税務
税務
+ .1 .マレーシアにおける税務の概要
租税の体系
マレーシアの租税の種類には、国が管轄する国税以外の地方税や市民税はなく、全てが国税となっており、主な税金の種類は以下の通りです。
マレーシアでは、財務省のマレーシア内国歳入庁が個人ならびに法人の所得税、石油所得税、不動産譲渡益税、印紙税を徴収しており、同省内の関税局、陸運局が、それぞれ輸出入関税、売上税・サービス税(SST)および物品税を管轄しています。
上記のうち、法人所得税と個人所得税については、所得税法に規定されており、法律体系として、日本でいう各税法を補足する施行令、租税特別措置法および基本通達などに似た規定があります。
また、マレーシアにおいては、以前から判例や慣習に基づいて税務行政が執行されていることが少なくありません。
■直接税と間接税
<直接税>
直接税とは、税金を納める「納税義務者」と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。マレーシアにおいては個人所得税、法人所得税などがこれに該当します。
<間接税>
間接税とは、直接税と異なり、納める人と実際に負担する人が異なる税金をいいます。売上税、サービス税、物品税などが該当します。
マレーシアの租税法
マレーシアの租税法については、日本のように本法、施行令、通達といった体系と似ており、「所得税法」に国税の4税目が記載されており、それを補完するものとして勅令、省令、歳入国規則などが規定されています。それぞれの内容については、以下の通りです。
<所得税法>
個人所得税、法人所得税、不動産譲渡益税、石油所得税の4税目について規定されており、マレーシア租税法の中でもメインになる法律です。
<勅令>
内閣により発行され、所得税法が定める課税の免除や軽減を定めることを目的として発行されます。
<省令、省告示>
法令の細かい部分や、緊急の免税措置などを定めるために発行されるものです。
<内国歳入局通達、歳入局告示>
法令の解釈をめぐり、より実務的な個別の事例に対応しているものです。
<ルーリング>
納税者が税法の解釈や実務上の取り扱いに困った際には、歳入局に対して直接文書にて問い合わせをすることが可能であり、その回答として質問者に返送される事をルーリングと呼びます。
一部の照会については公開されており、実務上の指針として利用されています。ただし、あくまで個別事案としての事項ですので、これをもって全て同じ解釈を適用できるとは限りません。
上記のように、法令やルール自体は存在しますが、それぞれが管轄省庁や適用範囲などに曖昧な部分を残しており、また、その時々の経済状況、社会情勢等により改正が随時行われています。
+ .2 .マレーシアの国内税法
個人所得税
■個人所得税の概要
個人所得税を計算する場合、対象となる個人が「居住者」であるか、「非居住者」であるかにより、所得範囲、税率および税額控除の有無等が異なってきます。したがって、所得税を計算する際には、まず、対象となる個人が居住者か非居住者であるかを判断する必要があります。
■居住者・非居住者の定義
居住性の判断は、マレーシアでの「滞在日数」を基準とするものであり、「国籍」「本籍」「出生地」を基準とすることはありません。あくまで、マレーシアの「滞在日数」に基づき居住性を判断します。また、マレーシアにおいては、「暦年(その年の1月1日から12月31日)」を課税対象年としており、下記のように、「居住者」が定義づけられております。
当該年におけるマレーシアに182日以上滞在した場合
■4つの判断基準
1. 当該暦年におけるマレーシアに182日以上滞在した場合
2. 当該暦年におけるマレーシアの滞在が182日未満であるが、当該暦年度の直前、もしくは直後の
暦年において「連続して」かつ「継続して」182日以上マレーシアに滞在した場合
3. 当該暦年中における滞在日数が90日以上であり、直前4暦年中いずれかの3暦年において居住者であるか、または90日以上滞在する場合。
4. 当該暦年中においてマレーシアには全く滞在しない場合であっても、直前3暦年および直後の暦年
において居住者と認定されている場合は、全く滞在実績のない当該暦年においても居住者と認定さ
れます。
当該年におけるマレーシアの滞在が182日未満であるが、当該年の直前、もしくは直後の年において「連続して」かつ「継続して」182日以上マレーシアに滞在した場合
例)滞在期間(2024年10月1日〜2025年4月20日)
当該年中における滞在日数が90日以上であり、直前4暦年のうち、いずれかの3暦年において居住者であるか、または90日以上滞在する場合
例)
※判定する年の直前の4年のうち、2022年、2024年は90日以上の滞在、2023年は、2.の条件に該当し、居住者扱いとなります。このことから、「当該年中における滞在日数が90日以上であり、直前4年間のうち、いずれかの年において居住者であるかまたは90日以上滞在する場合」に該当することになるため、2025年(当該年)も居住者として扱われます。
当該暦年中においてマレーシアには全く滞在しない場合であっても、直前3暦年および直後の暦年では居住者と認定されている場合は、全く滞在実績のない当該暦年においても居住者とみなされます。例えば、2021年、2022年、2023年及び2025年に居住者と認定されている場合は、2024年も居住者として認定されます。
例)
2021年〜2023年と2025年が居住者として判断されているので、2024年も居住者として扱われることになります。
【課税所得の範囲】
居住者の区分により、課税される所得の範囲は次の通りです。
■国内源泉所得の定義
マレーシアにおける国内源泉所得は、以下のように定義されています。
・マレーシア国内の職位、職務から生じる所得
・マレーシア国内の事業所または事業から生じる所得
・マレーシア国内に所在する資産から生じる所得
このように、所得の受領地や居住者・非居住者であるかどうかは問いません。
つまり、マレーシアにおいて「居住者」である場合には、マレーシア国内の所得だけでなく、その他の国において発生した所得のうち、マレーシア国内に送金された所得も課税されることになります。また、非居住者とされた場合には、マレーシア国内で発生した所得のみ、マレーシアにおいて課税されることになります。
日本からの出張などで短期間(182日未満)マレーシアに滞在する場合に、一定の要件を満たす場合には、その期間内の給与について、日本とマレーシアの間で締結された租税条約(以下、「日馬租税条約」という)により課税されないこととなります。(詳細については、後述)
■所得税額の計算
マレーシアにおける所得税計算については、次の手順により計算します。
①総所得金額
まず、その年における全ての収入から、課税される収入と非課税収入を区分する必要があります。
課税される収入については、所得税法の第4条において以下の通り列挙されています。
・通商、事業から稼得された利得および利益
・雇用から生じた利益および利得
・配当金、利息および割引料
・恩給、年金、その他の定期収入
・収入の性質を有する上記以外の利得および利益
②所得控除額(Tax Relief)
所得金額から、各種所得控除額を控除し、課税所得金額を算出します。所得控除が受けられるのは、マレーシア居住者に限られます。所得控除については、次の種類があります。
【所得控除一覧】
<非居住者の場合(免税)>
マレーシアでの合計雇用期間が暦年で60日以内、または雇用期間が2年間にまたがっている場合には。その2年間の合計雇用日数が60日以内であればマレーシアで雇用されている非居住者は、短期被雇用者扱いとして、免税の対象となります。
<経営統括会社(OHQ)の被雇用者>
マレーシアにある経営統括本社(OHQ),リージョナルオフィス(RO)、国際的資材調達センター(IPC)などで働くマレーシア国民でない者は、マレーシアに滞在した日数に相当する雇用所得部分が課税されます。ただし、暦年のうちマレーシアに60日以上滞在した場合であり、60日以内であれば免税となります。暦年で60日以上滞在した場合の課税控除額の計算は以下の通りです。
③現物給付
マレーシアで雇用主から行われる現物給付に関しては、その全てが課税対象となります。課税される評価額は、内国歳入庁で定められた以下の計算式で算定した金額となります。
また、主な資産の耐用年数は以下の通りです。
④税額控除(Tax Rebates)
個人の年間の収入金額が35,000RMを越えない場合には、既に支払った税額のうち400RMが払い戻しされます。例えば、夫婦で両名とも35,000RMを超えない場合は、合計で800RMの払い戻しを受けられることとなります。
また、ザカートやフィトラのようなイスラム教の教えに則り、義務として寄付金を支払った場合には、その支払った寄附金の実額分、払い戻しがされます。
⑤所得税額の算出
所得税額の算出上記で算出した課税所得金額に対して、次の累進税率を乗じて所得税額を算出します。
年間所得金額(リンギット) | 計算方法 | 税率 | 税額 (RM) |
1 – 5,000 | 最初2,500まで | 0% | 0 |
5,001 – 20,000 | 最初5,000まで 残15,000まで | 1% | 0 150 |
20,001 – 35,000 | 最初20,000まで 残35,000まで | 5% | 150 450 |
