設立
設立
+ 1. 事業拠点の特徴
進出の形態
マレーシアに事業拠点を設立する場合には、マレーシア会社法に基づき、主に現地法人(株式有限責任会社、保証有限責任会社、無限責任会社)、支店、駐在員事務所の進出形態から目的に合わせて選択し、各種申請手続を行う必要があります。
さらに事業によって取得するライセンスが異なります。進出を検討する際にはビジネススキームを確認し、各進出形態の特徴を比較することで、進出形態、投資額、出資比率等を決定することになります。
【主な進出形態】 | ||
設立形態 | 税務上の区分 | 特徴 |
現地法人 (Company) | 内国法人 | ・外資100%で出資可能 ・活動によっては投資インセンティブがある ・業種により最低資本金が設定されている |
支店 (Branch Office of Foreign Company) | 居住外国法人 | ・登記が必要 ・営業活動可能 ・卸売業、小売業などは不可 |
駐在員事務所 /地域事務所 (Representative Office / Regional Office of Foreign Company) | 非居住外国法人 | ・登記不要、投資開発庁への申請が必要 ・営業活動不可能 ・情報収集、市場調査、連絡業務等が可能 |
現地法人
マレーシア会社法(Companies Act 2016)が定める現地法人の形態は以下の通りです(10条)。
会社形態 | 特徴 |
株式有限責任会社 (Company Limited by Shares) | ・株式を引き受けた金額まで株主が債務返済に責任を負う ・外国企業としては最も一般的な進出形態 |
保証有限責任会社 (Company Limited by Guarantee) | ・慈善事業等、非営利事業を行う際に利用される ・株主は通常出資しない ・引き受けた金額により株主が債務の返済に責任を負う |
無限責任会社 (Unlimited Company) | ・株主がすべての債務の返済に責任を負う |
このうち、もっとも一般的なのは株式有限責任会社であり、一般に「株式会社」といえばこの形態の現地法人を指します。
さらに、株式の取り扱いにより、法人は以下のように区分されます。
法人区分 | 特徴 |
非公開会社 (Private Company) | ・株式の譲渡が制限される ・株主の数は50人以下 ・居住取締役の数は1名以上 ・株式、社債、その他金銭預託の公募は不可 |
公開会社 (Public Company) | ・上記非公開会社以外の会社 ・居住取締役の数は2名以上 |
上場会社 (Listed Company) | ・クアラルンプール証券取引所(Bursa Malaysia)に上場している公開会社 |
なお、上記現地法人の形態中の保証有限責任会社については、公開会社としての設立のみ認められています(会社法11条)。
公開会社は同時に上場会社である場合が多くみられますが、非上場の公開会社(Unlisted Public Company
)もあります。
いずれの形態も株主が1名以上であり、非公開会社の場合はマレーシアに居住する取締役が1名以上、公開会社の場合は2名以上必要です。(196条)
■法人設立の要件
それぞれの形態の現地法人設立に必要な要件は以下の通りです。
- 株式有限責任会社
出資者との責任を引受株式の金額までと定められ、外国企業にとっては最も一般的な進出形態です。
公開会社には社名の末尾にBerhadまたはその略称Bhdという語がつけられ、非公開会社の末尾にはSendirian Berhadまたはその略称Sdn Bhdという語がつけられます(25条1項)。
なお、マレー語の「Berhad」、「Sendirian Berhad」はそれぞれ、「Corporation」、「Privately Owned Corporation」を意味します。
定款(Constitution)については作成が義務付けられていません。定款が作成されていても記載がない項目、作成されない場合はすべて会社法に従うとされています(31条)。
マレーシア国内の事業所(Registered Office)を有している必要があり、設立時に賃貸契約を結んでいないような場合は、登録用住所貸しサービスを提供している会社秘書役業務提供会社(Corporate Secretarial Service Provider)などを利用します。
居住取締役が1名以上(公開会社なら2名以上)必要であるほか、会社秘書役(Corporate Secretary)が1名以上必要になります。(235条)
会社秘書役には、一般的にマレーシア会社登記所(Companies Commission of Malaysia:CCM)にライセンス登録された、会社秘書役業務提供会社の秘書を利用します。
法人設立後、30日以内に指名を行い、通常は毎年一定の費用を支払いながら、登記事項の管理、財務報告書の提出などのコンプライアンス業務を委託することになります。
一方、当面マレーシアに人員を置けない場合または取締役権限を親会社の人間に限定したい場合など、居住取締役を確保することが難しい場合には、現地居住者もしくはEPを持つ外国人労働者に名義貸しサービスの提供を受け、名義取締役(Nominee Director)として登記することが考えられます。
この名義取締役は会社法にも明記された合法的な対応であり、マレーシアでは一般的な慣行と言えます(217条)。
- 保証有限責任会社
出資者の責任を、予め基本定款で定めた各出資者の出資限度額以内とし、その限度内で債務を返済しきれない場合には、不足額を支払保証することを定款に定めた会社をいいます。
定款への記載が根拠となるため、他の形態と異なり定款の作成は義務とされています(38条)。
事業目的が以下のいずれかに該当する場合は、保証有限責任会社を設立する必要があります:
娯楽、商工会、芸術振興会、科学振興会、宗教推進、慈善活動、年金基金、その他国や地域に資する活動(45条1項)。
公開会社に当たるため、社名の末尾には通常Berhadまたはその略称Bhdという語がつけられますが、当局に申請して許可を得れば、この部分を社名から外すことも可能とされています。(45条3項)
事業所、1名以上の会社秘書役の設置が義務付けられるほか、公開会社に当たるため、居住取締役を2名以上有する必要があります。
- 無限責任会社
出資者の責任範囲に制限がなく、清算時にはその債務をすべて負担する必要のある会社です。
この形態の会社の社名の末尾にはSendirianまたはその略称Sdnという語がつけられます。(25条1項)
すべての責任を負うため、資本金が少なくても設立可能であるなどの特色がありましたが、現在は有限責任会社の条件と差がなくなっており、ほとんど選ばれることのない形態です。
その他の進出形態
現地法人以外の進出方法としては、有限責任組合、支店、駐在員事務所/地域事務所の設立、企業買収/業務提携などの選択肢があります。
それぞれの特徴・条件は以下の通りです:
■有限責任組合
