税務
+ .1 .バングラデシュにおける税務の概要
バングラデシュにおける税務の概要
■ バングラデシュの租税法
バングラデシュでは、長らく1984年所得税条例(Income Tax Ordinance, 1984)が税法の根拠法として採用されてきましたが、2023年7月1日より、所得税法(Income Tax Act, 2023)が公布・施行されました。同法では、法人所得税と個人所得税ともに「所得税」として規定しています。旧法(Income Tax Ordinance, 1984)では細則や実際の申告手続等を定めている1984年所得税規則(Income Tax Rules, 1984)が存在していましたが、新法では、法律全体の細則を定めているものは存在せず、源泉税の細則のみを定めている源泉税規則(Source Tax Rules, 2023)が適用となっています。また国家歳入庁(NBR:National Board of Revenue)から不定期に発表される通達(SRO: Statutory Regulatory Order)により、所得税率の変更や、免税・減税の適用、申告期間の延長、法解釈の説明等が行われることがあり、この通達は多くの場合、通知後即日発効となります。
租税に関する規定や税率は毎年改正されており、財政法(Finance Acts/Ordinances)によって公表されます。バングラデシュの事業年度である7月1日から翌年6月末に合わせて、6月末に新年度予算案が作成され、6月末から7月初旬にこれらの改正が発表されることになります。
この章では、バングラデシュにおける税制の全体像、個別の税目ごとに解説します。
■ 税目の種類
バングラデシュの国内法においては、主に以下のような種類の税金が定められています。
主な税金の種類
税目 | 科目 | |
直接税 | 所得税 | 法人所得税(Corporate Tax) |
個人所得税(Individual Income Tax) | ||
間接税 | 付加価値税 | 付加価値税(Value Added Tax) |
関税 | 一般関税(Custom Duty) | |
調整税(Regulatory Duty) | ||
補足税(Supplementary Duty) | ||
印紙税 | ||
その他 | ||
■ 直接税と間接税
直接税
直接税とは、税金を納める義務がある納税義務者と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。 バングラデシュにおいては法人所得税、個人所得税などがこれに該当します。なお、所得税法第27条では、所得には以下のものを含むとされています。
・バングラデシュ国内で生じた給与所得
・バングラデシュ国内の恒久的施設から生じた所得
・バングラデシュ国内に所在する所有物、有形資産、権利、無形資産、その他所得の源泉から生じる所得
・バングラデシュ国内に所在する資産を譲渡したことにより生じる所得
・バングラデシュ国内で、電子手段、媒体によって提供された商品やサービスより生じた所得
・バングラデシュ国内にて使用された無形資産より生じた所得
また、上記所得はさらに以下の所得に区分されます。(所得税法第30条)
・給与所得
・有価証券利息
・不動産所得
・農業所得
・事業所得
・キャピタルゲイン
・その他の所得(配当、受取利息、ロイヤリティ、機械・設備のレンタル代金 等)
間接税
間接税とは、直接税と異なり、税金を納める人と実際に負担する人が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接ではなく他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。
バングラデシュでは、一般関税、付加価値税などがこれに該当します。
+ .2 .バングラデシュ国内税法の個別論点
個人所得税
個人所得税を計算する場合、まずその対象となる人が「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまりその対象者のバングラデシュにおける居住性を判断する必要があります。この居住性により、個人所得税が課税される収入の範囲が大きく異なってきます。それぞれ区分ごとの定義については、以下の通りとなります。
■居住者の定義
バングラデシュにおける居住者の定義は、以下の要件のいずれかを満たす者となります。(所得税法第2条45項)
(1) 課税期間(7月1日~翌年6月30日※)におけるバングラデシュ国内の累計滞在日数が183日以上となる場合
※バングラデシュにおける個人所得税の課税期間は、一般的に7月1日から翌年6月30日までとなります。ただし、ビジネス上の特別な理由があり、税務当局から許可された場合、上記期間とは異なる特別課税期間を採用することができます。
(2) 課税期間内にバングラデシュ国内に90日以上滞在し、かつ、過去4年間の滞在日数の合計が365日を超える場合
■外国人の個人所得税
外国人の場合、実務上の個人所得税の支払対象の判定は、就労許可を取得しているか否かによって行われます。就労許可を取得した後に銀行口座が開設可能となり、給与を受取ることが可能となります。就労許可を取得した日から個人所得税の支払対象と判定され、就労許可を取得した日からバングラデシュ課税期間末日である6月末までの日数を計算し、183日以下であれば非居住者、183日超の日数であれば居住者と判定されることになります。就労許可の取得日とは、就労許可の有効期限の開始日(Effective Date)を指します。就労許可の発行日(Issuance Date)は、有効期限の開始日よりも後になります。
また、居住者であるにも関わらず就労許可証を取得せずに滞在している場合には、当局(投資庁及びその他外国人就労許認可機関)の許可を得ずに外国人に就労させているとして、当該企業には罰則が課せられます。(下表:居住者要件と個人所得税の納付有無)
また、日本の所得税法では、国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上住所を有する個人を居住者と定義していることから、特定の場合は、日本とバングラデシュの双方で居住者の認定を受け、所得税が両国で二重に課税されることになります。このような場合には、両国間での租税条約に基づき、どちらの国で居住性を有するかを判断した上で、それぞれ税務上の申告・納税を行う形となります。
非居住者とされた場合には、バングラデシュ国内で発生した所得のみ、バングラデシュにおいて課税され、その他の国外所得については、居住地国において課税されることになります。
<居住者要件と個人所得税の納付有無>
居住者 | 非居住者 | |
居住者要件 | バングラデシュ国内において、 ①課税期間中の滞在日数が年に183日を超える場合、もしくは② 90日以上滞在し、且つ過去4年間の滞在日数が365日を超える場合 | 左記に該当しない場合 |
就労許可証を保有している | 累進税率によって課税 | 非居住者の税率(一律30%)によって課税 |
就労許可証を保有していない | 外国人を当局の許可なく働かせている企業には、当該年度の税額の50%もしくは50万BDTのいずれか高い方が罰則として課せられます。(所得税法第19条) | 配当や役員報酬等に対して源泉課税(それぞれの項目によっては税率は異なります。) |
■課税対象
居住者、非居住者の区分の違いにより、課税される所得の範囲は以下のように異なってきます。
<課税所得の範囲>
居住者 | 非居住者 | |
バングラデシュにおいて発生した所得(国内源泉所得※) | 課税 | 課税 |