35,001 – 50,000 | 最初35,000まで 残15,000まで | 8% | 600 1,200 |
50,001 – 70,000 | 最初50,000まで 残20,000まで | 14% | 1,800 2,800 |
70,001 – 100,000 | 最初70,000まで 残30,000まで | 21% | 4,600 6,300 |
100,001 – 250,000 | 最初100,000まで 残150,000まで | 24% | 10,900 36,000 |
250,001 – 400,000 | 最初250,000まで 残150,000まで | 24.5% | 46,900 36,750 |
400,001 – 600,000 | 最初400,000まで 残200,000まで | 25% | 83,650 50,000 |
600,001 – 1,000,000 | 最初600,000まで 残400,000まで | 26% | 133,650 104,000 |
1,000,000超 | 最初1,000,000まで 残りの所得全額 | 28% | 237,650 ~~~ |
<2025年度所得税率表>
【個人所得税累進税率(YA 2025)】
(出所:LHDNをもとにTCG作成(2026年6月時点))
たとえば、課税所得における年間所得が200,000リンギットの場合、個人所得税の算出方法は以下の通りになります。
1.年間所得200,000リンギットのうち、100,000リンギットに課せられる所得税額:9,400リンギット
2.残り100,000リンギットに課せられる所得税額:100,000リンギット×24%=25,000リンギット
3. 個人所得税額合計:9,400リンギット+25,000リンギット=34,400リンギット
申告・納付手続
<個人所得税 申告・納税スケジュール>
■納付遅延に対するペナルティ
マレーシアでは、毎月税額の納付を行い、その後年次の確定申告で過不足分の調整を行う、という流れになっています。そのため、雇用主は源泉徴収という形で毎月15日までに徴収した源泉税を内国歳入庁に支払います。納付が遅れた際のペナルティは200RM〜2,000RMもしくは懲役刑、またはその両方が課されることがあります。
■申告・納付
<申告方法>
マレーシアでの個人所得税の申告には、e-My Taxという税務当局が管轄している専用のサイトから行います。
<納税スケジュール>
マレーシアにおける個人所得税の課税対象期間は1月1日から12月31日となり、通常当該課税年度の翌年の4月30日までに申告及び納付を行う必要があります。ある年度によって政府により猶予期間が設けられている年もあります。
また、雇用主は、従業員に対してForm EA(給与支払明細書)を作成し、交付します。
■確定申告・納付遅延によるペナルティ
申告・納付が遅延した場合、30日以内の支払いであれば、10%のペナルティが課せられ、それ以降に支払った場合は、そこに5%のペナルティが上積みされ、合計で15%のペナルティが課せられることとなります。
法人所得税
■納税義務者
マレーシアにおける法人の居住性について、管理支配地主義により居住地が決定されています。通常、マレーシア国内において会社法に基づき設立された会社は、日本などの外国資本であってもすべて居住法人として扱われます。しかし、マレーシアの会社法に基づいて設立されたかにかかわらず、マレーシア以外の外国で株主総会や取締役会が開催され、かつ業務執行の運営・管理が行われている場合には、マレーシアの所得税法上、非居住法人となります。
マレーシアの税制上、居住法人は優遇されており、非居住法人は新会社に対する免税措置、国外源泉所得に対する免税措置、二重課税回避条約に基づく源泉税等の減免が適用されません。また、居住者の判定は、賦課年度ごとになされています。
■課税年度
マレーシアにおける、法人所得税の課税年度については、原則として事業年度基準となります。この事業年度は会社ごとで設定することができます。
■課税所得
課税対象となる基準は、マレーシアで所得を得ているか否かです。マレーシアにおける法人所得税の納税義務者は、マレーシアで設立された法人・組合、及び外国の法律により設立された法人・組合であり、マレーシア国内で事業を営むものとされており、これを属地主義といいます。マレーシア国内所得及び海外所得のうち、マレーシア国内で受け取る所得はすべて課税対象となります。
マレーシアにおいて課税対象となる所得は、2025年現在マレーシア源泉所得に限っています。
■課税所得の計算
所得税法における課税所得とは、一般的に1会計期間(通常は事業年度)に営まれた事業に係るすべての益金からすべての損金を差し引いて算定されます。事業年度は、原則12カ月とされています。
また、益金及び損金は発生主義により認識されるため、当該事業年度に生じたすべての益金は実際の金銭の収受にかかわらず、損金はその支払いの有無にかかわらず所得金額の算定に含めることになります。
■益金の額
マレーシアにおいては、課税所得の算定にあたり、日本と同様に会計上の利益に調整項目を加減算して課税所得を算定します。
マレーシアの法人所得税は、個人所得税と同様、属地主義(Territorial basis system)により算定されます。つまり、現地マレーシア源泉の所得、あるいはマレーシア国外源泉のうちマレーシアで受け取る所得は全て課税対象となります。具体的には、所得税法第4条で列挙されている以下のものとなります
・ビジネス活動から稼得された利得および利益
・雇用から生じた利益および利得
・配当金、利息および割引料
・恩給、年金、その他の定期収入
・収入の性質を有する上記以外の利得および利益
■損金の概要
マレーシアにおける課税所得の算定にあたり、関係する損金規定は以下の通りです。
・会社秘書役費用及び税務申告に関わる費用
2015年度から、損金として費用計上が可能となります。また、合わせてGST導入に関して、会計やITの従業員研修に対しては二重の控除が認められています。
・自動車関連費用
マレーシア国内で、50,000RM超または100,000RM超のリース料については、損金として算入することは認められておりません。また100,000RMリース料を超える場合は、車両費用が150,000RM以下で以前に使用されていない場合に適用されます。
・交際費
マレーシアでは、従業員のみを対象にしたもの及びホテル業や外食産業の様に、接客自体が事業の目的となっている場合のみ損金に算入が可能となります。それ以外は、原則として損金の額に算入されません。
・一般引当金
引当金については、原則として損金の額に算入されません。
・寄付金
政府及び慈善団体委員会によって認められた、慈善活動のみを行っている特定の団体に対してなされた寄付のみ、損金算入が認められます。
・開業費
日本では、創業費や開業費は繰延資産と認められ、償却額を損金計上することが可能ですが、マレーシアでは、営業開始までに要した費用は一切損金として認められていません。
■減価償却費
マレーシアにおいては、キャピタルゲイン非課税からも象徴されているとおり、会計上、減価償却費は計算されますが、税務上は損金算入が認められません。これは資本項目にかかわる支出の原則損金算入が認められていないためです。原則として会計上の減価償却費は、課税所得に全額加算され、税務上の減価償却費を新たに計算して課税所得から減算します。
・取得価額
取得価額については、原則として会計上の取り扱いが準用されます。購入代価に引取運賃、荷役料、運送保険料、関税、据付費、その他取得のために要した費用を加えたものが取得価額となります。
・償却率
<産業用建物>
工場や埠頭のような産業建物に対して、2005年度以降から、購入金額を元に、取得年度償却率10%、次年度償却率3%を減価償却として認めています。また、Malaysia Digital(MD)ステータスを取得している会社に対しては、10年間の産業建物償却期間が認められています。
<プラントおよび機械設備>
こちらは、3つのカテゴリーに対してそれぞれ償却率が異なっております。3つのカテゴリーとは、重機械、機械設備並びにプラント、その他(事務用機器等)です。重機械にかんしては、取得年度20%、次年度以降も20%の償却が認められています。機械設備並びにプラントに関しては、取得年度20%、次年度以降14%の償却が認められています。その他(事務用機器等)は、取得年度20%、次年度以降10%の償却が認められております。車両に関してのみ、取得価格が15万リンギット以下であり、2000年10月28日以降に取得している場合には、適格支出が10万リンギットまでとし、それ以外は5万リンギットまでとなります。
<農業用設備等>
こちらは4つのカテゴリーに分けられ、それぞれ償却率が決められております。
1つ目は、土地の整備、農作物の植え付けや道路の拡張などに対するもので、償却率は50%です。2つ目は、農業ビジネスに関する施設に対するもので、こちらは償却率10%です。3つ目は、農業従業者に対する建物で、こちらは償却率20%です。4つ目は、その他に対するもので、償却率は10%となっています。
<償却方法>
償却方法については内国歳入法において規定はされていないため、基本的には税務上の償却方法に従う形となります。