2012年、有限責任組合法(Limited Liability Partnership Act 2012)により認められた、会社と組合の中間形態です。
会社定款によらず、契約により有限の責任で事業を開始できる点で、柔軟な組織設計が可能と考えられます。株式を発行して出資者を募る性質のものではないため、小規模であることが多く、弁護士同士やIT事業者間などでグループを作る際に用いられます。
成立要件としては、2名以上の組合員(Partner)がいることに加え、現地法人での会社秘書役に相当する、コンプライアンス・オフィサー(Compliance Officer)を設けることが必要です。
コンプライアンス・オフィサーはマレーシア市民権/永住権保持者であり、かつ居住者であって初めて任命を受けることができます。
■外国企業の支店
外国法人として登記を行い、支店を設置すれば、一般に、営業活動は可能になります。
ただし、卸売、小売業については支店での進出が認められておらず、これら業種に関しては現地法人を設立する必要があります。
政府または政府関係機関との合同プロジェクトに参加する場合は、支店の設立が認められる可能性があります。一般的に支店設置に関するメリットが少ないため申請案件は少ないのが現状です。
支店の開設には、支店名の許可申請、登記書類提出、登記事務所の届出等の手続が必要となります。
■駐在員事務所/地域事務所
駐在員事務所・地域事務所は法人格を有しないため、その活動は市場調査、研究開発、無償のアフターサービスなど、非営利活動に限定されます。
さらに、マレーシア政府が駐在員事務所の設置を国に有益と考えられる業種に限定する意向であるため、駐在員事務所の設置が認められるケースは、マレーシアの奨励する製造業の進出準備、建設プロジェクトの業務連絡等で事務所が不可欠な場合に限られています。販売会社の駐在員事務所は、1998年以降、申請却下が続いています。
駐在員事務所の開設には、本社の会計報告書、申請会社の登記簿謄本、会社案内、所轄官庁の認可書等をMIDA (Malaysian Investment Development Authority) に提出して認可を取得する必要があります。
※駐在員事務所と地域事務所の税務上の違い
定義上役割の異なる駐在員事務所と地域事務所ですが、もっとも大きな違いは駐在員を置いた場合の個人所得税の扱いです。
駐在員事務所については、駐在員は原則管理者の立場に置かれ、通常の居住者として、基本的にはその収入全部が課税されます。
一方、地域事務所の駐在員は、その役割がマレーシア国内ではなく、周辺各国での活動にあるため、その個人所得税は当該駐在員がマレーシア国内に滞在していた日数で所得を案分した金額にのみ課税されることになります。
■企業買収/業務提携
上場企業、非上場企業の株式を購入することで、既存企業への出資と運営が可能になります。
要件としては、資本市場サービス法(Capital Markets and Services Act 2007)、および買収・合弁コード(Malaysian Code on Take-overs and Mergers 2010)に則っていることが挙げられますが、買収する企業のライセンスなどにより、詳細な要件は異なります。
一般的には、政策によってライセンスの新規発行が凍結されているような業種に参入したい場合に、すでに当該ライセンスを持っている現地法人を買収することが考えられます。
その際には、外資の出資割合に制限がある場合が多いので、管轄官庁への確認が必要です。
また、投資を行わない形でも、業務提携を行えば、自社のサービスや商品をマレーシアで販売したり、製品製造だけをマレーシアで行うことにより事業を拡大することが可能です。その際の
手続としては、業務提携先の法人との間で販売代理店契約や生産提携(OEM)契約書を取り交わすことになります。
自社の法的実体を持たないため、就労許可などを発行することができず、駐在員を派遣することができない点に注意が必要です。
+ 2. 事業拠点の設立
現地法人の設立手続
外国企業が法人を設立する場合は、株式有限責任会社を選択するのが一般的です。
特に、国内取引・生活費省(Ministry of Domestic Trade and Costs of Living:KPDN)が公表している「マレーシア流通取引サービスへの外国資本参入に関するガイドライン(The Guideline on Foreign Participation in the Distributive Trade Services Malaysia)」は、外国資本の流通取引業者は会社法に基づく現地法人でなければならない、と定めています。
現地法人設立は、マレーシア会社登記所(CCM:Companies Commissions of Malaysia/SSM:Suruhanjaya Syarikat Malaysia)のホームページにアクセスし、MyCoIDと呼ばれる事業登録システムを使用し、オンライン上での手続が義務付けられています。主にMyCoIDにおいてスーパーフォームと称される書式を用いて、社名の使用許可申請(ネームサーチ)、及び社名使用許可後の設立登記書の提出をします。
会社登記申請の前に確定しておくべき事項としては、以下のものがあげられます。
・会社名
・発行株式・資本金額
・取締役(Director)
・発起人(Promoter)
・定款(Constitution)の有無
※本編末尾に添付の情報入力シートにある情報で申請が可能です。
■
設立手続
◆設置フロー
1)会社秘書役の選定
マレーシアの会社は、必ず1名以上、会社秘書役を起用する必要があります。
国に登録された有資格者である必要があることから、一般的には会社秘書役業務提供会社に依頼します。
会社の登記、会社情報変更の届出などに加えて、年次報告書の届出など各種手続きを行う存在です。
以下の工程も、基本的に会社秘書役の指示に従って書類等準備を行います。
2)ネームサーチと保全申請
会社設立に際し、まずは希望する社名の候補を複数挙げて、社名の検索をマレーシア会社登記所の電子サービス、MyCoID上で行います。そこでマレーシアで運営しても問題ない社名かどうか、すでに使用している企業、社名が類似している会社がないかを調査します。手数料は50.00RMです。
マレーシア国内ですでに同一の社名を使っている会社があった場合は使用できず、また州や政府機関を連想させるようなものや王国や国王等を連想させるもの、ハイフンやドットが入った社名は使用が認められません。また会社名は50字未満である必要があります。
問題なければCCMからその旨が通知され、申請により30日間申請した名前が保全されます。
保全期間は一度につき50.00RM支払うことで30日ずつ、最大180日まで延長することができます。
参考:社名に関するガイドライン(GUIDELINES ON COMPANY NAMES):http://www.ssm.com.my/sites/default/files/companies_act_2016/guidelines_on_names.pdf