バングラデシュ以外の国で発生した所得(国外源泉所得) | 課税 | 非課税 |
なお、これらの所得については、所得の受領地や居住者・非居住者であるかどうかは問いません。上記の国内源泉所得に該当しない所得が、国外源泉所得となります。
■課税所得
バングラデシュにおける個人所得税計算は、次の図の手順により計算します。まず、その年におけるすべての収入(総所得金額)から、課税される所得(課税所得)と、非課税とされる所得(非課税所得)に分けます。総課税所得から所得控除分を差し引いた課税所得に個人所得税率を乗じたものが、納付すべき個人所得税額になります。
【個人所得税計算の流れ】
総所得金額を計算する際には、それぞれの区分に応じ、その収入を得るために支出した金額として一定の金額を控除することができます。具体的には、以下の一覧の通りとなります。
【所得別の控除項目】
所得 | 控除項目 | 根拠法 (所得税法※) |
給与所得 | 住宅手当、通勤手当、医療手当等 | 第77条 Schedule 6 Part 1 及びPart 2 |
有価証券利息 | 銀行手数料等 | 第64条 |
不動産所得 | 損害保険費用、物件の修繕・修理費用 | 第38条 |
農業所得 | 土地賃借料、土地税等 | 第42条 |
事業所得 | 経費、減価償却費等 | 第49条及び第50条 |
キャピタルゲイン | 譲渡に係る費用 | 第60条 |
その他所得 | 所得を得るために係った経費 | 第68条 |
※Income Tax Act, 2023
各所得金額につき、控除すべき経費等を差し引いた金額を合計し、総所得金額を算出します。
■税額計算
上記で算出した総所得金額に対して、以下に示した累進税率を乗じて所得税額を算出します。なお、所得税率は、年齢、性別、居住者か非居住者かにより異なります。
【個人所得税率】
個人所得税率は以下のように設定されています。
2014年頃は、個人所得税の納税対象者は、課税所得が220,000BDTまででしたが、2015年、その範囲が250,000BDTとなり、2020年には300,000BDT、2023年には350,000BDTとなりました。バングラデシュ国民全体の所得は向上しましたが、それ以上に中間所得者以上の国民から個人所得税を徴収していくような税務スキームに変更されてきています。なお、以下の税率表は2023年7月時点のものです。2025/26年度(Finance Ordinance 2025)では、非課税枠は350,000BDTで据え置かれた一方、課税所得3,850,000BDT超の部分に最高税率30%の区分が新設されています(最新の税率・区分は毎年度の財政法で改正されるため、適用時には最新版をご確認ください)。
<65歳未満の男性>
課税所得 | 税率 |
第一区分 ~350,000 BDT (~350,000BDT以下の課税所得) | 免税 |
第二区分 100,000 BDT (350,001~450,000BDTの課税所得) | 5% |
第三区分 300,000 BDT (450,001~750,000BDTの課税所得) | 10% |
第四区分 400,000 BDT (750,001~1,150,000BDTの課税所得) | 15% |
第五区分 500,000 BDT (1,150,001~1,650,000BDTの課税所得) | 20% |
上記を超える金額 (1,650,001BDT以上の課税所得) | 25% |
<女性または65歳以上の男性>
課税所得 | 税率 |
第一区分 ~400,000 BDT (~400,000BDT以下の課税所得) | 免税 |
第二区分 100,000 BDT (400,001~500,000BDTの課税所得) | 5% |
第三区分 300,000 BDT (500,001~800,000BDTの課税所得) | 10% |
第四区分 400,000 BDT (800,001~1,200,000BDTの課税所得) | 15% |
第五区分 500,000 BDT (1,200,001~1,700,000BDTの課税所得) | 20% |
上記を超える金額 (1,700,001BDT以上の課税所得) | 25% |
非居住者については累進課税ではなく、一律30%となっています。
また、個人の最低所得税が定められています。
その他、配当所得に関しては、分離課税として上記税率とは別に、20%の所得税がかかります。
給与所得の場合、2023年6月までは住宅手当、医療手当、通勤手当に対して控除枠が設けられていましたが、2023年7月以降、所得控除枠は、給与所得の1/3もしくは450,000BDTのいずれか低い方とされています。また、個人投資*¹(Investment Allowance)と認められるものに関しても、所得税の控除枠が定められています。
*¹個人投資の項を参照
【最低所得税】
個人所得税の納税対象となる場合には、最低個人所得税額が定められています。
ダッカ自治区(Dhaka North & South City Corporation)及びチッタゴン自治区:5,000BDT
その他自治区(Other City Corporation):4,000BDT
その他地方自治体(Other Areas other than City Corporation):3,000BDT
【非課税所得】
給与所得については、非課税枠が設けられています。
(1)(2)のいずれか低い方
(1)給与所得の1/3
(2)450,000BDT
2023年6月まで、バングラデシュにおける一般的な給与構成の設定においては、まず総支給額を決定し、その後に、個人所得税が低くなるよう総支給額を基本給、住宅手当、医療手当、通勤手当、その他手当に振り分けるという方法がとられました。つまり、各種手当の設定は、実際の手当の支払額に応じるものではなく、個人所得税の計算上設定される金額という意味合いが大きいものでした。2023年7月以降は、これらの手当に対する非課税枠が廃止となり、上述の通り、給与所得全体に対して非課税枠が設定されることとなったため、目的に応じた手当(役職手当、職務手当等)を付与する意味合いも増してきました。一方、退職金や、早退・欠勤控除、残業手当、有給休暇の買取等の計算のベース金額となる基本給は、労働法上、総支給額の50%以上占める必要があるとされています。
外国人の給与については、各企業から発行される雇用契約書(Appointment Letter/Employment Agreement)に基づき就労許可に記載されることになりますが、手当の設定方法について、内務省から指摘されることが多くなってきました(2023年1月時点)。その為、外国人給与の構成は、100%基本給に設定することが多くなっています。
■個人所得税計算(例)
個人所得税計算方法は以下の通りです。
<30歳男性 ケース①>
・2022年7月~2023年6月度において、バングラデシュ居住者。
基本給(月):40,000 BDT
住宅手当(月):20,000 BDT
通勤手当(月):2,500 BDT
医療手当(月):4,000 BDT
月額総支給額:66,500BDT
<課税所得の計算>
給与手当 | 総支給額 | 換算 | 月 | 総支給額(BDT) | 非課税所得 | 課税所得(BDT) |
A | B | C | D=A*B*C | E | F=D-E | |
基本給 | 40,000 | 1 | 12 | 480,000 | - | 480,000 |
住宅手当 | 20,000 | 1 | 12 | 240,000 | - | 240,000 |
通勤手当 | 2,500 | 1 | 12 | 30,000 | - | 30,000 |