取得した時点で、初年度償却を行わない場合、翌年度からの償却は行えません。また途中で中断した償却は、再度再開するに当たり、過去の分を合わせて損金算入することは認められていません。
<加速度償却>
こちらに関しては、主に、産業用建物(製造業や観光業がライセンスを認可された事業を行っている会社であり、その従業員に提供する建物)やプラント及び機械設備(天然ガスを販売する機器、廃棄物のリサイクルに使用される製造業のプラント及び機械設備等)で認められており、それぞれのカテゴリーによって、償却率が違っています。
■法人税率
【法人税率(通常法人 vs SME優遇税率)2025年度】
(出所:LHDNをもとにTCG作成(2026年6月時点))
居住法人は原則として24%の法人税率が課せられます。しかし、小規模会社に対する法人税は優遇措置が設けられており、事業年度の開始時点における払込資本金に応じて15%(最初の150,000RM)・17%(150,001〜600,000RM)・24%(600,001RM超)の優遇税率が適用されます(YA2024〜)。
■グローバル・ミニマム課税(Pillar Two/QDMTT)
2025年1月1日より、マレーシアにグローバル・ミニマム課税制度(Pillar Two)が導入されました。直前4事業年度のうち2以上において年間総収入が7億5,000万ユーロ相当額以上の多国籍企業グループが対象です。実効税率が15%を下回る場合、その差額がトップアップ税(QDMTT)としてマレーシアで課税されます。パイオニア・ステータス等の優遇税制を活用している大規模多国籍企業グループは、税効果への影響を再検討する必要があります。
グループ・リリーフ(連結納税制度 損益通算制度)
マレーシアで設立されたすべての居住会社には、グループ・リリーフ(連結納税制度)が適用され、当年度における未処分損失の70%以下について、同グループ内の他の居住会社の所得と相殺できる。ただし、払込資本金、会計年度、同グループ内の企業間の株式保有要件等に関し、一定の条件を満たすことが必要となる。
マレーシア国内で設立されたグループ法人間については、2006年以降、業種を問わず次の要件を満たす場合には、そのグループ法人のうち、赤字法人の単年度の欠損金の70%を限度として、その他のグループ法人の所得の合計額から控除することができます。
⑴ 普通株式による資本金が2,500,000リンギット以上
⑵ 欠損が生じた法人と所得が生じている法人の事業年度が同一
⑶ 株式の直接又は間接保有の関係が、欠損法人と所得が生じている法人との間に70%以上の関係を有している
⑷ 所得通算年度及びその前年度を通じて、双方の法人間において、70%以上の株式保有関係を有している
但し、次に掲げる優遇を享受している法人については、所得通算制度を適用することはできません。
① パイオニアステータス
② 投資税額控除(ITA)
③ 再投資控除(RA)
④ 海運ビジネスによる利益に認められた免除措置
⑤ 1967年の所得税法セクション54A、127に規定された免税措置
⑥ 2002年の所得税通達による、所有権取得原価の所得控除
⑦ 2003年の所得税通達による、外国会社の買収原価の所得控除
■地域統括本部に対する優遇税制
一定の条件を満たして、マレーシアを地域統括拠点として活動している企業に対して優遇税制が適用されます。従来のプリンシパル・ハブ(PH)制度に代わり、2023年10月より「グローバルサービス・ハブ(Global Services Hub:GSH)インセンティブ」が導入されており、申請期間は2027年12月31日まで(申請先:MIDA)。Tier1の新会社は適格所得に対して5年間5%の法人税率、Tier2は10%の法人税率が適用されます。
申告・納付手続
決算日後、納税額をマレーシア内国歳入庁に提出し、納税を行います。申請に際して必要な書類は、CP207と呼ばれるものです。これは、内国歳入庁のHPから入手が可能です。
[法人所得税の申告・納税]
会計年度が終了した月から7ヶ月以内に内国歳入庁に支払わなければなりません。FormCP207を使用し、内国歳入庁に支払いをします。その際の支払いは、内国歳入庁窓口、郵便局、銀行及びインターネットでの支払いが可能です。
■見積り納付
マレーシアでは独特の計算方法がとられています。それは、法人税の見積り額をあらかじめ計算をして、それを内国歳入庁に届出をし、それに基づき毎月15日に納付をするものです。これは適当に計算すれば良いというわけではなく、翌年の事業計画に基づいて計算をします。年に3回見積り額の修正する機会が与えられ、この3回のうちのいずれかをタイミングで修正申告を行うことができます。また、実際の納付額と見積もり時の納付額に大きな差がある場合は、その差額に対してペナルティが科せられます。
<スケジュール>
■修正見積り納付額に対する制限
見積納付額については、既に計算、納付した金額を修正する場合、見積り額の85%を下回って修正することはできません。
また、見積納付額の年間合計の30%以上の金額を最終的に追加で納付することになった場合、超過分に対して、10%のペナルティが科されます。
<超課金に対するペナルティの計算式>】
{(実際納付額—見積り納付額) - (30%×実際納付額)} × 10%
■ペナルティについて
<前納に対するペナルティ>
月次の見積納付の際に、期日までに支払ができなかった場合は、当該月までに支払うべき税金の残高に対して10%のペナルティが科されます。
<支払遅延に対するペナルティ>
納付遅延の場合は、30日以内であれば10%。それ以降の月に対しては、各月5%が上乗せされます。
[異議申立]
上記の遅延にかかるペナルティに対して異議がある場合、30日以内に管轄税務署に書面で申出を行うことができます。ただし、当該申出に関わらず、ペナルティを支払わなければなりません。
GSTからSSTへ(SSTの概要)
付加価値税(GST:Goods Service Tax)は、マレーシア国内で取引される財貨及びサービスに対して課される間接税です。間接税とは、実質的な税負担者と納税者が一緒になる直接税とは異なり、実質的な税負担者と納税者が異なる税のことを言います。GSTは日本における消費税に徴税方法が類似しているため、日本の消費税に当たるものとして解釈されています。また、GSTは2015年4月1日より税率6%で導入されていました。
しかし、GSTの導入が物価上昇を招いたとして、GSTの廃止と旧税制であるSSTの再導入を掲げていたマハティール政権が就いたため、GST の標準税率を0%に変更し、実質的にGSTを廃止しました。その後、2018年8月にSST導入とGST廃止のための法案が可決され、2018年9月1日より、SSTが復活し制度が開始されました。
SSTは、売上税(Sales Tax)とサービス税(Service Tax)の2つを合わせた略称です(Sale and Service Tax)。これらは、商流の特定の一時点で発生する間接税です。以下に両間接税の概要を記載します。
■売上税(Sales Tax)
課税対象
売上税は、一定の地域を除くマレーシア国内で製造された課税物品と、マレーシアに輸入される課税物品が課税対象になります。マレーシアで製造される課税物品については、売上税の課税事業者登録をした製造業者が課税物品を販売、自家消費、処分するときに課税されます。一方、輸入の場合は関税と同様に通関時に課税されます。
製造業者の課税事業者登録については、マレーシア国内の製造事業者のうち、当月を含む過去12か月または将来12か月間の課税物品の売上がRM500,000以上の会社については、売上税の課税事業者の登録義務があります。
(注)「製造」の定義は売上税法(Sales Tax Act2018)に規定されています。
手作業または機械を用いて, 材料の大きさ、形状、構成、性質を変質させることをいい、部品等をアセンブリーして、機械やその他の物品にすることも含まれています。建設のために機械や設備の据付けは製造には含まれません。
納税義務
課税事業者である製造業者に納税義務が生じます。当該税造業者が、課税物品を販売した時点、自家消費または処分した場合は, その自家消費または処分した時点で納税義務が生じます。課税物品の輸入の場合は、輸入時に納税義務が生じます。
課税標準
マレーシア国内で製造された課税物品の場合、実際の取引金額が課税標準になります。一方、輸入課税物品の場合は、関税上の評価額、当該物品に課された関税、奢多税(excise duty) の合計額が課税標準になります。
税率
省令に記載された一定の免税物品及び石油を除き、次のように区分されています。
関税コード(HS コード)に基づき省令で指定されている物品・・・5%
上記以外の物品・・・10%
課税期間
売上税に係る課税期間は原則2か月です。
申告・納付
各課税期間に販売・自家消費・処分した課税物品に係る売上税を申告・納付する必要があり、各課税期間に係る申告・納付期限は、課税期間終了日の翌月末日です。
なお、納付延滞についてはペナルティがあり、次の延滞期間区分に応じて料率が異なります。
30日以内・・・・・・・・・・・10%
30日超60日以内・・・・25%
60日超・・・・・・・・・・・・・40%
免税制度
売上税には複数の免税制度が設けられており、①HSコードに基づき指定された特定の物品を免税とする制度と、②一定の者が取引する場合に諸条件のもと免税を付与する制度に分けられます。②については更に次の3つに分類されています。