3)オンライン申請
会社登記の申請はMyCoID上で行い、
下記の書類が必要となります。
a) スーパー・フォーム(Super Form)
2016年会社法発行以前に存在していた各種フォームを統合、整理して編纂された申請用紙です。
以下の情報の記載が必要です。
・会社名
・ビジネス詳細(資本金額、事業目的など)
・公開/非公開会社の別
・登録住所
・会社秘書役、取締役、発起人の情報(氏名、国籍、ID番号、現住所)
・マレーシア居住者情報(氏名、ID番号、現住所)
うち、登録住所については、法人設立時には一般的にオフィス賃貸契約などの締結が困難なことから、会社秘書役業務提供会社の住所を借りて登録を行います。
また、すべての会社には1名以上、マレーシア居住者である取締役がいる必要があります。
実際にはほとんどのケースで設立時にマレーシア居住者がいないため、会社設立業者などに名義貸しを依頼して登記を行うことが一般的です。
b) 宣誓書(Notice of Declaration)
発起人、および取締役の全員が会社運営に資することを保証する書類です。
原則として、登記を行う会社秘書役の前で直筆の署名を行うものとされていますが、マレーシアまで来ることが困難な場合は、代わりに署名証人(Witness)となるマレーシア居住者、または国の機関としての公証人に署名を確認させる必要があります。
なお、日本の公証人を利用する場合、ハーグ条約(正式名「外国公文書の認証を不要とする条約」)締約国であればアポスティーユを利用できますが、マレーシアは非締約国であり、公証人役場、日本国外務省、在日マレーシア大使館/領事館の認証行程をすべて経る必要があります。
c) 身分証明書
会社秘書役、取締役、発起人の全員に関して、身分証明書のコピーおよび住所証明書類の提出が必要です。
マレーシア国民であれば、国民登録証明カード(NRIC: National Registration Identification Card)という身分証を、外国人であればパスポートの顔写真ページをコピーした画像を提出します。
パスポートはその顔写真ページに署名がされており、それ自体が国籍証明兼サイン証明書として認識されるため、日本でいう印鑑登録証明書として、重要な意味を持ちます。従って、一般的にはパスポートサインをマレーシアの会社関係書類、ひいては銀行など各種機関の公式サインとして一本化しておくと、手続きがスムーズになります。
また、住所証明書類は、通話料金や電気代といった各種支払明細書、免許証(表面)のコピー、クレジットカード明細など該当致します。仮に取締役がマレーシア国外にいる場合であっても上記資料は必要となります。
d) 申請料
株式有限責任会社の登記申請料は、RM1,000.00です。
MyCoID上で支払いを行いますが、秘書役会社に前払い、または立替払いを依頼して行うこともできます。
設立申請後、CCMから査問を受けることがありますが、一般的には質問に回答すれば設立が却下されることはほとんどありません。
4)会社定款
2016年会社法の施行前は、基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association)の作成が義務付けられていましたが、現在、この二つを統合した定款の作成は任意とされています。
定款を作成する場合には、その旨を臨時株主総会の特別決議(Special Resolution)で採択する必要があり、会社秘書役が作成した書類に署名して原本を提出します。
CCMは定款作成のためにモデル定款を用意しており、会社の基本情報を入力すれば、基本的な体裁を備えた定款が作成されるようになっています。
モデル定款:http://www.ssm.com.my/Pages/Legal_Framework/PDF%20Tab%202/sample_clbg_constitution.pdf
定款の登録(Lodging Constitution)は会社秘書役の役目とされており、MyCoID上でRM30.00を支払って行います。
5) 会社印章
会社印(Common Seal)は、以前設立時に作成が求められていましたが、2016年会社法により作成は任意となりました。
ただし、実際には地域のライセンス取得申請時や、他国の政府機関、国際取引の契約書などで、署名と合わせて会社印が求められることが多いため、作成が推奨されます。
マレーシア都市部では印章作成業者も多く、インターネットなどでデザインを指定し、会社名と会社登録番号を伝えれば概ね数時間で作成されます。
6) 登記完了後の義務
会社登記が完了すると、CCMから登記通知(Notification of Registration)が発行されます。
その後、以下の対応が必要となります。
a) 第一会社秘書役の選任(Appointment of First Secretary)
登記完了から30日以内に、会社秘書役を正式に選任する通知書(Notification of Appointment)を発行し、選任の日から14日以内にCCMに登記を行います。
この場合の第一会社秘書役は必ず政府登録業者(Professional User)から選ぶ必要があり、基本的には会社秘書役自身が自ら作成した書類に署名をすることになります。
b) 銀行口座開設(Bank Account Opening)
資本金の送金に先駆け、地場の銀行に口座を開設する必要があります。
商業銀行としては、CMIB銀行、MAYBANK、PUBLIC BANK、RHB銀行などのマレーシア銀行、バンコク銀行、BANK OF AMERICA、中国銀行、CITIBANK、HSBC銀行などの外国銀行があり、会社用には小切手の振出が可能な法人口座(Corporate Bank Account)を開設します。
どの銀行の口座を開設することもできますが、実際には会社を設立する地域に存在する銀行で口座開設をすることが求められ、かつ当該銀行の口座を保有している個人または会社の紹介があって初めて審査が通るという側面があるため、設立希望地域や設立業者によって選択肢は限定されます。
c) 資本金の払込み
口座開設後、資本金を払込み、銀行の発行する着金証明をもって秘書役に依頼することで、資本金の登録手続を取ります。
就労許可(EP:Employment Pass)の取得に最低でもRM500,000.00の資本金が必要である状況が続いているため、資本金の金額は確認が必要です。
d) 事業用ライセンス取得
事業内容や就労許可取得の必要の有無に従って、各省庁からのライセンスを申請・取得します。
主な例としては、事業所ライセンス(Business Premises License)、販売業者ライセンス(WRT:Wholesales, Retail and Trade License)などのライセンスに登録が必要になります。
自社の事業にどのライセンスが必要になるか、設立業者などに確認を行うことが重要です。
