M&A
フィリピンにおけるM&Aの動向
フィリピン経済は、継続的にASEAN諸国でトップクラスの経済成長率を維持してきました。
国家経済開発庁のレポートによると、2021年第1四半期のGDP成長率はマイナス4.2%であり、これは2020年より世界的猛威を振るった新型コロナウイルスの影響による下降を示しています。特に、コロナ以前にフィリピンの景気を支えていた個人消費や小売業の成長が上記の煽りを受けて鈍化したことが大きな要因となっています。
しかし、2023年1月26日にフィリピン統計庁(PSA)が発表したデータによると2022年の実質GDP成長率は前年比7.6%でした。この数値は、政府が目標としていた6.5%~7.5%の成長率目標を上回っただけでなく、1976年の8.8%に次ぐ経済成長率となりました。その後、2024年のフィリピン実質GDP成長率(前年比)は 約5.6% となり、政府目標の6.0〜6.5%をやや下回るものの、ASEAN諸国の中で比較的高い成長率となっています。主な牽引要因は公共支出と建設業の堅調さであった一方、農林水産業など一部セクターは天候要因等でマイナス寄与となっています。
ASEAN諸国の中でもフィリピンは賃金が比較的安価で、英語のできる優秀な人材も数多くいます。発展途上国への投資を試みる場合、文化や言葉の壁が大きな課題となりますが、フィリピンでは、多くの国民が英語を公用語と認識しているので、スムーズにコミュニケーションをとりながら投資が行えるという点で、大きな優位性があります。
他のASEAN各国同様、フィリピンも外国資本に対する規制が厳しかったため、投資は合弁やフィリピン国内の会社へのマイノリティ出資がメインとなっていました。しかし、今後の規制緩和により、日本企業が支配権の獲得を目指し、活発にM&Aを行うことが予想されます。
次のグラフは2020~2025年の間に、日本からフィリピンに対して行われたIN-OUTのM&Aのうち、公表されているM&Aの件数と金額の推移を表したものです。
【日本とフィリピンのIn-Out件数・取引額】
出所:レコフデータ
■ 日本企業のM&A事例
日本企業によるアジア企業の買収(In-Out)の件数は、2025年に211件、うちASEANの企業買収は118件ありました。また、そのうちフィリピンに対するM&Aは7件です(レコフ調べ;公表ベース)。次表は、2022~2025年に行われた日本からフィリピンに対するM&Aの事例です。
【日本からフィリピンへのM&A(2022~2025年)】
M&Aに関する法律・規制
フィリピンでM&Aを行う場合、複数の法規が関連します。そのため、各法律を横断的に理解する必要があります。
【M&Aに関連する法規】
投資規制 | 禁止業種、出資比率による規制、アンチダミー法に関する規制、資本金に関する規制、土地所有に関する規制、 外国為替に関する規制が規定されている |
会社法 | 新株発行、合併、資産譲渡の基本的事項を規定する |
証券規制法 | 公開買付規制、開示規制、 インサイダー取引規制を規定する |
上記のほかにも、銀行業、石油業、鉱工業、保険業、通信業といった特定の業種については、各種業法による規制があります。法規制の自由化は進んでいますが、まだまだ規制が多く、M&Aについても規制当局から出されている各種の規制に準拠しなければなりません。世界銀行が発行する2010年版外国直接投資(FDI)規制についての報告書に、フィリピンは「規制の厳しさが調査対象87カ国の中でも顕著である」と記載されています。
フィリピンでは、法律上規定されているにもかかわらず運用されていない規定や、逆に法律になくても実務上、行われている慣行があります。
たとえば、フィリピン証券取引所の規制では、浮動株式比率基準が定められており、上場企業の発行済株式のうち10%以上は、浮動株式でなければなりません。この基準について、以前は取締まりが厳しくありませんでしたが、2011年11月までに要件を満たすことが急遽要請され、企業が対応に追われました。2012年一杯は猶予期間となりましたが、要件を満たしていなかった48社のうち、13社は自主的に上場を廃止し、1社は上場廃止の措置を受けました。