Schedule A
登録事業者である製造業者による輸出に係る免税や、登録事業者である製造業者が国内の別の事業者を通して輸出する場合の当該別の事業者による購入に係る免税などが規定されています。(国王、政府機関、特定の者)
Schedule B
登録事業者でない一定の製造業者による仕入れに係る売上税負担を排除する制度です。
Schedule C
部品の輸入または製造・加工・製品の組立てで、複数の製造業者が存在することにより、製造過程において、複数段階で重複して課税が行われることを排除し、一段階課税を実現する趣旨で設けられています。また、商社などの非製造業者が間に入って、輸入または登録製造業者からの購入を行う場合についても免税が適用されます。売上税制では、GSTのような仕入税額控除の仕組みがない代わりに、上記のような免税制度が設けられています。
輸出された物品に係る還付制度
輸出された物品に関して、輸出前に売上税が発生していた場合に、当該売上税を支払った者は、一定の条件の下、売上税の還付申請ができます。これは、製造業者の輸出物品の国際競争力を維持する目的があります。
■サービス税(Service Tax)
課税対象
マレーシア国内で課税事業者が行う特定の課税サービスが課税対象になります。課税サービスについては、Service Tax Regulations 2018に列挙されています。
サービス税法において、指定地域および特別地域はマレーシア国外として取り扱われていることから、指定地域および特別地域内で行われるサービスは課税対象外になっています。
課税対象になる事業者と課税サービス、登録義務が生じる年間課税売上額の一覧表を次に示します。
(注)課税事業者登録
マレーシア国内で課税サービスを提供する事業者のうち、当月を含む過去12か月または将来12か月における課税サービスの売上が一定額以上(下記表参照)の者は、サービス税事業者としての登録義務があります。一の会社で複数の部門や支店を持って事業を行っている場合には、一定の条件の下、部門または支店ごとに登録申請が可能です。
グループA 宿泊 | |||
ホテルやサービスアパ-トメント など宿泊施設の運営者 | 宿泊場所の提供および同じ場所でのその他のサービス | RM500,000 | |
グループB 飲食 | |||
レストラン、バー、食堂、カフェなど飲食を提供する場所の運営者(店内飲食か持ち帰りかを問わない) | 飲食の提供および同じ場所でのその他のサービス | RM1,500,000 | |
グループC ナイトクラブ、ダンスホール、ビアハウスなど | |||
ナイトクラブ,ダンスホール、キャバレー、ヘルス・ウェルネスセンター、マッサージパーラーなどの運営者 | 左記の場所でのサービスの提供、タバコ・飲料(アルコール含む)の販売 | RM500,000 | |
グループD プライベートクラブ | |||
特定の会員や専門職のクラブなどの運営 | プアイベートクラブにおけるサービスの提供、タバコ・飲料(アルコール含む)の販売 | RM500,000 | |
グループE ゴルグクラブ・練習場 | |||
ゴルフクラブ・練習場の運営者 | ゴルフクラブ・練習場におけるサービスの提供、タバコ・飲食(アルコール含む)の販売 | RM500,000 | |
グループF ギャンブル・ゲーム | |||
ギャンブル・くじ・ゲーム機などに係るライセンスを持つ事業者 | ギャンブル・くじ・グーム機などに係るサービスの提供 | RM500,000 | |
グループG 専門家 | |||
1 | 弁護士 | 法律サービスおよび付随するサービス、法務に係るコンサルティング | RM500,000 |
2 | イスラム法弁護士 | イスラム法に係る法律サービスおよび付随サービス,イスラム法に係るコンサルティング | |
3 | 公認会計士 | 会計、監査、記帳サービス、コンサルティング その他の専門サービス | |
4 | 鑑定士 | 鑑定評価等のサービス | |
5 | 登録を受けたエンジニア | エンジニアリングのコンサルティングなどの専門 サービス | |
6 | 建築士 | 専門的なコンサルティングなどの専門サービス | |
7 | コンサルティングサービスの提供 者(投資促進法のR&D会社・受 託R&D会社、所得税法の承認研 究機関を除く) | コンサルティングサービス | |
8 | ITサービスの提供 | ITサービス | |
9 | マネジメントサービスの提供者 | プロジェクトのマネジメントやコーディネーションを含むあらゆるマネジメントサービス | |
10 | 雇用に係るサービスの提供者 | 雇用に係るあらゆるサービス(出向を除く) | |
11 | ライセンスを持つ警備業者 | セキュリティーサービス | |
グループH クレジットカード・チャージカード | |||
中央銀行の規制のもとクレジット カード・チャージヵ― ドを提供す る者 | クレジットカード・チャージヵ― ドの提供 | なし | |
グループI その他のサービス | |||
1 | 保険業者 | 医療保険および生命保険を除く、個人に対する保険の提供及び国外に関わる一定の保険を除く事業者に対する保険の提供 | RM500,000 |
2 | 電話及び有料テレビのサービス提供者 | 左記のサービス | RM500,000 |
3 | 通関業者 | 通関サービス | なし |
4 | 駐車場オペレーター | 駐車スペースの提供 | RM500,000 |
5 | 車の修理・点検サービス事業 | 左記のサービス | RM500,000 |
6 | クーリエサービス事業者 | 左記のサービス | RM500,000 |
7 | ハイヤー | ハイヤー、貸切バス、旅行バスの提供 | RM500,000 |
8 | 広告サービス事業者 | 左記のサービス | RM500,000 |
9 | 電力会社 | 家庭向け電力の提供(月600kWhを超える部分) | RM500,000 |
10 | 国内航空業者 | 国内線のフライトの提供、ただし地域路線(Rural Air Services)を除く | RM500,000 |
納税義務
課税事業者が課税サービスに係る対価を収受した時点で納税義務が生じます。
ただし、インボイスの日から12か月間収入がなかった場合は、12か月経過した時点で納税義務が生じます。
課税標準
課税サービスに係る実際の対価の金額が課税標準になります。
ただし、関連者間同士の取引の場合は、関連者でない者と一般に取引されている価格(市場価格)が課税標準になります。
税率
基本税率は8%です。ただし、クレジットカード、チャージカードの提供については、カード1枚あたりRM25になっています。
課税期間
売上税と同様で、課税期間は原則2か月です。
申告・納付
売上税と同様で、各課税期間に係る申告・納付期限は、課税期間終了日の翌月末日です。
また、売上税と同様に、納付延滞についてもペナルティがあり、次の延滞期間区分に応じて料率が異なります。
30日以内・・・・・・・・・・・10%
30日超60日以内・・・・25%
60日超・・・・・・・・・・・・・40%
グループ会社間の非課税
上記表中のグループGの1から9までの課税サービスが一定の支配関係のあるグループ会社間で行われる場合には非課税とされています。
但し、当該サービスを提供する会社が、グループ外の会社に提供する場合には、グループ内への提供に係る部分についても課税取引として取り扱います。
輸入サービスにおけるSSTの扱い
国内で提供されるサービスに加え、近年の規制改正により、国外から輸入されるサービスについてもSSTの課税対象となる場合があります。
まず、輸入サービスとは、国外のサービス提供者がマレーシア居住者に対して提供するサービスで、マレーシア国内で消費されるサービスを指します。具体例としては、クラウドサービス、広告配信サービス、ソフトウェアライセンス、コンサルティングサービスなどが挙げられます。
輸入サービスに対するSSTの適用は、サービス使用者(受領者)側に納税義務が課される逆課税方式(reverse charge mechanism)により行われます。具体的には、国外のサービス提供者がマレーシアのSST登録事業者でない場合でも、マレーシアの受領者が自らSSTを計算し、納付する必要があります。これにより、国外事業者のSST未納による競争上の不公平を防ぐ狙いがあります。
逆課税の対象となる輸入サービスは、原則として以下の条件を満たす必要があります:
サービスの提供者がマレーシア国外に所在していること
サービスの受領者がマレーシア国内でサービスを利用していること
サービスがSST法令上の課税対象サービスに該当すること
SSTの計算方法は、国内提供サービスと同様に、課税対象額に対して標準税率(サービス税は8%)を乗じて算定します。受領者は、自らが計算したSSTを税務当局に納付すると同時に、仕入れ税控除が認められる場合には、課税控除として処理することが可能です。
なお、輸入サービスに対するSSTは、国内消費を適切に課税する観点から、登録事業者のみならず、特定の非登録事業者にも納税義務が発生する場合があります。そのため、国外サービスを受領する企業は、事前に税務上の適用範囲を確認し、SSTの計算・申告・納付体制を整備することが重要です。