e) 各種登録
企業コンプライアンス順守のため、税務、労務上の各種登録を行います。
代表的なものは以下の通りです。
・売上・サービス税(SST:Sales and Services Tax):2018年9月より導入された消費税の一種
・法人所得税(Corporate Income Tax)
・従業員積立基金(EPF:Employees Provident Fund)
・従業員社会保障(SOCSO:Social Security Organization/PERKESO:Pertubuhan Keselamatan Sosial)
f) その他コンプライアンス
法人登記後は、以下のような義務があります
・登記住所(Registered Office)の変更 (実際にオフィス契約を締結した後)
・会計年度(Financial Year End)決定 (設立後18か月以内に会計報告書(Audit Report)が提出できるよう設定)
・外部監査人の選任、監査の実施 (設立後18か月以内、その後は会計年度末後6か月以内)
・CCMへの年次報告書の提出 (毎年設立日から30日以内)
なお、2016年会社法により、定款にその定めがなければ、年次株主総会(Annual General Meeting)の開催は必要ではなくなりました。
上記の「年次報告書(Annual Return)」は会計報告書とは異なり、毎年、設立日から30日以内に提出することが義務付けられています。また、内容としては以下の事項が記載されていなければなりません。
・登記住所
・事業内容
・支店を含む実際に事業が行われている住所
・株主名簿が保管されている住所(登記住所に保管されていない場合)
・財務諸表が保管されている住所(登記住所に保管されていない場合)
・株式、社債の保有形態
・負債総額
・取締役、会社秘書役、監査人の概要
・株主の名簿
・その他必要とされる事項
支店の設置手続
◆設置フロー
2016年会社法で、外国法人(Foreign Company)とは、マレーシア国外で設立された会社、またはそれに準ずる法人で、設立場所の法律に従って起訴を起こし起こされる存在をいう、とされています。
(会社法2条)。
外国法人としてマレーシア国内で事業を行うには、マレーシア会社登記所(CCM:Companies Commissions of Malaysia)で外国会社の登録(Registration of Foreign Company)を行うことになります。これが、一般に支店の設置と呼ばれる手続きになります。
支店はその名前が本店と同一である必要があり、かつ本店が行っている事業活動しか行うことができません。
また、マレーシア国内で外国法人がそのマレーシア支店に対して提供した役務に対しては、その対価の支払いに際して源泉徴収税が課せられる点にも注意が必要です。
登録の書類や申請手順は現地法人の設立方法と共通する部分が多くあります。
特徴的なのは、現地法人の場合の会社秘書役と同様、当該外国法人に代わって書類等のやり取りを行うマレーシア居住者の代理人(Agent)を最低1名選任する必要があるという点です。
選任された代理人は会社法に規定されるすべての事項について報告の義務があり、裁判所において責任がないと判断された場合を除いて、当該外国法人の会社法違反に対して全ての責任を負います。
支店登記の手続は、以下のとおりです。
1)代理人(Agent)の選定
一般的には法人設立業者から代理人を選定、契約書を締結して依頼を行います。
代理人を変更する場合、CCMに届出を行わなければなりません。
2)ネームサーチと保全申請
支店設置に際して、本店と同一名という前提においてCCMの電子サービス、MyCoID上でネームサーチを行う必要があります。そこでマレーシアで運営しても問題ない社名かどうか、すでに使用している企業、社名が類似している会社がないかを調査します。手数料は50.00RMです。
マレーシア国内ですでに同一の社名を使っている会社があった場合は使用できず、また州や政府機関を連想させるようなものや王国や国王等を連想させるもの、ハイフンやドットが入った社名は使用が認められません。また、50字以上の会社名は申請できません。
問題なければCCMからその旨が通知され、申請により30日間申請した名前が保全(Reservation)されます。
保全期間は一度につき50.00RM支払うことで30日ずつ、最大180日まで延長することができます。
3)オンライン申請
外国法人支店の登録申請はMyCoID上で行います。
下記の書類が必要となります。
a) 外国法人の登記簿謄本(日本国外ならCertificate of Incorporationなど)
b) 外国法人の会社定款
c) 外国法人の株主および取締役名簿
以上の書類は、マレー語または英語しか受け付けられないため、日本語の場合は英訳が必要です。
コラム ~文書翻訳について~ 外国法人の支店を設置する際、一つネックとなるのが本国の文書の翻訳です。 公式にマレー語または英語に翻訳された書類が必要となりますが、これには三つ方法があります。 一つは、マレーシア国内の登録翻訳業者に依頼して日本語を翻訳させることです。正式なやり方ではありますが、大変なコストになることが多いため、一般的には使われません。 二つ目は、日本で翻訳したものをマレーシアの登録翻訳業者に校閲(Proofreading)を依頼することです。日本での英訳にコストがかかっている場合は、さらに費用が掛かるということで、やはり敬遠されることが多いです。 三つ目、最も一般的な方法がが、日本で翻訳した書類を日本の公証人役場に持参し、そこで英文を公証してもらう方法です。公証人に対する費用や、それがマレーシアで受理されるように外務省、マレーシア大使館で認証を受ける必要がありますが、日本語を英訳、校閲できる人材の絶対数からしても、国内で英訳して公証および認証を受ける方が無難といえます。 |
d) 代理人選任の宣誓書および選任書
一般的には代理人自身が英文で作成し、外国法人の側が署名を行って提出します。
原則として証人が署名を認証する必要があるため、署名者がマレーシアに来ることが難しい場合、日本で公証人による認証を受けることになります。
e) 登録料
外国法人の支店登録には、本店の資本金の金額に応じた登録料がかかります。
具体的には以下の表のとおりです。
株式資本を有しない会社に関しては、一律最高額RM70,000.00の登録料かかかります。
資本金額 | 登録料 |
RM0.00 - RM1,000,000.00以下 | RM5,000.00 |
RM1,000,000.00超~RM10,000,000.00以下 | RM20,000.00 |
RM10,000,000.00超~RM50,000,000.00以下 | RM40,000.00 |
RM50,000,000.00超~RM100,000,000.00以下 | RM60,000.00 |
RM100,000,000.00超~ | RM70,000.00 |