このように、フィリピンでは突然の運用の変更があり得るということを認識しておく必要があります。
投資規制
■ 外資政策の基本三法
フィリピンでは、さまざまな産業において外国投資家からの投資が歓迎されていますが、国内産業の保護を目的として、特定の業種に対する外国投資には規制があります。したがって、対象業種が規制に該当するかどうかをネガティブリスト等で把握するためには、どの法律を参照すればよいのかを知っておく必要があります。ここでは、外資政策の基本となる法律と、投資規制、優遇政策との関係を整理します。
外資政策の基本となる法律は次の3つです。
[1987年オムニバス投資法]…①
1987年オムニバス投資法(Omnibus Investment Code of 1987)は、優遇措置を伴う投資に関する法律です。
[1991年外国投資法]…②
1991年外国投資法(Foreign Investment Act of 1991)は、オムニバス投資法に定められていた「優遇措置を伴わない投資」の規定に代わり制定されたもので、優遇措置を伴わない外国投資に関する基本的な法律です。
[1995年特別経済区法]…③
1995年特別経済区法(Special Economic Zone Act of 1995)は、輸出加工区および特別経済区(Special Economic Zones)に関する総括的な法律であり、特区内に進出する企業に対して優遇措置を付与しています。
優遇措置を受けることができるかどうかは、大きく2つの検討事項があります。1つは業種です。これは①、②の法律を基に検討します。もう1つは、地域別での優遇です。これは③を参照します。
業種での優遇政策は、まず「1987年オムニバス投資法」を参照し、自社が投資しようとするビジネスが優遇を享受できるかどうかを検討します。担当政府機関は投資委員会(BOI:Board of Investments)です。BOIが毎年同法に基づいて、投資優先計画(IPP:Investment Priority Plan)を発表しています。このIPPの対象業種に投資する企業には、法人税減免などの優遇政策が与えられるため、該当する場合はBOIへ投資申請します。
2022年度戦略的投資優先計画(SIPP)では、ティア1から3にわけて、下記の優先投資分野が定められています。
[ティア1]
2020年版投資優先計画(IPP)に記載されたすべての活動(ただし、ティア2または3に記載されたものを除く)であり、2020年版IPPに記載された活動は以下のとおりです。
1. 新型コロナウイルスのパンデミック対策に関連するすべての適格な事業
a.必須物品
医薬品、医療機器・装置、個人用保護具(PPE)、手術機器・用品、実験機器・試薬、医療用品、工具および消耗品(除菌剤・洗浄剤、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどを含むがこれらに限られない)、これらの物品の生産・製造に使用する原材料、半製品・中間製品、機械・設備の生産・製造が対象となる。また、これらの物品を製造するための製造活動の再利用も含む。
b.必須サービス
火葬場、医療廃棄物の処理・処分、研究室、実験施設、病院、検疫施設などのサービスの提供が対象となるがこれらに限られない。また、投資委員会の決定に従い、新型コロナウイルス対策やその影響の緩和に関連するその他の物品やサービスも対象となる。これには、政府やその機関・部門、地方自治体のプログラムに含まれるものなどがあるが、これらに限定されない。
2. 投資委員会の決定に従い、提案されているバリク・プロビンシャ(Balik Probinsya)プログラムや政府が実施する可能性のある同様のプログラムなど、密集した都市部以外での雇用機会を創出するプログラムを支援する活動への投資。
3. 基準を満たすすべての製造業(農産物加工を含む。ただし、マニラ首都圏では、近代化プロジェクトのみが対象)