その他の税目
■石油所得税
石油所得税は、石油所得税法に基づく税制であり、石油会社の所得に対して課される税金です。この対象は、ペトロナス社またはマレーシア・タイ監督官庁と石油協定を締結し、石油事業を行う個人に対して課税されます。
石油会社の所得には、石油と天然ガスの製造、輸送、販売によるものと、採掘区の使用料および割当譲渡の対価として政府に支払う金額をガスの価格に反映した分も含まれており、大部分の石油会社に対する税率は、純利益の38%となっています。
■印紙税
印紙税とは、法務や財務などの証書や文書等に課せられる税金のことを言い、税率は証書の種類などによって異なります。一部の証書や文書については免税措置を受けることが可能です。
マレーシア国内で作成された文書は30日以内、マレーシア国外で作成された文書は、その文書を受け取ってから30日以内に印紙税を納付する必要があり、期限内に納付できなかった場合には罰則を受けることになります。
主な印紙税は以下の通りです。
■不動産売却益税
不動産の売却によるキャピタルゲインに対しては、不動産売却益税(Real Property Gains Tax)が課せられます。同税は2007年に税率が0%とされ実質的に課税が停止されていましたが、不動産投機の抑制を目的として、2010年に再び課税が開始されました。
税率は以下の通りで、不動産の保有期間によって税率は異なります。
■物品税
ビール、スタウト・ビール等の酒類や、たばこの葉が含まれた巻たばこ、トランプ、自動車などの特定の品目には、物品税(ExciseDuty)が課されます。物品税の税率は対象製品によって異なり、自動車はエンジン排気量により60%~105%と幅があります。
物品税の対象製品の製造・保管には、ライセンス取得義務が存在します。
■輸出入税
課税対象品目をマレーシアに輸入する場合、輸入税が課されます。一部の品目を除き、従価方式により輸入税額が決まります。
マレーシアからの完成品輸出を増加させるため、その原材料や部品、工場用の機械などは、低税率あるいは免税措置がなされています。
輸出税は、パーマ油や原油などマレーシアの主要産品に課されます。
マレーシアにおける税務調査
マレーシアにおける税務調査については、以下の通りです。
①国税担当官からのヒアリング
申告書の税務署への提出後、税務調査官により申告書類の㆑ビューが行われ、電話や文書により納税者側へ問い合わせがあります。調査官からの指摘に対して反論を続ける場合には、税務当局から召喚状が発送され、本格的な税務調査が始まります。
②召喚状による本格調査
召喚状が発行された場合、その対象者に係るすべての税目につき税務調査が行われることになります。調査終了後、税務当局より更正通知が発行され、ペナルティを含めた税額の納付が必要となります。この処分に納得できない場合には、異議申立、税務訴訟といった手続により解決を図ることとなります。
③還付申告による調査
納税者から還付申告書が提出された場合、調査官のレビューを受けた後、還付手続がなされることとなります。
■税務調査に係るペナルティ
過少申告の場合は、下記に示す通りの罰金が加えられます。ただし、納税者側が自主的に修正申告を行った場合には、35%のペナルティが課されます
+ .3 . その他マレーシア税制度
源泉徴収制度の概要
マレーシアの源泉徴収税は、国外の法人または個人に対して支払われる一定の所得に対して課税されます。課税の範囲としては広くはないですが、細かく税率が分かれているので留意する必要があります。
■個人に対する支払
■法人に対する支払
上記、「テクニカルフィー」は英訳では“Special class of income”と称されており、2019年度予算案の策定により、この“Special classes of income”の認識基準に一部変更がございました。
これまで、“Special classes of income”の対象となっていたのは以下の内容のサービスでした。
(a) amounts paid in consideration of services rendered by a person or his employee in connection with the use of property or rights belonging to, or the installation or operation of any plant, machinery or other apparatus purchased from, such person;
⇒資産および権利の使用に関連して提供されたサービスまたは機械設備の据付・使用に関連して提供されたサービスの対価
(b) amounts paid in consideration of technical advice, assistance or services rendered in connection with technical management or administration of any scientific, industrial or commercial undertaking, venture, project or scheme;
⇒学術的、産業的、商業的事業における経営管理技術に関して提供された技術的指導、援助、サービスの対価
(c) rent or other payments made under any agreement or arrangement for the use of any moveable property,
⇒動産の賃貸借契約に基づくレンタル料
上記のうち、変更となったのは(b)の内容となります。
変更後の内容は以下の通りです。
(b) amounts paid in consideration of any advice given, or assistance or services rendered in connection with any scientific, industrial or commercial undertaking, venture, project or scheme;
⇒学術的、産業的、商業的事業に関して提供された指導、援助、サービスの対価
この変更により、「経営管理技術に関して~」、「技術的な指導、援助、サービス」という部分が取り除かれたことで、内容がより抽象的になり、対象範囲が広くなっております。
以前までは源泉税の課税対象とならなかったサービスが、今回の変更により課税対象として認識される可能性があります。
■源泉徴収の手続
申告書の提出及び源泉徴収税の納付は、支払日または未払い計上日のいずれか早い方の日から一ヶ月以内に支払いを行います。所定フォームは、内国歳入庁のHPから入手が可能です。
■源泉徴収に係る罰則規定
源泉徴収の支払に関して、遅延や未払が生じた場合、以下のようなペナルティが科されます。
<未払いのまま出国した場合>
罰金税額は、200RM〜2,000RMの間か6ヶ月の禁固刑。もしくはその両方が罰則として与えられます。
<未払及び遅延に対する罰則>
遅延に対する罰則は以下の表の通りです。
E-invoice制度
E-Invoice制度の概要
E-Invoice(電子インボイス)制度とは、請求書や領収書などの取引証憑を電子データとして作成し、税務当局のシステムを通じて認証・管理する仕組みを指します。
マレーシアでは、税務当局である内国歳入庁(LHDN:Inland Revenue Board of Malaysia)が導入を進めており、企業間取引(B2B)だけでなく、企業と消費者の取引(B2C)にも適用されます。
従来の紙やPDFベースの請求書とは異なり、E-Invoiceでは以下のプロセスが必要となります。
- 企業が請求書データを作成する
- データをLHDNのシステムへ送信する
- LHDNが内容を検証する
- 問題がなければ認証(Validation)される
- 認証されたインボイスが正式な取引証憑となる
税務当局がリアルタイムに近い形で取引データを把握できる仕組みとなっています。
この制度の導入目的は主に以下の通りです。
- 税務コンプライアンスの強化
- 脱税や取引の過少申告の防止
- 企業のデジタル化促進
- 税務手続きの効率化
E-Invoice対象企業
マレーシアでは、E-Invoice制度は段階的に導入されています。対象企業は年間売上高(Revenue)に基づいて決定されます。
主な導入スケジュールは以下の通りです。
【E-Invoice 段階導入スケジュール(2026年6月現在)】
(出所:LHDNをもとにTCG作成(2026年6月時点))
- 年間売上高1億リンギ超の企業
2024年8月1日より導入
②年間売上高2,500万リンギ超〜1億リンギ以下の企業
2025年1月1日より導入
③年間売上高500万リンギ超〜2,500万リンギ以下の企業
2025年7月1日より導入
④年間売上高100万リンギ超〜500万リンギ以下の企業
2026年1月1日より導入
(※猶予期間:2026年12月31日まで(2025年12月に延長決定))
年間売上高100万リンギット以下の企業
現在の制度では、年間売上高(TurnoverまたはRevenue)が100万リンギット未満の事業者(MSME)については、原則としてE-Invoice導入が免除されています。