出典:GUIDELINES FOR REGISTRATION OF FOREIGN COMPANY | |
以上の書類、金額をCCM提出すれば、おおむね1~2日で登録通知(Notice of Registration)が発行され、外国法人としての登録が完了、支店設置が可能になります。
4) 登録完了後の義務
外国法人登録後、以下の対応が必要となります。
a) 登記住所の通知
登録完了から30日以内に、事務所のオフィス契約を締結し、住所を登録します
(567条1項)。
b) 事業用ライセンス取得・各種登録
法人に準じ、事業内容に従って、各省庁からのライセンスを申請・取得、その他企業コンプライアンス上の各種登録を行います。
c) 銀行口座開設(Bank Account Opening)
支店には独自の資本金という概念はありませんが、政府機関への納税、リンギット建ての支払いなど、事業運営において、一般的に地場の銀行に口座を開設する必要があります。
口座開設の条件等は法人の場合に準じ、紹介が重要となります。
d) その他コンプライアンス
支店のコンプライアンスは現地法人と少し異なりますが、登録後は主に以下のような義務があります。
・監査の実施 (すべての支店に監査実施の義務あり)
・CCMへの年次報告書の提出 (本店財務諸表と共に、年次株主総会後2か月以内に提出)
・登記内容変更の届出 (変更後14日以内に通知を行う)
支店の会計年度(Financial Year End)は本店と同一でなければならず、CCMに提出する財務諸表は、監査を受け、公式に英訳されたものである必要があります。
駐在事務所及び地域事務所の設置手続
◆設置フロー
駐在員事務所及び地域事務所の定義は、以下のとおりです。
駐在員事務所(Representative Office)
マレーシアにおける、サービスセクターや製造セクターに関する情報収集やマレーシアの貿易促進に関する投資機会の情報を収集する目的で設立される事務所
地域事務所(Regional Office)
東南アジアやアジア・太平洋地域において、特定の活動に関する責任を持ち、当該地域の代表事務所として運営されている事務所
いずれの場合も、設置が許可される条件として、以下の二つがあげられます。
- 年間費用がRM300,000.00以上となること
- 資金はすべてマレーシア国外から賄われること
1)業者選定
駐在員事務所・地域事務所設置の手続は一般的に、設立業者に委託されます。
契約を締結した時点で、必要情報の提供が行われ、業者を通して政府当局により設置の可否の判断がなされます。
2)書類作成
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 直近2年分の会計報告書(英文、日本語の場合は公式な英訳)
- 本社の登記簿謄本(英文、日本語の場合は公式な英訳を付す)
- 会社案内、製品カタログなど。(英文)
- 他の所轄官庁からの認可書(上記銀行業など、業種に応じ必要な場合のみ)
駐在員を置く場合は、追加で下記書類も必要となります。
- 卒業証書(英文、公証・認証が必要)
- 履歴書(英文)
- パスポートのコピー(英文も必要。公証・認証が必要)
一般的には設立業者が必要書類の確認を行いますが、設置申請先であるマレーシア投資開発庁(MIDA:Malaysian Investment Development Authority)もチェックリストを公開しており、漏れがなければ自ら申請することも可能です。
MIDA公開ガイドライン:http://www.mida.gov.my/home/administrator/system_files/modules/photo/uploads/20181109094747_GD-RERO-05112018_2.pdf
MIDA公開チェックリスト:http://www.mida.gov.my/env3/uploads/Forms/Services/03072012/CL-RERO.pdf
3)書類提出・申請
駐在員事務所・地域事務所については、CCMへの登記は必要とされておらず、MIDAに対して申請を行います。
※銀行業、および観光業についてはそれぞれ、マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)、およびマレーシア観光、芸術、文化省(Ministry of Tourism, Arts and Culture Malaysia)に認可される必要があり、個別に連絡を行います。
4)認可受理
書類提出から認可取得までの所要期間は2-6か月と、業種や活動内容によって幅が見られます。
業種によって異なりますが、通常2~3年間の事務所の活動認可がおります。
5)設置認可後
設置が完了した時点で、事務所のオフィス契約、駐在員の就労許可申請、銀行口座開設など必要な申請、許可取得に進みます。詳細は法人設立、支店設立時と同様です。
認められた活動期間(一般に2~3年)が到来した時点で、駐在員事務所・地域事務所の延長の是非を検討します。
延長が可能な場合もありますが、必要性を立証できず延長を拒否されるケースも多くあります。
将来の工場建設の事前調査、その他マレーシアにとって有益と認められる活動を目的とした非営利活動に関しては、認可される傾向にあります。
駐在員事務所・地域事務所の延長認可の主要な条件としては、以下のものが挙げられます。
- 活動内容は、マレーシアにおける投資や原材料・部品調達に関する情報収集、事業企画、研究開発、関係会社間のコーディネート、および本社への報告とし、直接商取引に結びつくような営業活動を行ってはならない。
- 認可期間の駐在員の就労には、出入国管理局から正式に雇用パス(就労ビザ)を得る必要がある。
- 独立した事務所を構え、設立後14日以内に事務所の住所をMIDA宛通知する。
- 「駐在員事務所」であることを明示した看板の掲示をする。
- 毎年活動報告書をMIDAに提出する。
なお、駐在員事務所と地域事務所の違いは、所得に対する税の算出方法が違うことです。駐在員事務所の駐在員は、通常の個人所得税の算出方法が適用されますが、地域事務所の駐在員に関しては、税制上優遇され、マレーシア滞在日数に該当する課税所得についてのみ課税される算出方法が適用されます。
6)更新手続き
現地法人と異なり、駐在員事務所の設置期間は限られております。現時点(2026年8月現在)ではMIDA当局の定める駐在員事務所の設置可能期間は最高5年までとされており、2年、2年、1年という形で更新することができます。
更新のフローは以下の通りです。
- エージェント、駐在員事務所および親会社側で資料用意
- MIDA提出後、MIDA側で担当スタッフのアサイン
- MIDA側にて資料確認および駐在員事務所の評価
このとき評価される内容は以下の通りです。
- 駐在員の個人所得税の支払い有無
- 年間の支出額がRM300,000以上であるか否か
- Committee Meeting (正式名称はJPPD Meeting)の開催