a.工業品の製造または農産物および水産物の加工(ハラルフードおよびコーシャフードを含む)による、[1]半製品/中間品、または[2]完成品もしくは消費財の生産
b.プレハブ住宅用部品、機械および部品を含む装置の製造航空宇宙部品
4. 農業、漁業および林業(ただし、マニラ首都圏では、農業インフラと支援サービス、都市農業プロジェクトのみが、新規、拡張、近代化として対象)
農産物、水産物および林産物の商業生産が対象となる。また、保育園、孵化場、収穫後施設、その他の支援サービスやインフラも対象となる。
5. 戦略的サービス業
a.集積回路(IC)設計
集積回路の設計に必要なすべての論理・回路設計技術が対象となる。
b.クリエイティブ業界/ナレッジベースサービス
国内向けのIT-BPMサービス(コンタクトセンター、データアナリティクスなど)や、アニメーション、ソフトウエア開発、ゲーム開発、医療情報管理システム、エンジニアリング・デザインなどのオリジナルコンテンツを伴うサービスが対象となる。
c.航空機の保守、修理および整備
d.代替エネルギー自動車用チャージ/燃料補給ステーション
e.産業廃棄物対応
f.電気通信事業(ただし、新規参入者のみが対象)
g.最先端工学、調達および建設
6. ヘルスケアおよび災害リスク軽減管理サービス
総合病院、専門病院、その他の医療・健康施設(薬物更生施設、検疫所、避難所を含む)の設置・運営が対象となる。
7. 集合住宅(ただし、マニラ首都圏では、賃貸用の低コスト都市住宅のみが対象)
200万ペソを上限とする住宅の開発が対象となる。
8. インフラストラクチャーおよび物流(LGU-PPPを含む)
空港、海港、(空路、陸路および水路)輸送、LNG貯蔵・再ガス化施設、石油・ガスのパイプラインプロジェクト、大量の水処理・供給、トレーニング施設、試験所、国内工業地帯などの(ただし、これらに限定されるものではない)、国の経済発展・繁栄に不可欠な物理的インフラの構築・運営が対象となる。また、地方自治体(LGU)が主導・実施するPPPプロジェクトも対象となる。
9. イノベーション・ドライバー
研究開発(R&D)活動、臨床試験(治験を含む)の実施、センター・オブ・エクセレンス、イノベーション・センター、ビジネス・インキュベーション・ハブ、スマート・シティ、ファブリケーション・ラボ(ファブラボ)/コワーキング・スペースの設置、モビリティ・ソリューションやデジタル取引の開発が対象となる。また、以下のような、新技術や新興技術の商業化、製品やサービスに関する商業化されていない特許、および国内で行われた研究開発の成果物も対象となる(ただし、これらに限定されない)。
10. インクルーシブ・ビジネス(IB)モデル
バリューチェーンの一部として、農業ビジネスや観光分野における中堅・大企業(MLE)が、零細企業(MSE)に対してビジネス機会を提供する活動が対象となる。
11. 環境または気候変動関連プロジェクト
エネルギー、天然資源、原材料の効率的な利用、汚染の最小化・防止、温室効果ガスの削減につながる、商品の製造・組立、エネルギー効率関連施設の設置が対象となる(ただし、共和国法第11285号またはエネルギー効率・保全法に基づくものを除く)。また、国際基準に基づいたグリーンシップリサイクルや、民間の材料回収施設の設立も対象となる。
12. エネルギー
従来の燃料(すなわち石炭、ディーゼル、バンカーおよび天然ガス)、廃熱、その他の廃棄物を利用した発電プロジェクトや、バッテリーによるエネルギー貯蔵システムの構築が対象となる。
[ティア2]
フィリピンの産業バリューチェーンにおけるギャップを埋める活動で、以下が含まれます。
1.グリーン・エコシステム
電気自動車(EV)組立(純EV、プラグインハイブリッドEV、ハイブリッドEV、燃料電池EVなど)、EV部品・コンポーネントおよびシステムの製造、EVインフラの構築・運営、エネルギー効率に優れた船舶・機器の製造、スマートグリッド・再生可能エネルギー用電子機器・回路(ウェアラブルソーラー機器を含む)、バイオプラスチック・バイオポリマー、再生可能エネルギー、エネルギー効率・保全プロジェクト、エネルギー貯蔵技術、統合廃棄物管理・廃棄・リサイクルなどを対象とする。