この免除は以下のすべての納税者カテゴリーに適用されます。
- 個人事業主
- パートナーシップ
- 会社
- 協同組合
つまり、事業形態に関係なく、年間売上高が100万リンギット未満であれば原則としてE-Invoiceの導入義務はありません。
免除の例外
ただし、年間売上高が100万リンギット未満であっても、以下のいずれかに該当する場合は免除対象とはならず、E-Invoiceの導入が必要となります。
① 非個人株主を有する企業
企業の株主に法人などの非個人株主が存在し、その企業の年間売上高が100万リンギット以上である場合は免除対象とはなりません。
② 売上高100万リンギット以上の会社の子会社
年間売上高が100万リンギット以上の親会社の子会社である場合、たとえ子会社自身の売上高が100万リンギット未満であっても、E-Invoiceの対象となります。
③ 関連会社またはジョイントベンチャーが存在する場合
年間売上高が100万リンギット以上の関連会社またはジョイントベンチャーが存在する場合も免除の対象外となります。
E-Invoiceの発行方法
E-Invoiceの発行方法には主に2つの方法があります。
- MyInvoisポータルを利用する方法
MyInvoisポータルとは、LHDNが提供する無料のオンラインシステムです。
企業はこのポータルにログインし、手入力またはExcelアップロードによってインボイスを作成し、LHDNへ送信することができます。
メリット
- 無料で利用できる
- システム開発が不要
- 小規模企業でも簡単に導入可能
そのため、取引量が少ない企業や中小企業に適した方法といえます。
デメリット
- 手入力が必要になる
- 取引量が多い企業では作業負担が大きい
- 会計システムとの自動連携ができない
そのため、インボイス発行数が多い企業にとっては業務効率が低下する可能性があります。
- API連携を利用する方法
API(Application Programming Interface)連携とは、企業の会計システムやERPシステムとLHDNのシステムを直接接続する方法です。
企業のシステムでインボイスを作成すると、そのデータが自動的にLHDNへ送信され、認証される仕組みです。
メリット
- インボイス発行が自動化できる
- 業務効率が高い
- 大量取引にも対応可能
- 会計システムとの統合が可能
そのため、中堅企業や大企業ではこの方法が主流となると考えられています。
デメリット
- 会計ソフトが自社開発の場合はAPI連携の際に導入コストが発生する
- 導入から動作確認に一定の時間が必要
特にERPシステムを利用している企業では、システム改修やAPI接続の準備が必要になる場合があります。
印紙税
マレーシアの印紙税(Stamp Duty)
- マレーシアの印紙税とは
マレーシアの印紙税(Stamp Duty)とは、特定の法的文書(Instrument)に対して課される税金です。
この制度はStamp Act 1949(印紙税法)に基づいて運用されており、税務当局である内国歳入庁(LHDN:Inland Revenue Board of Malaysia)が管轄しています。
印紙税は取引そのものではなく、契約書や証書などの文書に対して課税される税金である点が特徴です。
そのため、同じ取引であっても、作成する文書の内容や形式によって印紙税の金額が異なる場合があります。
また、適切に印紙税が納付されていない文書は、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 裁判所で証拠として認められない
- 政府機関で受理されない
- 追徴税およびペナルティが課される
このため、企業にとって印紙税の適切な対応は重要なコンプライアンス事項となります。
2. 印紙税の種類
マレーシアの印紙税は、大きく以下の2種類の課税方式に分類されます。
- 固定税(Fixed Duty)
- 従価税(Ad Valorem Duty)
(1) 固定税(Fixed Duty)
固定税とは、文書の内容に関係なく一定の金額が課税される方式です。
多くの場合、課税額はRM10となっています。
主な課税文書の例は以下の通りです。
- 契約書(Service Agreementなど)
- 秘密保持契約(NDA)
- 覚書(Memorandum of Understanding)
- 一般的な商取引契約
ただし、契約内容によっては固定税ではなく従価税となる場合もあるため注意が必要です。
(2) 従価税(Ad Valorem Duty)
従価税とは、取引金額や資産価値などに基づいて課税される方式です。
つまり、取引金額が大きくなるほど印紙税額も増加します。
主な課税文書は以下の通りです。
不動産関連文書
- 不動産売買契約(Sale and Purchase Agreement)
- 不動産譲渡文書(Memorandum of Transfer)
一般的な税率は以下の通りです。
- 最初のRM100,000:1%
- 次のRM400,000:2%
- RM500,000超:3%
融資関連文書
- 金銭消費貸借契約(Loan Agreement)
- 銀行融資契約
例:
銀行ローン契約
→ 融資額の0.5%
株式譲渡
- 株式譲渡契約(Share Transfer)
通常は株式価値の0.3%が課税されます。
(3)文書内容による課税区分
印紙税は、文書のタイトルではなく内容によって課税区分が判断されるという特徴があります。
例えば、同じ「契約書」であっても
- 一般サービス契約
→ 固定税 RM10 - 融資契約
→ 従価税
となる場合があります。
そのため、企業は文書作成時に課税区分を慎重に確認する必要があります。
4. 印紙税の対応期限
印紙税は、対象となる文書が作成された後、一定期間内に納付(スタンピング)を行う必要があります。
期限を過ぎた場合には、ペナルティが課されます。
印紙税の対応期限は、文書が作成された場所によって異なります。
マレーシア国内で作成された文書
マレーシア国内で作成された文書については、
文書の締結日から30日以内に印紙税の納付を行う必要があります。
マレーシア国外で作成された文書
海外で作成された文書については、
マレーシア国内に持ち込まれてから30日以内に印紙税の納付を行う必要があります。
例えば、日本で締結された契約書であっても、その契約書がマレーシアで使用される場合には印紙税の対象となる可能性があります。
遅延した場合のペナルティ
印紙税の納付が期限を過ぎた場合には、以下のようなペナルティが課される可能性があります。
- 最大でRM100または不足税額の20%のいずれか高い方
また、適切にスタンピングされていない文書は、
- 裁判所で証拠として認められない
- 政府機関で受理されない
といったリスクが生じる可能性があります。
そのため、企業においては契約締結後、速やかに印紙税の確認および納付手続きを行うことが重要です。
5 . 2026年以降の印紙税制度の変更
マレーシアでは現在、印紙税制度の近代化が進められており、従来の審査ベース制度から自己申告制度(Self-Assessment System)へ段階的に移行しています。
この制度変更の目的は以下の通りです。
- 手続きの効率化
- 税務手続きのデジタル化
- 税務コンプライアンスの強化
印紙税自己申告制度の導入スケジュール
自己申告制度は段階的に導入されています。
2024年1月
以下の文書で自己申告制度開始
- 賃貸契約(Tenancy Agreement)
- 一般契約書(Service Agreement)
2025年1月
以下の文書へ拡大
- 融資契約
- 担保契約
2026年以降
さらに対象文書を拡大し、多くの商業契約が自己申告制度の対象となる予定です。
この制度では、納税者自身が
- 課税対象文書の判断
- 税額計算
- 納付
を行う必要があります。
6. 印紙税フレームワークの概要
近年、マレーシアでは印紙税制度の見直しが進められており、税務当局による印紙税コンプライアンスの強化が進んでいます。
特に以下のような取り組みが進められています。
- 電子スタンプシステム(STAMPS)の導入
- 自己申告制度への移行
- 印紙税監査の強化
今後は、税務当局による印紙税調査(Stamp Duty Audit)が増加することが予想されています。
そのため企業においては、
- 契約書管理体制の整備
- 適切な印紙税申告
- 文書レビュー体制の構築
など、印紙税コンプライアンスの強化が重要となります。
特に、多くの契約書を取り扱う企業においては、印紙税リスクが蓄積する可能性があるため、定期的な社内レビューや専門家による確認が推奨されます。
+ .4 .国際税務に関する規定
外国税額控除
外国税額控除(FTC:Foreign Tax Credit)とは、国外源泉所得に対して、国外において納付した税額を居住地国の税額から控除することにより、国際的な所得の二重課税を調整するための方法として定められた制度です。
■租税条約に基づく外国税額控除(DTR:Double Taxation Agreement)
マレーシア居住法人は、租税条約に基づき、締結国において発生した国外源泉所得に対し課税され、締結国に納付した外国税額の控除を申請することができます。
■片務的税額控除(UTC:Unilateral Tax Credit)
