初の株主総会まで務めます。以後は年次総会決議で決定します。選任には総会の14日前までの通知・公告が必要です(第279条)。辞任時は後任選任まで引き続き役割を果たします。
■会計監査人の権限と役割 計算書類の適正性について意見表明する役割を持ち、帳簿・証憑の閲覧請求権・質問権を有します(第280条)。監査報告には、(i) 要求した情報・説明を全て受領できたか、(ii) 財務諸表が適用法により作成されたか、(iii) 確実な情報に従い事業状況を真実公平に示しているか、(iv) 財務記録が保管されていたか、を含めます。政府が株式を有する会社では、監査役は連邦会計検査院長官が選任・再任します。
[仲裁・和解・買収権限] 会社間または会社と個人の紛争について、書面合意により仲裁を申し立てる権限があります(第286条以下)。会社と債権者・株主間の和解では、裁判所が債権者集会・株主総会の開催命令を発します。4分の3以上を表す多数派が出席し和解した場合、全債権者・全株主・会社・清算人等に拘束力を生じます。命令は写しを登記官に提出することで効力を生じ、定款に添付されます。意図的違反時は取締役・役員に15万チャットの罰金が科せられます。
■公開会社の買収への反対 買収会社の申込後4ヶ月以内に対象株式の4分の3以上の価値の保有者が承認した場合、買収会社は4ヶ月後から2ヶ月以内に、反対する残りの株主にも購入を通知し株式を取得できます。ただし通知日より28日以内に反対株主が裁判所に申立て命令を得た場合、取得はできません(第291条)。
14.清算と倒産(会社の清算)
【追記7】重要:倒産法2020による上書きについて 本章は会社法2017の清算規定を解説するものですが、2020年施行の倒産法(Insolvency Law 2020)により、会社の清算・倒産に関する取扱いは大きく変わっています。実務では会社法ではなく倒産法2020が優先的に適用されます。本章末尾の「14-5.倒産法2020」を必ず併せてご参照ください。
14-1.清算の方法(会社法上)
会社法上、清算には (i) 裁判所による清算、(ii) 任意清算、(iii) 裁判所の監督下における清算、の3方法が示されています。
14-2.裁判所による清算
特別決議がなされた場合、創立報告書未提出・創立総会未開催、1年間事業停止、株主が1名以下、債務弁済不能、裁判所が必要と判断した場合に行われます。下級裁判所が手続を行い、会社・債権者・株主が申立て可能です。裁判所は公的清算人を任命でき、清算手続・供述書/報告書の提出・財産管理を行います。
14-3.任意清算
存続期間満了、定款所定事象の発生、株主総会決議(特別決議含む)での承認により、任意清算が可能です。決議可決時点で開始されたとみなされ、事業を停止します(権限は解散まで継続)。特別決議による清算の場合、10日以内に官報・一般日刊紙に掲載します(違反時は会社・全役員に25万チャットの罰金)。清算後3年以内に債務を弁済できる旨の宣誓書を作成した場合は株主による任意清算、作成しない場合は債権者による任意清算に分類されます。
複数の清算人を選任します。清算が1年以上続く場合、清算人は各年度末(または年末から90日以内)に株主総会を招集し報告書を提出します(違反時は50万チャットの罰金)。完全な清算後、清算人は清算手続の記録を作成し、28日前公表のうえ株主総会を招集します。総会後7日以内に登記官へ報告し、登記日より3ヶ月後に解散したものとみなされます(第357条)。
[債権者による任意清算] 会社は決議提案の総会開催日もしくは翌日に債権者集会を招集します。取締役は債権者リスト・推定請求金額・業務報告書を提出します(第361条)。違反時は会社・役員等に25万チャットの罰金が科せられます。清算人選任で会社と債権者が異なる人物を設定した場合、債権者の指名が優先されます(会社は異議申立て可能)。清算が1年以上続く場合は株主総会と債権者集会を招集し報告します(違反時50万チャットの罰金)(第368条・369条)。完全清算後は株主総会・債権者集会を28日前公告のうえ招集し、登記官への報告・登記から3ヶ月の満了で解散します。
14-4.裁判所の監督下における清算
特別決議による任意清算可決後、清算出資者・債権者の申立てにより、裁判所監督下の任意清算が行われる場合があります。裁判所による清算の申立てとみなされ、清算人は裁判所が課した制限を上限に、任意清算時と同様の権限を行使します。
■附則 第389条以降に、清算時の負債・破産規則、優先支払財産規定、罪を犯した取締役への対応、刑罰規定等が示されています。
■未登記会社の清算 会社法以外の適用法に基づき設立された法人・組合・団体・事業(未登記法人)も、会社法に基づき清算が可能です。
14-5.倒産法2020(Insolvency Law 2020)【追記7】
