会社法
フィリピン会社法改正
2019年2月20日に改正会社法が成立し、同年2月23日に正式に施行されました。
改正会社法では現行の取締役5名というルール及びフィリピンの居住者要件が撤廃され、1人の発起人で現地法人の設立を行うことが可能となります(取締役が最低1株を所持するという点は継続)。
設立発起人の定義は法定年齢に達した自然人、パートナーシップ、組合もしくは法人とされています。
また、改正会社法では「取締役におけるフィリピン居住者要件」が完全に撤廃となりました。
なお、代表取締役、財務役及び会社秘書役(フィリピン国民かつフィリピン居住者)の選定要件について変更はなく、改正会社法においても同様に適用されます。
旧会社法において、財務役の選定要件は明示されていませんでしたが、改正会社法では「取締役である必要はないものの、フィリピン居住者でなければならない」ということが明示されました。
旧会社法にて、外資40%以下で法人を設立する場合の資本金が規定されており、最低5,000 ペソを払込資本金として必要とする旨が記載されています。改正後はこの最低払込資本金の要件が撤廃となります。
しかし、留意すべき点は、この資本金の規制撤廃はあくまでフィリピン会社法上においてであるということです。
フィリピン会社法以外で資本金について規定がある場合はその法律に準じて、資本金を設定する必要があります。
また公益企業に対する規制も新たに追加され、別途会社内にコンプライアンスオフィサーの選定、及び取締役の内20%は独立取締役であることが求められます。改正会社法において、以下の要件に該当する企業は公益企業とみなされます。
・ 証券取引員会(SEC)に公益企業として株式登録されており、株式上場しているか、少なくとも5,000万ペソの資産と200人以上の株主がおり、各々が最低でも100株以上保有している会社
・ 銀行、または銀行に準ずる金融機関、金融ビジネス、保険、信託を行う会社
・ 上記に類似する事業を行っているとSECが判断した会社
また、旧会社法においては法人の存続期間は最長50年と定められていましたが、この度のフィリピン会社法の改正を受けて、定款に別段の定めを置いてない限り、永久に法人を存続できることとなりました。
<GISの改正内容>
GISとは、General Information Sheetといい、日本でいうところの登記簿謄本です。
GISの提出は年次コンプライアンスの1つに数えられ、フィリピン現地法人の場合、GISは年次株式総会から30日以内に、フィリピン支店や駐在員であればSEC登録書の発行日から起算して30日以内にGISをSEC(Securities and Exchange Commission:証券取引委員会)へ提出する必要があります。
2019年2月28日にGISのフォーマットについて改正する旨がSECより通知され、新たにBeneficial Ownership Disclosure というページが追加されました。本改正内容の順守はOwnership(会社の保有者)との記載からもわかる通り、フィリピンにおける内国法人(現地法人の株式会社及び非株式会社)が対象となります。
Beneficial Ownership Disclosureとは具体的に何かといえば、その会社における所有権を保持している人間の①氏名②現住所③国籍④TIN(納税者識別番号)及び⑤保有割合(パーセンテージ)を記載することになります。
会社機関の体系
フィリピンの株式会社の機関設計は、株主(フィリピン会社法5条(以下、 本章においては条文番号のみ記載))、 取締役(Director)(22条、 23条)、社長(President)、財務役(Treasurer)、秘書役(Secretary) (24条)から構成されます。株主や取締役の最低人数が日本の会社法と異なるほか、財務役、秘書役といった日本には存在しない機関もあるため、体系的に理解しておく必要があります。
また、最大の特徴は、機関設計はアンチダミー法の影響を受け変化することにあります。つまり、 ネガティブリストの規制業種に該当する場合は、機関設計の内容が原則と異なるため、注意しなければなりません。
具体的には、ネガティブリストの規制業種に該当する場合には、外資の出資比率までしか外国人の取締役を選任できませんが、外資規制を受ける業種ではない場合、引き続き、代表取締役(社長)がフィリピンに居住する必要は無く、更に秘書役はフィリピン居住のフィリピン人でなければいけません。しかし、会社法改正に伴い、財務役はフィリピン居住者に限られることとなりました。
株主(株主総会)