2.ヘルスケア関連活動
ワクチン自立支援プログラム、その他保健省(DOH)、科学技術省(DOST)、その他の類似機関が承認したその他の健康関連プログラムを支援する製造、医薬品、医薬品有効成分、専門病院など、健康関連活動を対象とする。
3.防衛関連活動
国防省(DND)、フィリピン国軍(AFP)、国家安全保障会議(NSC)が承認する国防関連活動を対象とする。
4.産業バリューチェーン・ギャップ
鉄鋼、繊維、化学、グリーンメタル加工(銅、コバルト、ニッケルなど)、原油精製、ラボスケールウェハー製造など、バリューチェーンのギャップに対処する活動を対象とする。
5.食料安全保障関連活動
農業省(DA)またはフィリピン農業・水生・天然資源研究開発評議会(PCAARRD)が承認する、食料安全保障を競争力をもって確保するために重要な製品およびサービス、またはグリーン/有機農業を支援するものを対象とする。
[ティア3]
経済の変革を加速させる重要な活動で、以下の活動が含まれます。
1.ロボット工学、人工知能(AI)、積層造形技術、データ解析、デジタル変換技術(クラウドコンピューティングサービス、ハイパースケーラー、データセンター、デジタルインフラなど)、ナノテクノロジー(ナノエレクトロニクスを含む)、バイオテクノロジー、新しいハイブリッド種の生産・採用、その他のインダストリー4.0技術などを含むが、これらに限らない、研究開発および第4次産業革命の先進デジタル生産技術の採用に関する業務。
2.装置、部品の製造、サービスの製造、知的財産(IP)および研究開発製品・サービスの商業化、航空宇宙、医療機器(個人防護装置を除く)、IoT機器・システム(無線センサーおよび機器を含む)、フルスケールウェハ製造、先端材料などを含むがこれらに限らない、高度な技術を要する革新的製品・サービスの製造および生産を行うこと。
3.研究開発ハブ、センター・オブ・エクセレンス、科学技術パーク、イノベーション・インキュベーション・センター、技術系スタートアップ、スタートアップ支援施設(インキュベーター、アクセラレーター)、宇宙関連インフラなどを含むがこれらに限らない、イノベーション支援施設の設立。
上記、優遇政策に該当しない場合に残る選択肢は、優遇措置を伴わない外国投資か、投資規制業種に該当するかの二択です。これを把握するには、「1991年外国投資法」(共和国法第7042号、1996年改正)に基づいて定期的に更新される「外国投資ネガティブリスト(Foreign Investment Negative List)を参照します。このリストには、業種ごとに出資比率が決められており、最新版は、2022年7月13日発効の第12次ネガティブリストです。
1991年外国投資法は、アキノ政権下に制定され、1996年にラモス政権下で改正されました。この法律は、1987年オムニバス投資法の「奨励措置が適用されない外国投資」を改正したものです。つまり、優遇措置に該当しない投資について、国内市場開放を目指したもので、ネガティブリスト以外の業種に対する投資は外資による100%出資が認められています。
■ 規制業種
以下の業種に該当する場合、外国投資家の参入や外国人の就業は認められていません。
• レコーディングを除くマスメディア
• 専門職(エンジニア、医療関連、会計士、建築士、犯罪捜査、科学者、
税関貨物取扱者、環境設計、山林管理、地質調査、内装設計、景観設計、
弁護士、司書、船舶航海士、船舶機関士、配管業、製糖、社会福祉、教師、
農業、漁業、ガイダンス、カウンセリング、不動産サービス、呼吸器治療、
心療内科など)
• 払込資本金が250万USドル未満の小売業
• 協同組合
• 民間警備保障会社
• 小規模鉱業
• 群島内・領海内・排他的経済海域内の海洋資源の利用、河川・湖・湾・潟での天然資源の小規模利用
• 闘鶏場の所有、運営、経営