ミャンマーは2020年2月14日に倒産法(Insolvency Law 2020)を成立させ、2020年3月25日に施行しました(越境倒産を扱うPart Xは大統領通達の発出時に施行)。倒産規則(Insolvency Rules 2020)は2020年4月28日に公布されています。同法はアジア開発銀行(ADB)の技術支援の下で起草され、旧ヤンゴン破産法1909・ミャンマー破産法1920を廃止しました。
重要: 倒産法2020は、会社法2017の清算(winding-up)規定を上書きします。従来、清算は会社法2017に基づいて行われましたが、施行後は倒産法のPart VII(会社清算手続)に基づき実施されます。したがって、上記14-1~14-4の会社法上の清算手続は、倒産法2020の枠組みに沿って読み替える必要があります。
主な内容:
- 企業の再生・更生手続(Corporate Rescue and Rehabilitation:CRRM) — 清算に代わる選択肢として、再生・更生手続を導入。第一目的は会社の救済、不可能な場合は事業の可能な限りの継続、それも不可能な場合は清算より良い結果を債権者全体にもたらすこと。裁判所の承認後、再生管財人(rehabilitation manager:登録倒産実務家)が選任され、選任から30日以内に債権者集会を招集し再生計画を検討。承認後は計画監督者(plan supervisor)が計画を実施。再生中は法的手続に対するモラトリアム(停止)が及び、担保権者は裁判所または管財人の同意なしに担保を実行できません。債権者の同意が得られない/計画終了の場合は債権者による任意清算へ移行します。
- MSME(零細・中小企業)倒産 — MSME向けの独立した再生計画。倒産規則上、累積債務が法人で1,000万チャット以下、非法人で100万チャット以下のMSMEが対象となり得ます。
- 会社清算(Part VII) — 1,000,000チャットを超える債務について、債権者は所定様式(Form 9)で支払請求(statutory demand)を行い、21日以内に支払われない場合、会社は支払不能と推定され、清算申立てが可能となります。会社法・第3条登録法人・未登記会社が対象です。各州・管区・自治区の地区裁判所が清算の管轄を有します。
- 個人破産 — 自然人債務者への破産通知(Form-13、21日以内の支払要求)等の手続を規定。
- 越境倒産(Part X) — UNCITRALモデル法(Model Law on Cross-Border Insolvency)を採用。外国手続の承認・国際協力の枠組みを導入(ただしPart Xは大統領通達による施行を要する)。外国債権者の請求は、外国当事者であることのみを理由に他の無担保債権者より劣後させてはならないとされています(第381条)。
- 倒産実務家の登録 — ミャンマー倒産実務家規制評議会(Myanmar Insolvency Practitioners' Regulatory Council)を設置し、清算人・再生管財人等は同評議会への登録と有効な実務証明書を要します。DICAが登記官(Registrar)の役割を担い、違反者への過料権限を持ちます。
15.その他
15-1.登記官・登記所・MyCO
登記住所や各種手続に用いるのがMyCO(Myanmar Companies Online)です。MyCOは、ミャンマー投資委員会(MIC)の事務局として機能するDICA(投資・対外経済関係省〈MIFER〉の投資企業管理局:Directorate of Investment and Company Administration)が管理・運営する電子登記簿です。【改訂3】会社情報に変更があった場合、MyCO上の所定フォームでDICAに通知します。
各種変更届のフロー:(1) オンラインでログイン、(2) 各社の管理ページへ、(3)「+NEW FILING」から該当フォームを選び入力、(4) 申請手数料の支払い。手数料はクレジットカードによるオンライン決済、または後日DICAに現金を支払うデポジット方式です。
MyCOで行える申請例:登記住所・主たる事業所の変更、取締役/秘書役/代理取締役の情報変更、株主情報の変更、資本金の変更、会社定款の変更、等。
【追記8】MyCOの一般公開アクセスについて(再掲) 申請・届出のポータルとしてのMyCOの機能と、登記情報の一般公開は別問題です。2021年2月の政変以降、当局は公衆による企業登記情報へのアクセスを停止しており、第三者が登記情報を自由に検索・取得することは現状制限されています。最新の運用状況は現地でご確認ください。
[休眠会社の登記抹消] 登記官は判断により会社を登記簿から抹消できます。一例として、第97条の年次報告未提出があります。未提出の場合、登記官は28日以内に登記中断を発し、6ヶ月以内に撤回されないと登記が抹消されます(第430条)。事業を行っていないと判断した場合も抹消できます(第431条)。