医療手当 | 4,000 | 1 | 12 | 48,000 | - | 48,000 |
(非課税枠) | 266,000(※) | (266,000) | ||||
合計 | 798,000 | 266,000 | 532,000 (G) |
※総支給額の1/3(798,000BDT÷3=266,000BDT)もしくは450,000BDTのいずれか低い方が非課税所得となります。
<所得税額計算>
BDT | 税率 | 課税額(BDT) | |
H(非課税) | 350,000 | 0% | - |
I | 100,000 | 5% | 5,000 |
J | 300,000 | 10% | 8,200 |
K | 400,000 | 15% | - |
L | 500,000 | 20% | - |
M=G-H-I-J-K-L | 0 | 25% | - |
課税額(G) | 532,000 | 年間所得税 | 13,200 |
<計算方法説明>
1. 課税所得(532,000BDT)のうち、350,000BDTは、税率0%となります。
2. 残額の182,000BDT(532,000BDT-350,000BDT)のうち、100,000BDTは5%の税
率となるため、100,000BDT×5%で5,000BDT(①)の所得税を認識します。
3. 残りの82,000BDT(182,000BDT-100,000BDT)は、次の累進税率である10%の課税
となり、残額である82,000BDT×10%=8,200BDT(②)の計算で所得税を認識します
(10%の累進税率の枠は、300,000BDTとなりますが、82,000BDT<300,000BDTとなるため、
82,000BDTに税率を乗じ所得税を算出します)。
4. ①②を足し上げ、13,200BDTが年間の所得税となります。
5. 上記事例では、J行までで所得税が計算されましたが、所得が高い場合、最高税率の25%まで計
算を続けていくことになります。
<25歳女性 ケース②>
・2022年7月~2023年6月度において、バングラデシュ(首都ダッカ)居住者。
基本給(月):30,000 BDT
住宅手当(月):18,000 BDT
通勤手当(月):3,000 BDT
医療手当(月):3,000 BDT
月額総支給額:54,000BDT
<課税所得の計算>
給与手当 | 総支給額 | 換算 | 月 | 総支給額(BDT) | 非課税所得 | 課税所得(BDT) |
A | B | C | D=A*B*C | E | F=D-E | |
基本給 | 30,000 | 1 | 12 | 360,000 | - | 360,000 |
住宅手当 | 18,000 | 1 | 12 | 216,000 | - | 216,000 |
医療手当 | 3,000 | 1 | 12 | 36,000 | - | 36,000 |
職務手当 | 3,000 | 1 | 12 | 36,000 | - | 36,000 |
(非課税枠) | 216,000(※) | (216,000) | ||||
合計 | 648,000 | 216,000 | 432,000 (G) |
※総支給額の1/3(648,000BDT÷3=216,000BDT)もしくは450,000BDTのいずれか低い方が非課税所得となります。
<所得税額計算>
BDT | 税率 | 課税額(BDT) | |
H(非課税) | 400,000 | 0% | - |
I | 100,000 | 5% | 1,600 |
J | 300,000 | 10% | - |
K | 400,000 | 15% | - |
L | 500,000 | 20% | - |
M=G-H-I-J-K-L | 0 | 25% | - |
課税額(G) | 432,000 | 年間所得税 | 5,000* |
*最低所得税額(ダッカ)の適用を受け、5,000BDTが所得税額とあります。
■個人投資(Investment Allowance)
以下の条件で個人投資枠が設定され、所得税控除が認められています。
(1)課税所得額の3%
(2)個人投資の15%
(3)1,000,000BDT
上記3つのうち、いずれか低い方に基づき個人投資枠が設定され、以下の投資項目に対して投資控除が認められます。なお、以下の項目で投資がない場合は、投資控除は受けられません。
-生命保険の保険料の支払い
-積立基金(Provident Fund)の当期個人積立分
-政府関係機関債
-Deposit Pension Scheme (DPS)への積立分
-寄付金(政府公認の団体に限る)
-株式投資 等
<個人投資を加味した課税所得の計算 ケース①の場合>
※個人投資として合計年額120,000BDTを行っているケース
(個人投資内訳:生命保険の支払い8,000BDT/月(年額96,000BDT)及び積立基金2,000BDT/月(年額24,000BDT))
<課税所得の計算>
給与手当 | 総支給額 | 換算 | 月 | 総支給額(BDT) | 非課税所得 | 課税所得(BDT) |
A | B | C | D=A*B*C | E | F=D-E | |
基本給 | 40,000 | 1 | 12 | 480,000 | - | 480,000 |
住宅手当 | 20,000 | 1 | 12 | 240,000 | - | 240,000 |
通勤手当 | 2,500 | 1 | 12 | 30,000 | - | 30,000 |
役職手当 | 4,000 | 1 | 12 | 48,000 | - | 48,000 |
(非課税枠) | 266,000(※¹) | (266,000) | ||||
合計 | 798,000 | 266,000 | 532,000 (G) | |||
個人投資控枠(※²) | 15,960(H) | |||||
課税所得(G-H) | 516,040 | |||||
※¹総支給額の1/3(798,000BDT÷3=266,000BDT)もしくは450,000BDTのいずれか低い方が非課税所得となります。
※²課税所得の3%(532,000BDT×3%=15,960BDT)、個人投資の15%(120,000BDT×15%=18,000BDT)、1,000,000BDTのいずれか低い方
個人投資控除枠を、100%利用すると、上記のように課税所得額が減算されます。ただし、実際の投資額が100%に満たない場合は、その満たない分は課税所得に加算されます。また、100%以上投資額があった場合には、100%以上の分は算入されません。実務的には、年度末まで実際の個人投資額が確定していない場合が多く、毎月の個人所得税の計算には個人投資枠を100%使用したとみなして年間所得税額を計算し、年度末に未使用分を算出し、追加納付を行う方法がとられるケースが多いです。
■申告フォームへの記載事項
(1) 申告年度
(2) 納税者番号
(3) 会社名(雇用されている場合)
(4) 配偶者名及び配偶者の納税者番号
(5) 現住所及び本籍地
(6) 個人ID(National Identification Number:NID)
(7) 給与所得及びその他所得
(8) 国外所得
(9) 個人ID(National Identification Number:NID)
(10) 給与所得及びその他所得
(11) 源泉徴収税額
(12) 還付額*
(13) 免税所得額 等
*所得税法上、還付は可能とされていますが、実務では還付金を請求することは難しいです。還付額は、翌年の所得税と相殺することになります。