マレーシア居住法人は、租税条約を締結していない国において発生した国外源泉所得に対し課税され、納付した外国税額の控除を申請することができます。
ただし、外国税額控除を申請するためには以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
・賦課年度においてマレーシア居住者であること
・国外において外国税額がすでに支払われているまたは支払われる予定になっていること
・当該所得がマレーシアにおいて課税対象となっていること
<外国税額控除の仕組み>
マレーシアでは、法人所得税法において外国税額控除が定められてはいませんが、勅令において「外国税額控除については、マレーシア国と租税条約を締結している国との条約に従って適用される」と定められており、マレーシアと租税条約を締結している国との条約に定められている「二重課税の排除」に関する規定に従って外国税額控除が認められることになります。
つまり、外国税額控除の内容は、租税条約に定められている内容により大きく左右されます。(注、勅令R.D.No.300B.E.2539により、租税条約が締結されていない国において支払った外国税であっても、外国税額控除と支払った外国税額の損金算入のいずれかの方法を適用することが認められています。)
また、日馬租税条約では、第21条第2項、第4項に外国税額控除が定められています。税額控除については、マレーシアで設立された法人が国外で支払った外国税額のうち、マレーシアで課されるべき法人所得税額が限度とされ、その他、外国税額を課税所得の算定上損金として処理していないことや、控除にあたって納税証明書を要するなどの前提のもと、行われます。その他、日本との取引で注意すべき点として、みなし外国税額控除※の適用に注意する必要があります。
※租税条約により減免された税金につき、納付したものとみなして外国税額控除が適用できる制度。
移転価格税制
■マレーシアにおける移転価格税制の概要
移転価格税制とは、当該法人とその国外関連者間で取引をする際に、独立企業間価格(ALP: Arm’s Length Price)と異なる価格で取引を行った場合、その取引が独立企業間価格で行われたものとして課税する税制のことをいい、関係会社間での取引価格を通じて、その所得を国外に移転することを防止するために定められています。
【移転価格税制の概要】
マレーシアにおいては、2003年7月に内国歳入局が移転価格ガイドラインを公表しました。これは、「法律」ではなく、「運営指針」としての性質を持つものでした。法的な強制力はありませんが、税務執行を行う歳入局が示した指針であるため、実務上、納税者はこれに沿った対応をしなければなりません。
なお、この移転価格ガイドラインは、OECDによる移転価格ガイドラインとほぼ一致しており、2009年1月1日より、所得税法第140条Aに根拠規定を設けて、施行されています。
■独立企業間価格の算定方法
移転価格税制が適用される上で所得算定の基礎となる国際間での取引価格は、ALPによるとことが定められています。ALP算定方法については、定められた以下の方法の中から、その取引内容・形態を考慮した上で最も適切な方法を選定することになります。
<独立価格比準法>
独立価格比準法(CUP法:Comparable Uncontrolled Price Method)とは、その国外関連取引とほぼ同様の条件下、非関連者間で行われた取引(第三者取引)の対価の額を、その国外関連取引のALPとする方法です。
<再販売価格基準法>
再販売価格基準法(RP法: Resale Price Method)とは第三者への再販売価格から、その取引から通常得られるであろう、利益の額を控除した金額をその国外関連取引のALPとする方法です。
<原価基準法>
原価基準法(CP法:Cost Plus Method)とは、対象となる国外間連取引によって発生した原価の額に、もう一方の法人がその取引から通常得られたであろう、利益の額を加算して算出した金額を、その国外関連取引のALPとする方法です。
<その他の方法>
ALPの算出に当たり、上記の方法を利用できない場合は。「利益分割法」
「取引単位営業利益法」などの方法を採用することもできます。
<利益分割法>
利益分割法(PS法:Profit Split Method)とは、国外関連取引によって実現し
た営業利益の合計額を、その営業利益の実現に寄与した程度により配分し
ALPを算定する方法です。
<取引単位営業利益法>
取引単位営業利益法(TNMM法:TransactionNetMarginMethod)とは、類似の独立企業と第三者との間で同様の取引において実現した営業利益率をもとに、ALPを算定する方法です。
■文書化の義務
マレーシアの税法においては、移転価格取引に際して文書化の義務が定められており、年間売上がRM2,500万超または関連者間取引がRM1,500万超の場合には、移転価格文書(Transfer Pricing Documentation)の準備・保管が法的に義務付けられています(2023年以降の課税年度より適用)。また、文書化義務違反に対しては罰則が設けられています。使用する言語は英語またはマレー語のいずれかで構いません。文書化要件の詳細については最新のガイドラインを参照することが強く推奨されます。
■マレーシアにおける移転価格調査
マレーシアにおける移転価格調査は、通常の税務調査の中で行われます。すなわち、移転価格調査という特別な調査をするわけではなく、通常の税務調査である国税担当官からのヒアリングから始まります。申告書を税務署へ提出後、税務調査官による申告書類のレビューが行われ、電話や文書により問い合わせがあります。この問い合わせの際に、的確な回答ができない場合、更生を求められ、半強制的に推計類税される事態にもなりかねません。また、追加書類を求める場合もあり、その検証をもって、さらなる書類提出等が必要になった場合は、事前に通知の上、対象企業に担当官が訪問をし、調査をします。
なお、調査対象となりうる法人の条件として、売上総利益率の変動が激しいことや赤字が続いているなどの要素が考えられます。
税務調査において移転価格の検証を行う場合、歳入局通達では、主に以下のような書類を検証するものとされています。
・グループ関係会社の組織図、各社の事業内容
・予算、事業計画、将来財務予測
・グループ関係会社との取引内容、売り上げ及び損益の状況
・各関係会社の機能、リスク
・移転価格算定方法の根拠、他の方法を採用しなかった理由
・その他、価格決定に関わる書類等
■更生・追徴によるペナルティ
税務当局から移転価格について指摘を受け、更正・追徴税額が発生した場合、増加税額に対して次頁の表のようにペナルティが与えられます。
■事前確認制度
事前確認制度(APA:AdvancePricingAgreement)とは、法人が取引価格を決定する際、国外関連取引において当該取引価格が適正であるかを歳入局に対して事前に価格設定の妥当性の確認を希望する場合にはその申請を行うことができるという制度です。日本とマレーシアの両国間において導入・活用されています。申請を行った場合には、その事前確認で示された条件等に従って、実際の取引を行わなければいけません。事前に課税当局から当該取引についての合意を得ているため、申告後に修正申告を求められるリスクを防ぐことができます。
■マレーシアにおけるPE(Permanent Establishment)課税
通常、マレーシアに恒久施設(PE)を設けて事業活動を行う場合には、マレーシアにおいて納税義務が発生することになります。言い換えれば、マレーシアにPEが存在しなければ、マレーシアで納税義務が発生しないことになります。しかし、法的にPEを有していない場合であっても、実態としてマレーシアにPEを有して所得が発生しているとみなされる場合には、マレーシア側で所得に対する課税権が発生することになります。これを「PE認定課税」といいます。
このPEの範囲については、マレーシアの国内法及び日馬租税条約第5条でおおまかな例示がされています。大きく以下の3つの型に分類できます。
・日本の会社がマレーシアでの事務所等を通じて取引を行う場合
・役務提供を通じて取引を行う場合
・代理人PEを通じて取引を行う場合
<日本の会社がマレーシアでの事務所等を通じて取引を行う場合>
これはPEの代表的なものであり、日本の会社がマレーシアに支店、営業所などの事務所を有しているような場合です。この場合、当該事務所はマレーシアにおいて登記を行い、税務番号を取得しているのでPEに該当することになります。
また、駐在員事務所の場合は、営利活動が禁止されているため所得が発生せず、法人所得税が課税されることがありませんが、実態として、営業活動を行っていると認定された場合には、PE(日本法人の支店)として課税されることがあるので、注意が必要です。
<役務提供を通じて取引を行う場合>
役務提供取引の場合は、役務提供の期間によってPEに該当するかどうかが判定されます。以下の場合はPEに該当することになります。
・建設工事などに関連する監督活動で、3ヶ月を超える期間にわたって活動する場合(建設PE)
・日本の企業がマレーシアにおいて使用人その他の職員を通じて役務提供を行う場合で、このような活動が単一の工事または複数の関連工事について12ヶ月間に合計6ヶ月を超える期間行われる場合