株主数
フィリピンの場合、最低株主数について直接規定する条文はありません。ただし、2019年2月のフィリピン会社法改正を受けて、フィリピン会社法上1名以上の取締役の設置が必要であり(115条から132条)、取締役は最低1株以上を保有することが義務付けられているため(10条及び22条)、必然的に株主数は、法人株主の場合最低2名以上(自然人1名のみが株主の場合は当該1名のみでも設立可能となり、1人株主会社:One Person Corporation(OPC)と呼ばれる)へと変更になりました。
また、会社設立を遂行する法定年齢に達している発起人(Incorporator)も、最低1株以上を引受ける義務を負うため(10条)、通常、設立後に取締役となる者を発起人として選任し、定款にその旨記載します(5条)。ただし、ネガティブリストや外資規制の対象業種については、60:40などの資本比率に応じて取締役/株主の構成を編成する必要があります。
株主総会
株主総会とは、株主によって構成される会社の最高意思決定機関です。フィリピン会社法上、定時株主総会(Regular Meetings of Stockholders or Members)、臨時株主総会(Special Meetings of Stockholders or Members)の2種類があります(49条、及び50条)。
定時株主総会は、 1年に1度、附属定款に定めた日に開催します。 附属定款に定めていない場合は、4月15日以降のいずれかの日に毎年開催しなければなりません(49条、及び50条)。 一方、臨時株主総会は、 必要と認められる場合には随時、または附属定款に定められた日に開催することができます。
■ 株主総会の開催場所
日本では株主総会の開催場所について特に規制はありませんが、原則定時または臨時にかかわらず、株主総会は会社の本店所在地の市または町において、可能であれば会社の本店にて開催しなければなりません。
なお、マニラ首都圏、セブ首都圏、ダバオ首都圏及びその他大都市圏は市または町と同様の扱いとなります(50条)。ただし、2019年2月のフィリピン改正会社法により、株主総会への遠方のため参加が難しい場合、遠隔的な通信手段を用いた株主総会の実施も認められています。
■ 株主総会の招集
日本では、株主総会の招集については、原則として取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)が決定し、取締役(取締役会設置会社においては代表取締役)が招集します。
フィリピンの場合には、取締役は、定時株主総会の少なくとも21日前までに、登録されているすべての株主に対して定時株主総会の招集通知を電子メールもしくは書面により送付しなければなりません。また、臨時株主総会の場合には、1週間前までにすべての株主に招集通知を電子メールもしくは書面により送付します。
招集通知には総会が開催される期日及び場所を記載しなければなりません(50条)。ただし、付属定款に別段の定めがある場合は、定款の定める方法に従います。
招集する権限を有する者が不在であり、かつ正当な理由を示した株主からの招集請求があった場合には、証券取引委員会(SEC)は総会を招集する権限を請求した株主に対して付与することができます。召集を請求した株主は、出席した株主の過半数により議長が選任されるまで、当該総会の議長を務めなければなりません。
すべての株主、もしくはその代理人(Duly Represented)が出席している場合、総会が不適切に開催または招集された場合であっても、会社の権利または権限の範囲内であれば、株主総会におけるすべての手続及び決議は有効となります(50条)。
■ 株主総会の議長
日本では、株主総会(定款に定めがあれば定款に従う)において議長を選任しますが、フィリピンにおいては、原則として社長(附属定款において別段の定めがある場合を除く)が株主総会の議長を務めなければならない、とされている点が異なります。ただし、臨時株主総会においては社長以外が議長になる場合があります(53条)。
■ 株主総会決議
[定足数]
附属定款に別段の定めがある場合を除き、発行済株式の過半数の出席がなければ決議を行うことができません(51条)。
[決議要件、決議内容]
原則として、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって決議が行われます。また、一定の重要事項については、発行済株式の3分の2以上の賛成をもって決議しなければならないと規定されています。なお、発行済株式の3分の2以上の議決権が必要なものは以下の通りです。