- Committee Meetingにて承認取得後、Approval Letterの発行
ここで注意しなければならないのは、(4) のCommittee Meetingとなります。
Committee Meetingは必ずしも定期的に行われることがないため、本来であれば1~1.5カ月で完了する手続きも長引く可能性があります。したがって、3ヶ月以上前から資料準備を始め、3ヶ月前からは更新手続きを開始できるよう余裕を持って進める必要があります。
また、必要資料については、現地側で用意するものと、本社側で用意する資料がございます。
【日本側で用意する資料】
- 親会社の登記簿(英訳) ※認証公証の必要あり
⇒「全部履歴事項証明書」と「定款」
②親会社の過去2年分の監査報告書(英訳)
⇒Balance Sheet, Income Statement, Cash flow Statementの3ページと「独立監査法人の監査報告書」
③カンパニープロファイル(英訳)
⇒会社案内、事業紹介
④現地駐在員の卒業証明書(英訳) ※認証公証の必要あり
⇒大学院、大学、もしくは専門学校といった最終学歴の卒業証明書。
⑤現地駐在員のパスポートコピー ※認証公証の必要あり
⇒表紙、裏表紙、空白のページを含む全ページをカラーコピー。
【現地側で用意する資料】
①駐在員事務所更新の申請フォーム(3部)
⇒http://www.mida.gov.my/env3/uploads/Forms/Services/02102012/RERO-2.doc
②直近1年分の活動報告書
⇒直近1年の間に、マレーシアでどのような活動を行ったかを記載した活動報告書。
- オフィスの賃貸契約書
⇒現在、使用しているオフィスの賃貸契約書。LHDN当局にてStamp Dutyを済ませる必要あり。
④ローカルスタッフのEPFの支払証明書
⇒雇用しているローカルスタッフのEPF(年金基金)の支払証明書
⑤現地駐在員のレジュメ
⇒過去の学歴、職歴を記載したレジュメ。
ここでの注意点は、【現地側で用意する資料】上の①の申請フォーム上6ページの“11. Expenditure”となります。
前回の記載させて頂きました通り、年間の支出がRM300,000以上であることに加え、
その証明として、日本側の親会社もしくは現地の監査法人といった第三者承認機関に認証印をおしてもらう必要があります。こちらは通常、現地側にて認証印を取得することが一般的です。
+ 3. 清算及び撤退
清算及び撤退
マレーシアに会社設立により進出する際には、会社の清算あるいは撤退の手続にかかる時間的、経済的コストまで計算に入れておく必要があります。会社の清算には、ネガティブな印象がありますが、実際には海外に新たに法人を設立し進出したものの、潔く撤退するケースも多く見られます。撤退の理由は、人件費や家賃が高いため今後の収益が見込めない、人が雇えない、良いパートナーが見つからないなど、さまざまです。特定の国や人種、国籍にあてはまるものではありません。事業から撤退する際には休眠会社にすることも可能ですが、維持コストがかかるので、会社清算も合わせて検討することになります。この場合、会社清算にどのくらいの時間や費用がかかるかが、重要になってきます。
会社閉鎖の手続
会社法には、以下の4つの方法が記載されています。
1)裁判所による清算(Winding Up by Court)
この方法は、債務者、債権者、所轄大臣などの「申立て(Petition)」により開始されます。会社法464条は裁判所が強制的に会社を閉鎖させる要件を規定しており、申立て原因が規定の要件のいずれかに該当する場合、裁判所は閉鎖命令を発します。債権者が申立を行う場合の最低債権金額である5万リンギット(RM50,000)以上の債務を、期限から3週間以内に弁済できない場合に、当該企業は支払不能(Unable to Pay)の状態にあるとされ、申立が認められます。
従前、最低債権金額が500リンギットであった際には、解散を意図する場合に、第三者に依頼して自社に対して負債の取立ての裁判を起こさせ、その裁判で抗弁せずに敗訴して支払不能とし、それを理由に破産手続を申請させ、会社を閉鎖させるという方法が広く用いられていました。現在はこの金額が5万リンギット(RM50,000)以上に引上げられていますが、ほかの清算手続と比較して簡易であり、費用が少なくかつ短時間で閉鎖が成立する方法だと言われています。
2)株主による任意閉鎖(Members' Voluntary Winding Up)
株主による任意閉鎖は、債務者会社自身がその定款に定める特別決議により手続を開始します(445条)。ただし、既に支払不能を理由とする裁判所による閉鎖が指示されている場合には、株主による任意閉鎖手続は開始できません。
手続は会社の特別決議のみにより開始され、裁判所への申立てを要せず、その結果、裁判所の関与は限定されます。
会社法第443条の規定により、会社が向こう12か月以内に全債務を弁済できる状況下で会社が清算を行いたい場合、会社はその特別決議をもって株主による閉鎖を宣言できます(Declaration of Solvency)。
株主総会で株主による閉鎖の特別決議がなされ、清算人(Liquidator)が指名されると、閉鎖に関する取締役会の議事録、債務不履行届、財務報告、清算人指名通知、決議通知書、公的財産管理事務所への届け出、会社登記官長への通知、国税庁長官への通知など、マレーシア関係各省庁に提出します。
清算人が提出作業をすべて終了し、最終的に閉鎖が認められるまでには、閉鎖の決定日から最低で2年を要します。費用は、会社の規模や清算人のレベルによって異なりますが、諸費用込みでRM200,000.00~RM300,000.00程度となります
3)債権者による任意閉鎖(Creditors' Voluntary Winding Up)
会社が既に支払不能の状態にあるか、または将来そうなる可能性がある場合、つまり債権者に損害を与える可能性のある場合、債務者である会社自身が招集した債権者会議において、特別決議(Resolution for Voluntary Winding Up)が採択されることにより手続が開始される閉鎖手続です(449条)。
株主総会で清算人が指名される点は閉鎖と同じですが、株主総会後、債権者集会が開かれ、債権者は株主総会と異なる清算人を指名することができます。この場合、債権者集会で指名された者が正式な清算人となります。
株主による任意閉鎖との決定的な違いは、支弁能力宣言(Declaration of Solvency)が行われないという点にありますが、この方法で債務者である会社を閉鎖させようとする債権者は、債権者が親会社または関連会社である場合を除いては、あまり想定できません。その場合でも親会社や関連会社が債権を放棄すれば、株主による閉鎖が成立するため、この方法での閉鎖はマレーシアでは行われていません。
4)登記抹消(Striking Off)