<代理人PEを通じて取引を行う場合>
代理人PEの定義は、以下の3点となり、これらに該当する場合にはマレーシアにPEを有するものとされます。
・マレーシア国内で、日本の企業に代わって契約を締結する権限を有し、かつこの権限を反復して行使している場合
・契約締結の権限はないが、マレーシアにおいて日本の企業に属する物品または商品在庫を反復して保有し、かつこれらの在庫を日本企業に代わって注文に応じ、または引き渡しを行っている場合
・契約締結の権限はないが、マレーシアにおいて日本の企業またはその関連会社のために反復して注文を取得している場合
代理人には個人、法人や資本関係も問わないため、日本の会社名で反復して取引を行えばPEと判断されます。しかし、特定の企業だけではなく、多数の企業に対してエージェント契約を結んでいる、代理人は独立した代理人となり、PEに該当しません。
PE認定課税のリスクは、そもそも会社側では所得発生の認識がない状況下で税務申告等を行っているため、仮にPE認定課税がマレーシアの税務当局より行われた場合には、必ず二重課税の問題が生じるという点です。このPEの範囲については大枠の指針はあるものの具体的、かつ明確には定められておらず、税務当局の判断に基づくものであるため、最悪のケースではマレーシア側でPEとして認定され課税されたにも関わらず、日本側ではPEとして認定されず、二重課税の調整ができないということも考えられため注意が必要です。
■マレーシアにおけるPE認定課税方法
マレーシアの税務当局によりPE認定が行われ、租税条約に基づきマレーシア側で課税権が発生した場合、会社側はマレーシアの税法に従って法人所得税の納付義務が発生することになります。
しかし、会社側がPEを認定しておらず、税務局から指摘を受けた場合、通常会社側は無記帳、無申告であるため、税務当局は自ら所得を査定し税額を計算する権限を有します。
マレーシアでのPEリスクを防止するため、企業側が自らPEを認定し、マレーシアで納税者登録を行い。会計記録などの整備の上、法人所得税を納付すれば問題になりません。特に親会社を含んだ商取引を行う場合、事前にPEリクを把握し対応を検討することが重要です。
この規定は、PE認定課税と呼ばれ、そのPEの定義については、各国とマレーシアが締結している租税条約において規定されています。
通常、会社側としては認識が無い状態での課税となるため、もし納税者側で申告書の提出および課税所得の算定ができない場合には、みなし課税の規定を準用し、賦課決定されることになります。
その他の国際税務
日本においては、上記の他にタックスヘイブン税制、過少資本税制などが定められていますが、マレーシアにおいて特段法令の定めはありません。全体的に、マレーシアはまだまだ国際課税の分野においては規定が少ないため、主に日本側での税務を注意する必要があります。
ただ、今後マレーシアへの諸外国からの投資が盛んになることにより、マレーシアにおける国際課税が強化されることが十分に予測されますので、注意してみていく必要があります。
■日本におけるタックスヘイブン税制
ケイマン諸島、バミューダ諸島、ルクセンブルク、キプロス、ベリーズ、シンガポールや香港などはタックス・ヘイブン(軽課税国)と呼ばれ、これらの国に利益を集約されることにより、税制面でのメリットを大きく享受することが可能です。
マレーシアへの投資において、日本から直接投資でなく、地域経営統括会社(OHQ)を通じて孫会社化して管理を行うケースも十分に考えられます。タックス・ヘイブンに統括拠点を設置することにより、各子会社から集約した利益を、最大限税制メリットを活かして留保することが可能となります。
しかし、このOHQについて、日本側において「実体のないペーパーカンパニー」として税務当局より認定された場合には、OHQで留保されている利益について、日本側の所得を合算して、日本の法人税が課税されることになります。これをタックス・ヘイブン税制と呼びます。
日本の法人税法に規定されているタックス・ヘイブン税制(外国子会社合算税制)とは、内国法人等が特定外国子会社等(軽課税国に所在する外国関係会社)を有する場合に、その特定外国子会社等が留保した利益のうち、その内国法人が保有する当該子会社株式の所有割合に対応する部分の金額を、その内国法人等の収益とみなして、日本で合算課税しようとする制度です。
つまり、日本では会計上「収益」が認識されていないにもかかわらず、税務上「益金」を認識することにより、海外留保所得について、日本において課税する税制です。
従前は、租税負担割合が20%以上であった場合には適用対象外になっていましたが、租税負担割合に関わらずその海外子会社がペーパーカンパニー、キャッシュボックス又はブラックリスト国に所在する法人である場合には、一定の場合を除き、全ての所得に対して合算課税が行われることになります。また、合算課税を行うことにより、企業の正常な海外投資事業活動が阻害されることを回避するため、租税負担割合が20%以上で下記の要件を満たす場合には適用が除外となります。
・事業基準・・・事業な用が株式又は債券保有、ノウハウ等の権利の提供、航空機等の貸付事業以外であること
・実体基準・・・事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること
・管理支配基準・所在地国において、自らが支配及び運営を行っていること。
・次のいずれかの基準を満たす場合
・非関連者基準・主たる事業が、非関連者との間で行われていること。
・所在地国基準・主たる事業を本店所在地国で行っていること。
つまり、同税制の適用を回避するためには、税務当局から指摘をされる前に、OHQにおいて現地での活動実態を整備せる必要があります。
また、今後マレーシアの法人所得税が20%を下回るような場合に、上記の経済活動基準を1つでも満たさない場合には、当該税制の対象となる可能性があることを把握しておかなければなりません。
+ .5 .マレーシアの租税条約
租税条約の概要
租税条約とは、二重課税の排除と脱税の防止などを目的として、国家間で締結される成文による国家間の合意(条約)です。租税条約については、国家間での約束事であるため、その適用にあたっては、それぞれの国が定めている国内法に優先して適用されることとなります。つまり、国内法において「課税」とされていても、租税条約において「非課税」とされている場合には、「非課税」として取り扱うことができます。
また、租税条約以外の各種の条約にも、相手国の居住者などの日本における特定の税目上の扱いを定める場合があります。
なお、マレーシアが租税条約を締結している国は以下の通りです。2025年10月現在、二重課税を回避するための租税条約を76カ国と締結・批准し、発効しています。
日マレーシア租税条約(日馬租税条約)
日馬租税条約について、一部を抜粋して主な規定について以下に記載していきます。
■PEの定義(日星租税条約5条)
日馬租税条約において、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義がなされており、以下のようなものがPEとして規定されています。
・事業を管理する事務所
・支店
・工場、作業場
・鉱山、石油または天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所(ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所は含まない)
・建設工事などに関連する監督活動で、6カ月を超える期間存在する場合(建設PE)
・代理人がマレーシア国内において日本企業に代わって契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使している場合(代理人PE)
■配当に対する課税(日馬租税条約10条)
配当に対する課税については、一方の締約国の居住者である法人から他方の締約国の居住者である法人に支払う配当に対し、課せられます。
日本法人からマレーシア法人への支払いがある場合、以下の場合により税率が決定されます。
・配当支払日に先立ち、6カ月間継続して当該配当支払法人の議決権株式の25%以上を保有する場合:5%
・上記以外の場合:15%
また、マレーシア法人から日本法人への支払いがある場合には、源泉税は非課税となります。
■利子に対する課税(日馬租税条約11条)
利子に対する課税においては、一方の締約国で生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対して、当該利子の金額の10%を上限として課せられます。ただし、支払相手が他方の締約国の政府や地方公共団体等であった場合、当該利子は非課税となる。
■使用料に対する課税(日馬租税条約12条)
使用料においては、一方の締約国で生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対し10%の税額を超えないものが賦課されます。また、使用料は以下のように定義されています。
+ .6 .参考文献
参考文献
マレーシアの内国歳入委員会
SCHEDULE ON GENERAL ISSUE AND SUBMISSION OF INCOME TAX RETURN FORMS
Getting Ready for GST – Registering for GST