・ 取締役の解任 (27条)
・ 取締役と会社間の契約の承認(32条)
・ 利益相反取引の追認(33条)
・ 株式配当の宣言(42条)
・ 附属定款の変更、または廃止、もしくは新たな附属定款採択権の取締役会への委譲(47条)
また、以下のような一部の重要な事項については更に慎重を期すため、取締役の過半数の同意と、発行済株式の3分の2以上の議決権が必要となります。なお、経営管理契約(43条)については取締役の過半数の同意と発行済株式の過半数を保有する株主の承認が必要です。
・ 定款変更(15条)
・ 会社存続期間の変更(36条)
・ 増資及び減資、並びに社債の発行(37条)
・ 重要な営業財産の譲渡、リース、抵当設定その他(39条)
・ 自社の主目的以外を目的とする会社への投資(41条)
・ 経営管理契約(子会社の一定の重要事項について持株会社等の承認が必要である契約)(43条)
・ 無額面株式( No-Par Value Shares)の発行価額決定(ただし、 定款に定めがある場合)(61条)
・ 合併の承認(76条)
・ 任意解散(134条)
[決議方法]
株主総会決議は、通常株主本人が出席して投票することになりますが、フィリピン会社法においても日本と同じように代理人(Proxy) による投票ができます。この場合には委任状によって代理人を出席させて決議を行います。委任状は株主が署名を行った上で、 総会予定日までに秘書役に提出しなければならず、原則として指定された総会でのみ有効です。委任状の有効期限は5年となります(58条)。
また、議決権信託(Voting Trusts)というものがあります。これは、5年を超えない期間を限度として受託者に議決権及び株式に付帯するその他の権利を与える制度です。議決権信託を契約する際には、書面をもって行い、契約書には条件を記載し、公証人の認証を受けなければなりません。
なお、議決権信託を契約する際には、当該契約書の正式なコピーを会社または証券取引委員会に提出しなければなりません。この提出を怠った場合は当該契約が無効となり、受託者を名義人とする新規の株券が発行されるため注意が必要です(58条)。
■質権設定者等の議決権
フィリピン会社法には、質権設定者(Pledgors)、抵当権設定者(Mortgagors)及び管財人(Administrators)の議決権という規定があります。
株式に質権が設定されている場合、質権設定者(債務者)が会社の株主名簿(Corporate Books)に記録されている当該権利を書面に明示していない限り、質権設定者は株主総会に出席し、議決権を行使する権限を有します。なお、抵当権に関しても同様となります。裁判所から指名された管財人についても、書面による委任状なしに株主総会に出席し、議決権を行使する権限を有するものとされています(54条)。
株主の権利と責任
株主に対しては日本と同様 、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利及び株主総会における議決権が与えられています。
なお、株式会社は定款において株式の権利を種類別に規定することができ、各々の権利は優先株(Preferred Shares)を設けることで制限することはできます。
また、株主は発行された株式の引受価額を全額払込まなければならず、払込んだ金額以上に責任を負うことはありません(株主有限責任の原則)。
取締役(会)
取締役
取締役は、自己が取締役となっている会社の株式を1株以上自ら保有し、自らの名で株主名簿に登録しなければなりません。これは、もともと取締役の役割として 、会社の所有者である株主の中から選ばれた経営の受託者として、法人が株主の資産を適正に運営するよう監督することが期待されているためです。いわば、株主の代表として取締役がいるため 、取締役は当然のことながら株主である、という趣旨に基づきます。
よって、自らが取締役となっている会社の株式をすべて手離した場合には、取締役を辞任しなければなりません。
取締役の欠格事由として、禁固6年以上の刑を言い渡された者、または選任日以前の5年間にフィリピン会社法に違反した者が定められています。 これらの事由に該当する場合、会社の取締役または役員になることができません(26条)。
※1人株式会社の場合は、取締役は1名でも可 ネガティブリストに該当する場合には、 アンチダミー法の適用を受けます。
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