登記抹消はマレーシア会社委員会の長たる会社登記官がその権限において、登記抹消に関する官報(Gazette)での告知後、法定期間30日を経ても何人からも不服申し立て(Objection to Striking Off)がない場合に行うことができる手続きです。
従前、この方法による会社清算はほとんど行われることがありませんでしたが、マレーシアでは実質的に休眠中の会社が多く、それらを整理するために、マレーシア会社委員会(CCM)がこの方法を用いて稼働していない会社の登記抹消を奨励し始めたという歴史があります。
会社法第549条には、会社登記官自らが先手を打って登記抹消を行うように記されていますが、現実的には、会社の株主または取締役が秘書役を通じて登記抹消申請をしています。
登記抹消の条件は、事業活動が停止していること、債権・債務が一切ないこと、係争案件がないこと、従業員がいないことなどです。
株主による任意閉鎖と比べ、条件が整った会社なら、登記抹消するほうが時間的にも金銭的にも簡易です。費用は秘書役とマレーシア会社委員会への支払の合計でRM5,000.00程度です。条件が整った状態で申請されれば半年以内に、会社はCCMの会社登記簿から抹消されます。
なお、日本の上場企業が子会社であるマレーシアの現地法人を、登記抹消によって会社を清算した例はほとんどありません。なぜなら、日本の国税庁ならびに株主が登記抹消による清算という説明を受け入れない可能性があるからです。
現地法人の清算=株主による任意閉鎖手続き
1)支弁能力宣言(Declaration of solvency)
こちらは、取締役が会社のすべての事項を把握した上で、12か月以内に返済が完了することを宣言し、書類を作成します。
この際に、支払いが12か月以内で返済できるという明確な事由がない状態で宣言した場合、虚偽の宣言をしたとして、5年以内の禁固、ないしはRM3,000,000.00以下の罰金、あるいは両方が科せられます。
また、会社法第443条で規定されている通り、下記の内容を踏まえていないものは有効な宣言とみなされません。
①取締役会で作成されている
②任意清算決議から遡って、5週間以内に作成されている
③清算決議を行う株主総会招集通知日より、前にCCMに提出されている
④実行可能な時点までの、会社の予想実現価値に基づく資産、会社の負債及び清算に関する予想費用を、宣誓を行うできるだけ近い実行可能時点までのものが添付されている
2)臨時株主総会(EGM: Extraordinary General Meeting)の開催
上記宣言から、5週間以内に行わなければなりません。
臨時株主総会で議決する内容は下記の通りです。
①任意清算の承認
②清算人の任命
③清算人の報酬
④会社法第457条に定められている清算人が行使する権限の承認
また、決議の種類は清算事由により変わります。
a) 普通決議:会社の存続期間によるものや定款及び付属定款等で定められている解散事由に該当する事象が発生した場合などの特別な理由によるもの
b) 特別決議:上記以外のケース
※特別決議の決議要件は、会社法の項を参照。
決議の後、7日以内に決議書をCCMに提出し、10日以内に、決議通知を新聞広告に載せなければなりません(439条)。
3)清算人(Liquidator)の任命
清算人が任命された場合、清算人は任命されたという届出をCCMと公定管財人(Official Receiver)に提出をします
(440条)。
清算人の住所が変わった場合、辞任もしくは、罷免された場合、変更後14日以内にCCM及び公定管財人に通知することが必要です。
4)清算人の権限(Power of Liquidator)
会社法第445条では、清算決議、清算人を複数名任命することも可能であり、また、任命時に各々の権限や責任を決めることができると定められています。
清算人は会社が宣言書で記した期日内までに債権を返済できないと分かった場合、早急に債権者に説明をする会議(Creditors' Meeting)を開かなければなりません。これ以降、債権者による会社清算として手続が行われます
(447条)。
また、清算人へと権限が委譲された時点で、銀行サイナーも自動的に変更となるため、以後、各種支払い手続きが発生した場合は、清算人にて対応がされます。
5)関係者への通知
以下各関係者への通知を会社から行います。
①保険会社
清算人が保険会社へ、就任通知を送り、会社の資産全てに保険がかけられていることを確認する。
②銀行
清算人が銀行へ就任通知を送ります。また、その書類に添付する形で、清算決議書(秘書役などが認証したもの)も合わせて送ります。そして、清算会社としての銀行口座を作り、法人口座の資産を移動させます。RM200.00以上の資産が移動する場合は、可及的速やかに移動をさせ、10日以内に完了させます。また、銀行が保管している清算中の会社に関連する書類を提出してもらうよう依頼します。
③専門家
清算人が、税理士、弁護士や会計士などの専門家に対して、就任通知を送り、適切な情報を開示するように依頼します。
④債権者
債権請求を30日以内に送付するように求める広告を出すのと同時に、全債権者に広告のコピーを送ります。また、債権者から来る債権額の承認は、債権の証拠や根拠にもとづいて行います。一部のみの返済も可能です。
⑤取締役
全取締役に、取締役としての権限を停止する通知を出します。
6)清算期間中の義務
任意閉鎖が始まった後も、企業としていくつかコンプライアンスに応じる必要があります
a) タックス・クリアランス
源泉税、資産売却によるキャピタルゲインなどから発生する税に対する正式なタックス・クリアランスを内国歳入庁(IRB)に対して行います。
最終的な税額通知は、税務調査が完了してからの発行となります。
そのためには、前期末から清算完了日までの会計帳簿や財務諸表をIRBに提出しなければなりません。すなわち、清算中も記帳などは行わなければなりません。
b) 清算人への報酬支払い
清算決議で定めた清算人に対する報酬を支払います。
c) 余剰資金の処理
6か月以上未請求の配当金やその他の資産は全て公定管財人に譲渡しなければなりません。
7)最終株主総会
最終株主総会は、清算人勘定明細の説明、及び帳簿書類の破棄を承認してもらう目的で招集されます(459条)。
①開催1か月前までに1度、新聞広告で開催日時や時刻を告知します。
②最低定足数は2名。仮に満たない場合も、所定の書類を提出しなければなりません。
③清算後、5年間は帳簿の保管が義務付けられます。
④閉会後7日以内に清算人が報告書(Return)をCCM及び公定管財人に提出します。
⑤報告書が提出された3か月後に会社は清算されたとみなされます。
支店の清算
マレーシアで事業所を閉鎖または事業停止を行う際には、外国会社はその停止から7日以内にCCMに通知を行う必要があるとされています。その後、12か月で外国法人としての登録が抹消されます(578条)。
また、支店は、マレーシア国内法上、外国会社としてみなされ、手続は比較的容易です。
主要な手続としては、以下のものが挙げられます。
a) 従業員の整理・解雇