バングラデシュでは、近年、個人所得税の免税所得範囲や、個人投資枠、個人投資として認められる項目の改訂が毎年のように行われており、個人所得税額の計算が異なってくる事態が生じています。国家予算の策定(毎年6月)に基づき、所得税法の一部改訂が毎年行われますが(毎年7月)、その改訂事項が即日適用となります。
■課税期間
バングラデシュ税務年度である7月1日~翌年6月30日となります。
■申告・納付手続
課税期間中の所得について、その年の11月末までに所轄の税務署に申告・納税を行うことになります。なお、バングラデシュに駐在している赴任者が日本に帰国する際には、帰国する前に申告・納税を行うことになります(所得税法第193条)。
個人所得税の納付については、会社が給与より源泉徴収し、源泉徴収された翌月の2週目*までに会社が税務署に納付することになります。残業代や賞与支給もしくは欠勤・遅刻控除が発生し課税所得に増減が発生した場合は、年間課税所得を計算しなおし、月額給与源泉額を調整することとなります。
*「2週目」と分かりづらい記載の仕方になっていますが、通常、毎月15日までと解釈される場合が多いです。
法人所得税
■納税義務者
バングラデシュにおける法人所得税の納税義務者は、バングラデシュ国内の法律により設立されたすべての法人および組織(以下、「内国法人」)、および外国の法律により設立された法人および組織(以下、「外国法人」)であり、バングラデシュ国内で事業を営むものとされています。この区分により、課税される所得の範囲が大きく異なってきます。
内国法人にはバングラデシュ国内の法律により設立されたすべての法人および組織だけでなく、バングラデシュ国内で外国法人により、実質的に支配・経営されている法人、恒久的施設*も含みます。
*恒久的施設の定義(所得税法2条92項)
ビジネスや職務を一部または全て行う場所を指し、以下に挙げられる場所を含みます。
(1)管理・監督を行う場所
(2)支店
(3)代理店
(4)オフィス
(5)倉庫
(6)工場
(7)ワークショップ
(8)鉱山、油井、ガス井、採掘場、その他の天然資源の採掘場所
(9)農場、プランテーション
(10)建設現場、組立・据付場所、監督場所
(11)バングラデシュにおいてコンサルティングを含むサービスが行われる場所
(12)支社もしくは非居住者から商業的支援を受けるいかなる関連当事者
*日本バングラデシュ二国間租税条約上の恒常的施設
日バングラデシュ租税条約では恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を以下のように定義しています。
(a)事業の管理の事務所
(b)支店
(c)事務所
(d)工場
(e)作業所
(f)鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採掘場その他天然資源を採取する場所
(g)保管のための施設を他の者に提供する者に係る倉庫
また、「建築工事現場又は建設若しくは据付けの工事は、六箇月を超える期間存続する場合に限り、「恒久的施設」とする。」ともされています。
バングラデシュの所得税法と、日本バングラデシュ二国間租税条約上の恒常的施設の解釈を比較すると、バングラデシュ所得税法は曖昧な表現(管理、監督を行う場所等)を含んでおり、また建設工事が行われる現場については、六箇月のような期間指標に関する記載も存在しません。
通常、二国間租税条約が締結されている場合は国内法に優先して適用されますが、外資の投資件数のそれほど多くないバングラデシュにおいては、税務署内でも国際税務に関する知見、経験を有している担当官が少なく、国内法(バングラデシュ所得税法)を基準に判断するケースが多いです。二国間租税条約を適用させることは可能ですが、上記背景より、バングラデシュの動向や、税務署の見解については都度確認する必要があります。
■課税所得の計算方法
所得税法における課税所得とは、会計期間に営まれた事業にかかるすべての益金の額からすべての損金の額を差し引いて算定されます。課税年度は原則として12カ月とされています。その算定された課税所得に対して、法人所得課税が行われることになります。
税務上、損金算入が認められている費用は、適切かつ有効な費用または損失に限られます。つまり、所得の獲得に直接関与しない費用や、関連証憑による裏付けのない費用、または関連法令の条件を満たしていない費用は、税務上損金算入が認められません。また、2019年7月の税法の改訂で、損金不算入額はいかなる調整、相殺の対象とならず別個のものとして扱われ、損金不算入額に対して法人税率を乗じた額が追徴税額となるとされました。
収益および費用の適正性ならびに有効性の最終判断については、税務署がその決定権を有しています。またバングラデシュ税務の特色としては、会計上の収益・費用・利益と、所得税法上の益金・損金・所得が混同して扱われることが挙げられます(2023年11月時点)。税務申告は、監査済の財務諸表を添付し申告書を提出ますが、税務署の担当者によっては、会計上の損益をそのまま税務の指標とみなし、追徴課税や、損金の否認を行うこともあります。以下、所得金額の計算にあたって法人税法上で定められている主要な規定を解説していきます。
■課税期間
バングラデシュ事業年度である7月1日~翌年6月30日となります。
ただし、2016年7月より、外国資本により設立された現地法人は親会社の会計年度に揃えることができることになりました。また、2017年7月より、外国法人のバングラデシュ駐在員事務所・支店についても同様に変更が許可されています(所得税法第2条15条(f))。親会社の会計年度に揃える際は、親会社の監査済財務諸表(英語版)もしくは公証認証を行なった財務諸表を税務署に提出し、変更手続きを行う必要があります。
■欠損金の繰越について
欠損金は6年間の繰り越しが認められています。次年度以降の課税所得から繰越欠損金を控除することが可能です。
■減価償却
バングラデシュでは減価償却費として損金算入できる額は、取得価額につき、所得税法で定められた償却率を乗じて計算されます。また、その計算された額を限度額とし、損金の額に算入することができます。
①取得価額
資産の取得価額は、支出した購入価額に付随費用(関税、購入資金に係る利息、輸送費、保険料、改修費用、据付費用など)を加えた金額となります。固定資産の認識基準はバングラデシュ税法には定められておらず、国際会計基準に従うこととされています。国際会計基準による固定資産の認識基準は、一会計期間を超えて、財貨の生産又は役務の提供、他者への賃貸又は管理目的で使用されると予想される資産で、当該資産から将来的に経済的便益が流入される可能性が高いものとされています。
②所得税法上の償却方法
バングラデシュ所得税法によれば、税法上の償却方法は定率法と定められています。具体的な償却率については次の③に記載の表の償却率を乗じて計算することになります。
③償却率
減価償却資産の償却率については所得税法別紙3に記載されており、資産の区分に応じて、以下の表のとおり定められています。
【資産別 償却率一覧表】
資産の種類 | 償却率 |
建築物 | 5% |
工場 | 10% |
家具備品 | 10% |
機械設備(一般) | 10% |
船舶 | 5% |
船舶(中古 10年未満) | 10% |
船舶(中古 10年以上) | 20% |
医療器械 | 20% |
コンピューター設備 | 25% |
専門図書 | 25% |
車両運搬具(運行に係る報酬を得ない場合) | 10% |
車両運搬具(運行に係る報酬を得る場合) | 20% |
航空機 | 30% |
ガラス、プラスチック、コンクリートの製造に用いる金型 | 30% |
鉱油採掘に係る地下設備 | 100% |
鉱油採掘に係る地上設備(ボイラー・ドリル等) | 25% |