【追記10】政変後の運用環境について 2021年2月以降、ミャンマーは国家行政評議会(State Administration Council:SAC)の下で統治されており、MIC会長はSAC構成員(副首相)が務めています。投資・会社登記の制度的枠組み(会社法2017・投資法2016)は維持されていますが、許認可・送金・外国人の就労/在留資格などの実務運用に影響が出ているとの指摘があります。また、SACは2025年1月1日付でサイバーセキュリティ法を施行しました。実務に当たっては最新の現地情報の確認が不可欠です。
16.新投資法(Myanmar Investment Law)
16-1.新投資法の発効
2016年10月18日付で、ミャンマー投資法(Myanmar Investment Law:Pyidaungsu Hluttaw Law No.40/2016)が発効しました。【改訂4】従来はミャンマー市民投資法と外国投資法に分かれていた規律を統一の法律で規定し、法規定で定められた事項を除き同等の取扱いを行うこととしています(第47条)。旧法に基づき投資許可を得たプロジェクトには新投資法の適用は除外されます(第4条)。
ミャンマー投資規則(Myanmar Investment Rules:Notification No.35/2017)は 2017年3月30日に施行され、実務上は新会計年度の2017年4月1日から運用されています。【改訂4】規則の発行から2年間が移行期間として設定されています(規則2条(v))。所管省は当時の計画財政省(現在はMIFER/DICAが事務局)です。
16-2.投資申請等の枠組み
新投資法下では、「投資許可申請(Proposal)」とは別に「承認申請(Endorsement Application)」の手続が用意されています。
- 投資許可申請(Permit) — 第36条の項目に該当する場合に必要。土地使用権・租税減免の申請が可能。
- 承認申請(Endorsement) — 第36条に該当しない場合で、土地の長期リースや租税減免のインセンティブを受けたいときに求める手続(第37条)。土地使用権・租税減免の申請が可能。
- いずれもなし — 第36条に該当せず、土地使用権・租税減免を申請しない場合。
16-3.投資許可申請が必要な投資(第36条)
- 国家戦略上不可欠な投資活動(第36条(a)、規則3条)
- 大規模な投資活動(第36条(b)、規則3条)
- 環境・地域社会に大きな影響を及ぼす可能性が高い投資活動(第36条(c)、規則5条)
- 国有の土地・建物を使用する投資活動(第36条(d)、規則6条)
- 政府が投資許可申請が必要と定める投資活動(第36条(e)、規則11条)
16-4.手続の概要
投資許可申請: (1) MICへProposalを提出(第36条、規則41条)。(2) MICは提出後15営業日以内にPAT(Proposal Assessment Team)による評価で受理を判断(不受理は5営業日以内に理由を通知)(規則47条・48条)。(3) 受理後60日以内に審査し、許可する場合は10日以内に投資許可証を発行(規則49条)。
承認申請: (1) MICまたは州管区投資委員会が提出後15営業日以内に評価(不受理は5営業日以内に通知)(規則71条)。(2) 受理後60日以内に審査し、承認する場合は10日以内に承認証を発行(規則72条)。
投資金額が500万米ドル以下または60億チャット以下の場合、州管区投資委員会(State and Region Investment Committees)が承認手続を行います(MIC通達 No.11/2017)。【改訂5】
16-5.禁止業種(第41条)
(a) 有害・有毒な廃棄物をもたらす可能性、(b) 検査中・未認可の技術/医薬品/動植物/物品を持ち込む可能性(研究開発目的を除く)、(c) 民族の伝統文化・慣習に影響を与える可能性、(d) 公衆に影響を及ぼす可能性、(e) 自然環境・生態系に重大な影響、(f) 法律で禁止された物品の製造・サービス、を伴う投資活動。
16-6.制限業種(第42条・43条)
2017年4月10日付で制限業種リストの通達が発行(MIC通達 No.15/2017)。【改訂5】
- 政府のみが実施を認められる投資活動(第42条(a)、通達1条(a))
- 外国投資家による実施が認められない投資活動(第42条(b)、通達1条(b))
- ミャンマー人・企業との合弁(ミャンマー側最低20%)のみ実施可の投資活動(第42条(c)、通達1条(c)、規則22条)
- 関連省庁の承認が必要な投資活動(第42条(d)、通達1条(d))
16-7.投資奨励業種(第43条)
2017年4月1日付で投資奨励業種リストの通達が発行(MIC通達 No.13/2017)。【改訂5】法人税免税は投資奨励業種のみに与えられます(第75条(c)、通達2条)。