b) 事業契約の解約(賃借契約、リース契約等)
c) 営業ライセンスの返却
d) 債務返済・債権回収
e) 資産売却
f) 係争中の案件の解決
g) タックス・クリアランス
駐在員事務所の清算
駐在員事務所/地域事務所は会社法に規定されておらず、これらの事務所はマレーシアにおいて独立した法人とは見なされていません。法人形態を有するものではないため、タックス・クリアランスなどの手続を踏む必要もありません。
基本的には、MIDAが認可した期間を持って閉鎖となりますが、仮に期間中での閉鎖をする場合は、MIDAに閉鎖に関する書類を提出し、下記手続を行えば終了となります。
a) 従業員の整理・解雇
b) 事業契約の解約。例えば賃借契約、リース契約等
c) 雇用する駐在員の雇用パス取消
d) 駐在員の自動車や事務所什器等の資産の売却
書類の提出の時点から、MIDAに連絡して指示を仰ぐ流れで手続が行われます。その後、MIDAから正式な清算完了通知を受領すれば、清算が完了します。
+ 4. 出典・参考資料
依拠出典
MIDA HP
MIDA「RE/ROの定義」
CCM「会社名についての注意」
CCM「無限責任株式会社について」
会社法
CCM「会社設立手順」
MIDA「駐在員事務所申請書類一覧」
マレーシア会計士協会「清算に関するガイドライン」
MIDA「駐在員事務所調査(2012)」
PWC「マレーシアにおける投資形態別の申請手続き及び留意点」
ジェトロHP
諸江修「マレーシア進出完全ガイド」(2011年、カナリア書房)
手嶋恵美「マレーシアビジネスガイド」(2015年第二版日本貿易振興機構)
+ 5. 法人設立情報入力フォーム
マレーシア現地法人情報
1)マレーシア法人会社名
法人名 | 商号末尾 | |
候補1 | SDN BHD | |
候補2 | SDN BHD | |
候補3 | SDN BHD |
※法人の名前をご希望の順に3つご記入ください(すでに使用されている可能性もあるため)。
2)法人登記住所
登記住所 | |
※未定の場合は住所貸しサービスにて対応いたします。
3)株式資本
発行予定株式数 | 1株の金額 | 資本金額※ | |
株 | RM | RM |
※最低RM1.00から設定が可能です。
※※就労許可EPの取得にはRM500,000.00ほどの資本金が必要です。また、2026年6月1日以降、EPの最低月額給与要件が大幅に引き上げられています(カテゴリーⅠ:RM20,000以上、カテゴリーⅡ:RM10,000〜19,999、カテゴリーⅢ:RM5,000〜9,999)。申請にあたっては最新要件の確認が必要です。
4)株主・発起人
番号 | 株主名(英文) | 生年月日 | 現住所/登記住所 |
1 | |||
2 | |||
3 |
※株主には法人もなることが可能です。
番号 | パスポート/法人登記番号 | 現国籍/設立国 | 滞在国※ | サイナー権限※※ | 引受株式 | 保有率 |
1 | 株 | % | ||||
2 | 株 | % | ||||
3 | 株 | % |
※滞在国には自然人の場合のみ、過去5年間の滞在先を記載します。
※※自然人の場合のみ、サイナー権限を付与するか記載します。
5)取締役
番号 | 取締役名(英文) | 生年月日 | 現住所/登記住所 |
1 | |||
2 | |||
3 |
※自然人のみ
番号 | ID/パスポート | 現国籍 | 過去5年の居住住所 |
1 | |||
2 | |||
3 |
※現地居住者が最低一人、設立時の取締役として登録される必要があります。
6)事業目的
1 | |
2 | |
3 |
※英語でご記入ください。
7)会社秘書役
会社秘書役氏名 | NRIC/パスポート番号 | 現国籍 | 生年月日 |
現住所 | |||
※ご指定の会社秘書役がない場合はご紹介いたします。
8)監査人
監査役/法人名 | 住所・電話番号 |
※ご指定の監査役・法人等がない場合はご紹介いたします。
【マレーシア】現地法人設立スケジュール | |||
(設立・各種申請スケジュール) |
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No. | 行程 | 備考 | 所要時間 |
現地法人設立 | |||
1 | 商号候補及び必要情報の決定 | 1週間 | |
2 | ネームサーチ・保全手続き | 1週間 | |
3 | 定款の作成(*任意、弊社対応) | 2週間 | |
4 | 定款の確認、署名押印(*任意、貴社対応) | 2週間 | |
5 | 登記申請 | 2週間 | |
6 | 取締役会開催(株式の割り当て、登記事務所住所の通知、取締役、経営者、会社秘書役の名簿に関する内容の確認・決議等) | 3週間 | |
7 | SSMへ各種設立書類の提出及び申請(※1) | 1日 | |
設立後 | |||
8 | 銀行口座の開設(※2) | 3週間 | |
9 | 親会社から資本金振込み→マレーシア側銀行から着金通知 | 2日 | |
10 | ビジネスライセンスの取得 | 2~3か月 | |
11 | WRTの取得(※3,4) | 3か月 | |
12 | ESD(Employment Service Division)登録(※5,6) | 3か月 | |
13 | 就労ビザ(EP)取得(※7) | 2~3か月 | |
レ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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1st Month | 2nd Month | 3rd Month | 4th Month | 5th Month | 6th Month | 7th Month | ||||||||||||||||||||||||
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※1, 会社設立完了
※2, ローカル銀行については、ビザがない限り、開設することはできません。日系銀行に関しては、親会社から直接依頼をしていただくようお願いいたします。
※3, WRTライセンス取得業種の場合。申請のためには、資本金RM100万以上である必要があります。
※4, KL市内にて事業を行う事業所は取得しなければいけません。
※5, ビジネスライセンス、WRTの取得完了後、ESDの登録が完了となります。
※6, ESDとは、ビザ申請するために、移民局へ法人の認可を受けるためのオンラインアカウントとなります。なお、2025年3月以降の新規EP申請は電子パス(ePASS)システムを通じて行われます。
※7, 当該業務は申請の代行を行うもので、ビザの取得を保証するものではありません。また、申請期間が延びるケースもございますのでご了承ください。なお、2026年6月1日以降、EPの最低給与要件が大幅に引き上げられています(カテゴリーⅡ:RM10,000以上)。申請前に最新要件をご確認ください。