インフラ設備 橋 道路 橋梁 歩道 エプロン 搭乗橋 運行支援設備及びその他 その他インフラ構造物 | 2% 2% 2% 2.5% 2.5% 10% 5% 10% |
※農業に係る設備に関しては別途規定あり。
※工場、機械設備については、初年度25%の償却率が適用可能です。
※監査法人や税務署出先機関(Deputy Commissioner of Tax)によっては、上図償却率を上限に減価償却率を決定することができるとアドバイスしているケースがありますが、税務申告時には上図の償却率に準じ減価償却費を算出することになります(償却率を引き下げることはできません)。
※固定資産購入年は、月割で減価償却費を算定せず、上図記載の減価償却率を取得価格に乗じ、100%減価償却費を計上するケースが大半です。
■初期減価償却
2002年6月30日以降、建設された建物及び据付けられた機械設備については、以下の減価償却率を適用することが可能となります。
項目 | 償却率 |
建物の場合 | 取得価額の10% |
機械及び工場の場合(船舶及び自動車以外) | 取得価額の25% |
■無形資産の減価償却
無形固定資産(特許権、商標権等)については、その取得のために支出した金額を耐用年数で除して計算します。使用期間が1年未満の場合は、日割りで計算します。
例:商標権は10年と定められている為、取得額を10年で定額償却します。
(所得税法第3スケジュール 2部2項)
■ソフトウェアの減価償却
以下の償却率に基づき、定額法での減価償却が可能です。
-バングラデシュで開発されたソフトウェア:20%
-バングラデシュ国外で開発されたソフトウェア:20%
(所得税法第3スケジュール2部4項)
■創立費及び開業費の減価償却
創立費及び開業費の減価償却方法は、20%の定額法(5年償却)となります。
(所得税法第3スケジュール2部2項)
■寄附金
寄附金については、原則として損金の額に算入されませんが、政府に認可された慈善団体・教育機関などに対する寄附金については、損金の額に算入することができます。また従業員に対する給与の支払いを遅延なく定期的に行っている必要がある等、バングラデシュ労働法に定められる規定に準じていることも寄附金の損金算入の条件として挙げられています。
また、この損金算入には上限が設けられています。この限度額は、1.2億BDT、売上高の20%、もしくは実際の寄付金額いずれか低い方を基準額とし、その基準額に10%を乗じ、損金算入額を算出します。
■貸倒損失と引当金
貸倒損失を損金に算入するためには、下記4つの要件をすべて満たす必要があります。
・貸倒金額が債権額から消去されていること
・合理的に回収不能と結論付けられること
・合理的な手続により回収を試みたこと
・その貸倒金額が、前年度の所得に含まれていること
つまり、貸倒引当金として計上しているだけでは損金の額に算入することはできず、実際に貸倒が起こり、4つの要件を満たす場合にのみ、損金の額に算入できることになります。
■研究開発費
将来の収益獲得目的で支出した研究開発費は、
10%の定額法にて減価償却することが可能です。
(所得税法第3スケジュール2部3項)
なお、研究開発とは所得税法2条33項に定義される以下のような費用を指します。
-今までに生じなかった構造的・技術的リスクに関する費用
-科学技術に関する研究費用
-営業活動・生産技術・原材料・製品・生産機械・生産プロセスを高めるための研究費用
一方、以下のような費用は、研究開発費には含まないものとされています。
品質管理費用、ルーティンで発生するテスト・データ収集費用、社会科学目的のための研究費用、金融商品の研究開発費、マーケットリサーチ・宣伝広告費、商標開発費
■修繕費
収益獲得目的で使用している減価償却資産の修理及び改良のために支出した修繕費は、損金の額に算入することができます。
■損金不算入項目
税務上損金の額に算入されない項目は所得税法55条に定められています。
【損金不算入項目】
55条 (a) | Chapter VII(源泉控除について記載の章)に規定の支払 | 支払時に源泉控除が定められているもの(Chapter VIIの記載項目)について、源泉控除が行われず支払いが行われた場合。 ※バングラデシュではほぼ全ての取引に、源泉税が発生します。源泉控除が行われた会社にとっては、源泉分は前払法人税と認識されます。 |
(b) | パートナーに対する支払い | パートナーに対して行われた給与、コミッション、利息の支払いに関しては損金不算入となります。 |
(c) | 手数料等 | 取締役に支払われたコミッションやディカウント費用。 |
(d) | 臨時手当収入*1 | 年間100万BDTタカを超える基本給、残業代、祭日賞与等以外の雇用主から従業員へ行われた手当やその他支払い。 |
(e) | 技術支援費*2 | 利益の10%を超える技術費用の支払いに関しては損金不算入となります。 |
(f) | 本店やグループ企業へ親会社の費用支払い | 所得の10%を超えるバングラデシュ会社法で登記されていない非居住である本店やグループ企業への支払い。 |
(g) | 海外旅費 | 売上の0.5%を超える海外旅行に係る費用に関しては損金不算入となります。 |
(h) | 交際費等 | 交際費を加味しない利益の以下の料率まで交際費が損金算入可能です。その上限を超える交際費は損金不算入となります。 利益の1,000,000BDTまで・・・4% 利益の1,000,000BDT以上・・・2% (例)税引き前利益=2,500,000BDTの場合 1,000,000BDT*4%=40,000BDT・・・① 1,500,000BDT(2,500,000BDT-1,000,000BDT) *2%=30,000BDT・・・② ①+②=70,000BDT 損金算入限度額 |
(i) | サンプル費用 | 以下が損金算入上限額となります。 売上の0BDT~5千万BDT:0.5% 売上の5千万BDT~1億BDT:0.25% 1億BDT以上:0.1% 医療・食品・美容業界については、別途規定されています。 |
(j) | 宣伝広告費 | 損金算入上限は、売上の0.5%となります。 |
(k) | 給与 | 銀行送金以外の方法で支払われた額は損金不算入となります。 |
(l) | 賃料 | 家賃、車レンタル、建機レンタル等が銀行送金以外の方法で支払われた場合は、その額が損金不算入となります。 |
(m) | 原材料の購入 | 銀行送金以外の方法で支払われる50万BDT以上の原材料の購入に対しては、損金不算入となります。 |
(n) | その他支払い | (k)(l)(d)を除く支払いに対しては、50,000BDTを超える支払いに関して銀行送金以外で行われた場合は、損金不算入となります。 |
(o) | 証憑書類なしの支払い | 証憑の提示を要求された場合で、提出ができなかった場合は損金不算入となります。 |
(p) | 私的費用の支出 | 私的な費用、資本的支出に対して損金不算入となります。 |
(q) | 使途不明金 | 費用の証憑不十分な費用に対しては損金不算入となります。 |
(r) | 営業活動に無関係な支出 | 営業活動に無関係な支出は損金不算入となります。 |
(s) | 使用権資産 | 使用権資産の償却費は損金不算入となります。 |
(t) | 減損 | 減損処理で発生する損失は損金不算入となります。 |
(u) | 積立金 | 税務署より許可を取得していない基金への積立額 |
(v) | 企業会計原則に反する費用 | 証憑がなく、会計基準に則さない支出は損金不算入となります。 |
*1臨時手当収入