• 核兵器の製造、修理、貯蔵、流通
• 生物・化学・放射線兵器の製造、修理、貯蔵、流通
• 爆竹その他花火製品の製造
出所:JETRO(『第12次外国投資ネガティブリスト』2022年より抜粋)
■ 出資比率による規制
ネガティブリストでは、業種ごとに外国資本の出資比率上限を定めており、ネガティブリストは、リストAとリストBに分類されています。リストAは、「憲法および法律の定めにより投資が規制される分野」、リストBは「安全保障、防衛、公衆衛生および公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由に投資が規制される分野」です。
【憲法および法律の定めにより投資が規制される分野(リストA)】
外国資本による 出資比率上限 | 分野・事業内容 |
20%以下 | ラジオ通信網 |
25%以下 | 雇用斡旋(国内・国外のいずれかで斡旋されるかを問わない) |
国内で資金供与される公共事業の建設、修理契約。ただし、BOT法※(共和国法第7718号)に基づくインフラ開発プロジェクトおよび外国の資金供与・援助を受けて国際競争入札を条件とするプロジェクトを除く | |
防衛関連施設の建設契約 | |
30%以下 | 広告業 |
40%以下 | 天然資源の探査、開発、利用(大統領が承認する資金・技術援助契約に基づく場合、外国資本100%参入可) |
私有地の所有 | |
公益事業の管理、運営 | |
教育機関の所有、設立、運営 | |
米・とうもろこし産業(操業開始から30年以内に、資本の60%以上をフィリピン国民に放棄あるいは譲渡する場合、外国資本100%参入可) | |
国有・公営・市営企業への材料、商品供給契約 | |
公益事業免許を必要とするBOTプロジェクトの提案、施設運営 | |
深海漁船の運営 | |
損害査定会社 | |
共用部分法人もしくは複数世帯が所有するコンドミニアムユニットの所 |
※BOT法とは、交通社会の資本整備に民間資金を活用するBOT(Build Operate Transfer)手法を法制化したもの 出所:大統領令第98号
【安全保障、防衛、公衆衛生および公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由に投資が規制される分野(リストB)】
外国資本による 出資比率 | 分野・事業内容 |
40%以下 | フィリピン国家警察(PNP:Philippine National Police)の許可を要する品目の製造、修理、保管、流通 |
40% | 国家防衛省(DND:Department of National Defense)の許可を要する品目の製造、修理、保管、流通 |
危険薬物の製造、流通 | |
サウナ、スチーム風呂、マッサージクリニックなど、公共の保健および道徳に影響を及ぼす危険性があるため、法により規制されているもの | |
レース場の運営など、すべての賭博行為(ただし、フィリピン娯楽賭博公社と投資契約が結ばれており、かつフィリピン経済区庁の認定を受けている事業は除く) | |
払込資本金額20万USドル未満の国内市場向け企業 |
■ アンチダミー法による規制
1936年に承認された共和国法第108号(CA:Common wealth Act No.108)では、規制業種における、役員の外国人占有比率を、資本規制比率に準じて取扱わなければならない旨が規定されています。ネガティブリストによって、外国資本の出資比率が規制されている場合には、役員の構成でも外国人比率を当該外資規制の割合以下にする必要があります。
■ 資本金に関する規制
銀行や金融業など、一定の業種は、最低資本金の規制が定められています。
[銀行]
• ユニバーサルバンク:30億~200億ペソ
• 商業銀行:20億~150億ペソ
• 貯蓄銀行
• 本店がマニラ首都圏内:5億〜4億ペソ
• 本店がマニラ首都圏外:2億〜8億ペソ
• 地方銀行(本店の所在地による):1,000万~2億ペソ
[小売業]