16-8.租税減免措置等の概要
- 法人税免税(第75条) — 投資奨励業種のみ(MIC通達No.13/2017)。地域区分ごとに7年・5年・3年に区分(MIC通達No.10/2017)。【改訂5】(低開発地域=7年、中開発=5年、適度に開発済=3年。)
- ミャンマー人投資への特別措置(第76条) — 補助金・能力開発等の援助。
- 関税その他の租税減免(第77条) — 建設・準備期間の設備機械・建設資材等の輸入関税減免((a))、輸出製品生産用の輸入原材料等の関税減免((b))、輸入品生産用の輸入原材料等の関税還付((c))、追加投資時の輸入関税減免((d))。
- その他の租税減免(第78条) — 利益を1年以内に再投資した場合の法人税減免((a))、短い耐用年数に基づく減価償却((b))、研究開発費の損金算入((c))。
16-9.租税減免措置等の申請手続の概要
(1) 投資許可・承認を得た(または申請中の)投資家が申請可能(規則80条)。(2) 法人税免税は投資地域のZone区分で免税期間が決定(第75条(a))。複数地域の場合は投資額合計の65%超のZoneを判定基準とする(規則83条)。(3) 必須基準として投資額が30万米ドル超と規定(規則91条(d))。その他、雇用創出・技術移転等が考慮されます(規則91条(g)(h)(i)(j))。
【注】チェックリストの「資本金50万米ドル」について 税優遇の必須基準は「投資額30万米ドル超」(規則91条(d))です。旧外国投資法下の外資最低資本金「5万米ドル」(会社法上は新法で廃止)との混同にご注意ください。「50万米ドル」という数値は本法令上の根拠が確認できません。
16-10.土地使用権の概要
(1) 投資許可・承認を得た投資家は、国有・私有の土地・建物の長期リース権を有する。ミャンマー人投資家は自己所有の土地・建物を投資できる(第50条(a))。(2) 外国人投資家は最長50年のリースが可能(第50条(b))。その後10年の延長を2回可能(第50条(c))。(3) 投資許可・承認取得後に土地使用権の承認申請を行う(規則116条)。
16-11.最新の動向(2026年)【追記9】
2026年に入り、MICは投資家向けに以下の更新を行っています(出典:Tilleke & Gibbins、2026年)。
- MIC Notification No.1/2026 — 投資奨励業種における租税減免の最低条件を明確化。投資家はProposal/Endorsement申請に反映される投資総額の35%以上を現金で拠出することが求められます。外国借入を伴う場合はミャンマー中央銀行の承認と返済スケジュールが必要で、借入金・拠出金がいずれも認可ディーラー銀行を通じて現金で送金された証拠の提出が求められます。
- Investment News Bulletin No.1/2026 — MIC許可・承認の申請について、米ドルに加え人民元(CNY)を投資資本として受入れ。CNYでの拠出は、CNYを扱う認可銀行を通じて送金できます(USD投資と同様のプロセス)。
これらは2026年初頭時点の情報です。MIC通達・経済特区(SEZ)の条件は随時改定されるため、最新の通達・告示を現地(MIC/DICA)でご確認ください。
17.参考文献
- The World Law Guide, LEGISLATION MYANMAR (BURMA)
- Burma Lawyers Council
- アセアンセンター(ミャンマー)
- Ministry of Commerce/Ministry of Industry/Ministry of National Planning and Economic Development
- JICA「ミャンマーの法制度概要」(2004年3月)
- ビルマ法典 目次(日本語)
- DICA, Business Organization/DICA・MIFER 公式サイト(www.dica.gov.mm)
- Myanmar Companies Law 2017(英文・非公式訳)
- Myanmar Investment Law 2016(Law No.40/2016)/Myanmar Investment Rules 2017
- Myanmar Insolvency Law 2020/Insolvency Rules 2020
- 各法律事務所の解説(Tilleke & Gibbins, Allen & Gledhill, Conventus Law, DFDL, Charltons Myanmar 等)
- U.S. Department of State, Investment Climate Statements: Burma(2025)
- JETRO/MOJ