所得税法第32条2項(c)に、臨時手当(Perquisite)の定義が記載されており、以下に挙げる項目以外の名目で雇用主から従業員へ支給される手当は全て臨時手当となります。
(臨時手当とならない給与手当項目)
- 基本給(Basic Salary)
- 前払給与
- 祭日賞与(Festival Bonus)
- 残業手当(Overtime Allowance)
- 有給買取額(Leave Encashment)
- 積立基金(Approved Provident Fund)
多くの企業では、賞与や残業手当、退職金の計算ベースとなる基本給を上げすぎないために、家賃手当、傷病手当、通勤費等の手当を設定しますが、これらの手当も臨時所得に含まれることになります。つまり、非課税枠を設定することで、従業員の年間臨時収入額が100万BDTを超える場合、その超過分に対して費用否認を受けることになります。
*2 技術支援費
本規定の技術支援費とは、Royalty・License Fee・Technical Service Fees・Technical Assistance Know-How Fee及びその他の類似の性質の支払いの総和とされています。
■法人税率
課税所得金額に対し、以下の法人の種類別に規定されている税率を乗じて税額を算出します。なお、以下の税率表は2023年7月時点のものです。2025/26年度(Finance Ordinance 2025)では、上場企業20%・非上場企業27.5%は維持されている一方、一人会社(OPC)22.5%の区分が設けられ、非上場の銀行・保険・金融機関は42.5%に引き上げられています(最新の税率は毎年度の財政法で改正されるため、適用時には最新版をご確認ください)。
法人の種類 | 税率 | |
上場企業(公開株が10%以上の上場企業) | 20%* (22.5%) | |
上場企業(公開株が10%未満の上場企業) | 22.5%* (25%) | |
非上場企業 | 27.5%* (30%) | |
銀行及び金融機関 -上場企業 -非上場企業 -商業銀行 | 37.5% 40% 37.5% | |
たばこ製造等 | 45% | |
携帯電話オペレーター企業 | 45% | |
職業訓練校 | 15% |
(*)この法人税率は、以下の条件のもと適用となります。以下の条件を順守できない場合は、括弧内の税率が適用となります。
1)一取引あたり50万BDT以上の全ての取引が銀行取引で行われていること
2)一取引あたり50万BDTを超えない場合でも、現金年間取引が360万BDT以下に抑えられていること
■追加納付
外国人をBIDA(Bangladesh Investment Development Authority)や関係省庁からの事前許可なく(=就労許可を持たず)雇用している企業は、当該年度における税額の50%または50万タカのいずれか高い方を追加納付しなければなりません。(所得税法19条)
■法人税の申告・納税方法
① 確定申告
全ての法人は、課税年度の末日から7カ月目の15日まで(所得税法2条23項)に、当該課税年度にかかる法人税額を所轄税務署に申告し、納税しなければなりません。また、全ての法人の確定申告書には、監査済み決算報告書を添付する必要があります。税務申告はIncome Tax Practitioner(ITP:日本で言う税理士)もしくは会計士が申告する権利を有し、2通りの申告方法の内の一つを選択し税務申告を行います。
・Self-Assessment(自己申告)
所得税法第180条に基づく申告方法となります。自己申告となるため、申告フォームを作成し、財務諸表を添付して提出します。1週間程で納税証明書(Income Tax Clearance Certificate)が発行されますが、税務署担当者が申告書提出時に申告内容の確認を行わないため、後に税務調査が行われる可能性が高いです。(所得税法第182条に基づく税務調査(Audit of Return))
・Assessment on the Basis of Return(申告書類確認後の申告)
所得税法第183条に基づく申告方法となります。源泉税及び前払源泉法人税を納めた際のChallan(納付書)控え、申告書控え、各種証憑、監査報告書等に対して質疑応答が行われます。その後に、納税証明書(Income Tax Clearance Certificate)が発行されます。Self-Assessmentと比較すると、納税証明書発行までに時間がかかりますが、税務調査(所得税法第182条)が行われるリスクが少なくなるというメリットがあります。税務申告期日を超えて申告を行う場合は、必ずAssessment on the Basis of Returnの方法で申告を行う必要があります。
■修正申告
申告後日6ヵ月以内であれば修正申告が可能です。(所得税法第175条)
■税務調査
所得税法第182条に基づき、税務署(DCT:Deputy Commissioner of Tax)は税務調査を行う権利を有しています。税務署からの税務調査通知は通常郵送で送付されます。通知には、税務署でのヒアリング日や提出書類等が記載されますが、郵送が遅延し、通知受領日が通知の記載日を過ぎている場合があります。こうした場合には、通知受領後すぐに所轄税務署に対し、猶予期間の確認を取る必要があります。基本的には、本税務調査は、Self-Assessment(自己申告)方法で申告が行われた会社が対象になりますが、Assessment on the Basis of Return(申告書類確認後の申告)の申告方法で行われた企業も例外的に対象になることがあります。
また、所得税法第213条には、Additional Commissioner of Tax(DCTの上級機関)の権利が記載されており、過去4年間に遡及して税務調査を行うことができると規定されています。本規定に基づく調査の対象企業はいかなる申告方法に関わらずランダムに選定されます。
■最低法人税(Minimum Tax)制度
課税所得は基本的には、益金、損金及びその他所得を足し引きし算出されます。損金が益金を上回れば、損失を計上することになり、益金が損金を上回れば、所得を計上することになります。基本的には、法人税は所得に法人税率を乗じ計算されることになりますが、バングラデシュにおいては最低法人税制度が存在し、営業所得損益に関わらず、最低限納付すべき法人税が定められています。以下、①②のうちいずれか高い方が最低法人税となります。(所得税法第163条6項)
- 前払法人税(Advance Income Tax)の納付額 ※サービス業等一部業種を除く
- 年間受取額の0.6%
概ねすべての業種は前払法人税の納付対象とされているため、所得損益に関わらず必ず前払法人税を納付することになります。前払法人税は、所得ではなく収益毎に発生するため、年度末の最終損益確定前に、納付を行うことになります。
最終法人税の確定方法は、所得に法人税率(2023年7月時点、非公開会社の場合は27.5%)を乗じて算出された額と、前払法人税の納付累計額、いずれか高い方となります。サービス業等のある一部の業種はこの最低法人税制度の適用外となり、所得に対し法人税率を乗じた額が法人税となります。一方で、収益毎に前払法人税を納付していることには変わりはないため、前払法人税納付額が法人税額を上回る場合が大半です。この場合は、制度上還付は行われておらず、資産として翌期以降に繰り越されていきます。この場合、前払法人税の繰り越しに期限はありません。翌期以降、法人税額が前払法人税納付額を上回った場合、繰越された前払法人税で相殺することが可能です。
※次項の「源泉徴収制度」にて、前払法人税について、詳しくご紹介します。
■申告フォームへの記載事項
(1) 申告年度