共和国法第11595号にて2021年12月、改正小売業自由化法が承認されました。外資の場合、払込資本金は2,500万ペソ以上が必要と記されています。また、複数の実店舗で小売業を営む外資は、1店舗当たり最低1,000万ペソの投資を行う必要があります。なお、払込資本金は、1店舗当たりの投資額要件を満たすために、資産の購入に使用することができることになっています。最低払込資本の実際の使用については、証券取引委員会(SEC)または貿易産業省(DTI)が監視し、これらの機関および国家経済開発庁(NEDA)により、最低払込資本金額は3年ごとに見直しがされます。
その他、業種を問わず、「払込資本金20万USドル以下の国内市場向け企業」は、ネガティブリストによって、外資の資本比率が40%以下に制限されており、最低資本金の規制が加わります。要約すると以下の3つに分類されます。
① 外資の資本比率が40%以下の場合
最低資本金は5,000ペソです。
② 外資の資本比率が40%超の出資の場合
ネガティブリストに従い、原則として20万USドルが最低資本金となりますが、以下のいずれかに該当する場合は、10万USドルが最低資本金となります。
・ 現地人を50名以上直接雇用する場合
・ 先端技術を有する場合
③ 輸出向けに事業を行う会社の場合
主に輸出向けに事業を行う会社の場合、当該最低資本金規制は適用されません。輸出向けに事業を行う会社とは、以下のとおりです。
・ 製造業で、生産量の60%以上を輸出する場合
・ 貿易業で、フィリピン国内での購入量の60%以上を輸出する場合
■ 土地所有に関する規制
ネガティブリストの規制により、外国資本40%超の企業は、土地を取得することができません。そのため、工場用に土地を利用する場合は、土地の所有者からリースを行うことになります。リース期間は最長50年ですが、更新することが可能です。
また、リース以外に、フィリピン人パートナー(信頼できる日本人のフィリピン人の身内やパートナー会社、弁護士など)と外資40%以下の会社を設立して、土地を取得する方法もあります。
■ 外国為替に関する規制
フィリピンの外国為替管理制度は、フィリピン中央銀行(BSP:The Bangko Sentralng Pilipinas)が管轄し、為替規制はBSPの通貨理事会(Monetary Board)の政策によって決定されます。
1992年に外貨集中義務が撤廃されて、外貨の売買がほぼ自由化されました。しかし、貿易取引対価以外の外貨取引については、中央銀行による以下のような規制が残っています。
• 外国為替売却を一時的に停止、または制限すること
• 居住者またはフィリピンで営業する企業が取得するあらゆる外貨為替を、中央銀行が指定する銀行・代理人に引き渡すこと
[貿易取引]
輸出にかかわる外貨受取は、中央銀行の定める通貨(USドルなど)で行われなければなりません。信用状に基づく取引など、一定の条件を満たす輸出入決済のための外貨交換については、中央銀行の事前承認なく商業銀行が自由に行うことができます。
[資本取引]
外国投資家が資本、または、資本から発生した配当や利益、収益金について送金を行うために、銀行を通じて外貨を購入する場合、外国投資を中央銀行に事前に登録する必要があります。通常は会社設立の段階で中央銀行に登録を行います。
登録済外国企業の資本の本国送金または利益の送金は、現行規則で指定された手続およびその他の条件に従って、中央銀行に事前に承認を受けることなく商業銀行で行うことができます。
[借入]
① 現地での借入
外資40%超の会社は土地の所有が認められていないため、土地を担保にすることができません。この場合、親会社が保証することになります。また、長期借入については、まだ整備されていないため、ペソ建による長期借入は難しい状況です。
② 外貨借入
将来の元利金の支払を外貨建で行う場合には、借入の実行前に中央銀行へ届出なければなりません。原則として、外貨建の借入は中央銀行の許可が必要となります。
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