(2) 事業年度
(3) 納税者番号 (TIN:Taxpayer’s Identification Number)
(4) 申告方法
(5) 設立日
(6) 事業形態(公開会社、非公開会社、その他)
(7) 所轄税務署
(8) BIN(Business Identification Number)
(9) DVS(Document Verification Code)
(10) 主要事業目的
(11) 移転価格税制対象可否
(12) 所得額
(13) 所得税額
(14) 前払法人税額
(15) 還付額
(16) 免税及び減税額
(17) 財務諸表転記(貸借対照表、損益計算書)
(18) 保有銀行口座詳細 等
■その他の申告納税義務
全ての企業は、所得税法第7章に定められた源泉税を、源泉徴収後、通常翌月の2週目までに納付する必要があります(「源泉徴収制度」の項で、さらに詳しく見ていきます)。また全ての企業は、所得税法75A条に基づき、年に2回、7月~12月分を1月31日まで、1月~6月分を7月31日までに源泉税申告を行う必要があります。
※所得税コンプライアンスとは異なりますが、すべての外国企業は、四半期ごとに、取引先商業銀行を通じ中央銀行に対し、外国直接投資報告書(Foreign Direct Investment Return)を提出する必要があります。また、駐在員事務所や支店の場合にも、取引先商業銀行を通じ、四半期報告(Quarterly Return)を中央銀行及び投資庁へ提出する必要があります。本報告書については、同内容を税務署(NBR:National Board of Revenue)にも共有する必要があります。
■予定納税制度
前年度の納税額が60万BDTを超える場合は、予定納税制度に基づき、納税を行う必要があります。(所得税法第154条)
<予定納税額計算スケジュール>
第1回 | 9月15日 |
第2回 | 12月15日 |
第3回 | 3月15日 |
第4回 | 6月15日 |
※同日が休日の場合は、翌営業日となります。
<納税額>
各予定納税の最低納税額は、前年度納税額の4分の1とされています。ただし、当期の利益が前年利益より下がると予想される場合は、その計算資料を税務署に提出した上で、その予想される利益額に基づいて予定納税を行うことができます。なお、この予定納税額は前払法人税の支払分が控除されるため、前払法人税の積立額が、予定納税額を上回っていれば、追加納付を行う必要はありません。
※初年度の場合は、法人税が60万BDT以上と予想される場合は、予定納税制度の適用を受けることとなります。
■異議申し立て制度
バングラデシュでは、税務署の決定に対する見直しを請求する制度が存在し、以下の3つのステップがあります。各ステップでの意思決定に不服の場合は、次のステップへ申し立てを行うことができます。なお、申し立てを行うにあたり、申請期日、申請費用が定められています。(所得税法第286条~295条)
1.異議申し立て(Appeal to Commissioner)
45日以内に申請を行う必要があります。申請費用は200BDTとなります。150日以内に、意思決定が行われる必要があります。(所得税法第287条4項)
2.上訴(Appeal to Appellate Tribunal)
60日以内に申請を行う必要があります。申請費用は1,000BDT及び税務署より要求されている税額の10%となります。
(所得税法第291条5項)
3.上告(Reference to High Court Division)
90日以内に申請を行う必要があります。申請費用は、2のステージで1,000,000BDT以下の税額を要求された場合は税額の15%、2のステージで1,000,000BDT以上の税額を要求された場合は、税額の25%となります。(所得税法第293条1項)
源泉徴収制度
源泉徴収制度とは、対価の支払いを行う際に、その受取者が支払うべき税金を、支払いの際に徴収して代わりに国に納付するという制度です。源泉徴収した税金の納付義務が発生するのは、支店、駐在員事務所、銀行、その他金融機関を含むすべての企業となります。
バングラデシュでは多くの場面で、源泉税が発生し、TDS(Tax Deduction at Source:源泉税)やAIT(Advance Income Tax:前払法人税)と呼ばれています。呼ばれ方は異なるものの、源泉税を控除する側、源泉税が控除される側によって呼び方が異なるのみで、同じ源泉税のことを指しています。
このAITとは、バングラデシュにおける法人税の前払法人税であり、これは、通常の、利益に法人税率を乗じ法人税を確定させる方法と異なります。このAITは、取引毎(売上認識毎)に前払の法人税を認識し、納付する制度です。この前払法人税は、サービス受益者側(支払者側)がサービス提供者より前払法人税を控除(源泉)し、税務署に納付することになります。以下に、納税対象者、納税期日、各項目に対する前払法人税率を記載します。
■納付対象者
所得税法第87条から119条に規定されている取引に関わる全ての業種となります。一部例外を除く、全ての業種が’該当するため、バングラデシュにおいてビジネスを行う際は、全ての取引に対して源泉徴収制度が適用されると考慮に入れておく必要があります。
■納付期日
源泉徴収した税金については、下図の期日に従い納税を行う必要があります。納税方法は、納付書(Challan)を作成の上、Sonali Bank(政府系銀行)を通して、税務署に納税を行います。オンランライン納付も可能ですが、オンライン送金は早くても送金実行日の翌日に入金確認となるため、即日納付済の証明書が受領できません。そのため、現金や現金小切手での支払いも多く行われています。
源泉徴収時期 | 納付期日 |
7月から5月までの全ての月 | 源泉徴収月の翌月の2週目まで |
6月1日から6月20日 | 源泉徴収された日から7日目まで |
6月21日から6月30日 | 源泉徴収した翌日 |
6月の最終営業日 | 源泉徴収した当日 |
■Challan(納付書)記入事項
源泉徴収した税金については、源泉徴収者がChallanという納付書を作成し、納税を行います。Challanには、以下の項目の記載が必要となります。
・源泉徴収した会社のTIN(Tax Identification Number)
・源泉徴収額
・当該源泉税率記載の税法条項
・源泉徴収費目
2023年10月頃より、Challan(納付書)の作成方法が変更となり、NBR(税務署)のオンライン上で作成することになりました。
■源泉税申告(Withholding Tax Return)対象
以下に挙げる対象者は源泉税の申告を行う必要があります。(所得税法第177条)
(1)法人(地方機関、自治体、教育機関以外)
(2)協会
(3)私立病院・クリニック
■源泉税申告(Withholding Tax Return)期日
毎月15日までに税務署に提出を行う必要があります。15日が休日の場合、翌営業日が期日となります。なお、申告内容は前月の源泉税支払い内容となります。
【例】 1月に発生した源泉税の申告までの一般的な流れ
1)1月末~2月初旬に源泉税額を計算
2)2月15日までに源泉税を納付(支払い)
3)3月15日までに源泉税申告
■前払法人税率
・請負販売(コントラクター、サブコントラクター)、販売契約
請負契約や物品の販売の際、前払法人税の源泉税が発生します。(所得税法第89条 所得税細則3条)
取引額*¹(単位:BDT) | 税率 |
5,000,000未満 | 3% |
5,000,000~20,000,000 | 5% |
20,000,001~ | 7% |
*¹ 取引額とは以下3つのうち、いずれか高いものとなります。(所得税法第140条5項)
・契約金額
・請求書金額
・実際の支払額
上記の税率には例外もあります。以下の様な項目は取引額に応じず、以下の税率が適用となります。
項目 | 税率 |
小売業者への販売 | 5% |
製造業者へ原材料販売 | 4% |
鉄・鉄製品(MS Billets以外)・セメント製造業者 | 2% |
MS Billets製造業者 | 0.5% |
輸入販売の場合は、輸入時に通関で支払ったAITと法人税を相殺し、差額分のみ納付ようにすることが可能です。関税を構成する税金が6つ(Custom Duty・Supplementary Duty・Regulatory Duty・AIT(Advance Income Tax)・VAT(Value Added Tax)・AT(Advance Tax))ありますが、このうち、AITとの相殺が可能です。
多くのケースでは、販売時にAITが支払者側より源泉控除されてしまうため、輸入時のAITは販売時には相殺できません。年度末の法人税の計算の際に、追加納税が必要となった場合に、輸入時のAITを追加納税分と相殺することは可能です。
・ロイヤリティ
ライセンスやブランド名、特許、デザイン、ノウハウ、商標、顧客リスト等の無形固定資産の使用料(ロイヤリティ)の支払い際、前払法人税として受取側の法人税を控除する必要があります。
0~2,500,000BDTは10%、2,500,000BDT以上は12%の税率となります。(所得税法第
91条)
・特定のサービスに係る前払法人税
特定のサービスに係る前払法人税率はで以下の表のように定められています。(所得税法第89条 所得税細則4条)
SL. | サービス名 | 税率 |
1 | アドバイザリー及びコンサルティングサービス | 10% |
2 | 専門サービス、テクニカルサポート、技術支援サポート | 10% |
3 | ケータリングサービス | (請求額合計に対して)2% |
4 | 広告媒体購入サービス | (請求額合計に対して)0.65% |
5 | コミッション(Indenting Commission) | 8% |
6 | 会議・人材育成サポート | 10% |
7 | 携帯電話ネットワークオペレーター、携帯電話テクニカルサポートプロバイダー、携帯電話テクニカルサービスデリバリー | 12% |
8 | 信用格付業 | 10% |
9 | 車庫 | 8% |
10 | コンテナ港 | 8% |
11 | 運送コミッション | 8% |
12 | 船荷積卸コミッション | (請求額合計に対して)5% |
13 | 輸送サービス、配達サービス、車両レンタル、ライドシェア、修理サービス | 5% |
14 | 託送料金(Wheeling Charge) | 3% |
15 | インターネットサービス | 10% |
16 | モバイルファイナンスサービス | 10% |
17 | その他規定のないサービスかつ金融機関で提供されていないサービス | 10% |
・フォワーディング、通関業者
関税法(1969)に定めるフォワーディング、通関業者が受け取るコミッションに対しては、10%の前払法人税となります。(所得税法第122条)
・受取利息
受取利息に係る源泉税、対象毎に以下の税率が適用されます。受取利息が発生した場合、銀行より当該税率が源泉徴収されることになります。(所得税法第102条)
SL. | 対象 | 税率 |
1 | 法人 | 20% |
2 | 個人 | 10% |
3 | 教育機関・監査法人 | 10% |
4 | Provident Fund(積立基金)・年金基金 | 5% |
・旅行代理店、配送業者
旅券やモノの配送の対価で受取る所得に関しては、旅券及び配送代の0.3%の前払法人税率が適用となります。この税金には、空港税や出国手数料等は含まれません。
また、旅券や配送代以外の関連コミッション(Incentive Bonus・Performance Bonus等)を同時に受け取る場合、その関連コミッションについても課税されます。この関連コミッションが旅券・配送代に占める金額を算定し、その額に0.3%を乗じたものが関連コミッションに係る前払法人税となります。(所得税法第95条)
・会議スペース、ホテル、部屋、スペースレンタル利用サービス
会議スペース、ホテル、部屋、スペースレンタル利用サービスより受け取る収益については、すべての請求額に対して5%が前払法人税となります。支払時、サービス受益者が源泉できない場合は、サービス提供者が直接前払法人税を納付することになります。(所得税法第109条及び110条)
・賃貸サービス
会社に対しオフィススペースやその家具・備品の使用を提供し、その対価を賃貸料として受け取る場合は、5%が前払法人税となります。(所得税法第109条及び110条)
・コミッション、代理店業務
成果報酬(歩合報酬)によるコミッションの場合は10%、成果とは関係なく販売促進に対してのみに係るコミッションに対しては1.5%が前払法人税となります。(所得税法第94条)
・配当
会社に対する配当は20%、個人に対しては10%(個人でTINを取得していなかった場合は、15%)の源泉税となります。(所得税法第117条)
・広告媒体
新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等のメディアからの広告収入に対しては、5%の前払法人税が課せられます。(所得税法第92条)
・非居住者に対する前払法人税
非居住者に対する前払法人税は、下図の通りとなります。非居住者への支払いについては、基本的に国外送金となりますが、送金前に、必ず前払法人税を源泉納付する必要があります。源泉控除されていない場合は、送金を行う事ができません。また、国外送金については、税率が定められているものの、実務上送金が難しいです(投資庁(BIDA:Bangladesh Investment Development Authority)輸出加工区庁(BEPZA:Bangladesh Export Processing Zone Authority)、経済特区庁(BEZA(Bangladesh Economic Zone Authority)及び中央銀行の許可が必要となります)。
| サービス名 | 税率 |
1 | アドバイザリー及びコンサルティングサービス | 20% |
2 | 検品サービス | 20% |
3 | 専門サービス、テクニカルサポート | 20% |
4 | 内装、建築デザイン、ファッションデザイン | 20% |
5 | 評価サービス | 20% |
6 | 衛星レンタル | 20% |
7 | 法務サポート | 20% |
8 | イベント管理サポート | 20% |
9 | コミッション | 20% |
10 | ロイヤリティ | 20% |
11 | 受取利息 | 20% |
12 | 広告宣伝 | 20% |
13 | デジタルマーケティング | 15% |
14 | 空輸・海運サポート | 7.5% |
15 | 請負契約 | 7.5% |
16 | 販売契約 | 7.5% |
17 | キャピタルゲイン | 15% |
18 | 保険料 | 10% |
19 | 建機レンタル | 15% |
20 | 配当(法人) 配当(法人以外) | 20% 30% |
21 | アーティスト・歌手 | 30% |
22 | 給与報酬 | 30% |
23 | 石油探索 | 5.25% |
24 | 天然ガス・油田・石炭探索及び掘削 | 20% |
25 | 損害保険会社調査費用 | 5.25% |
26 | 石油・天然ガス関連サービス | 5.25% |
27 | 回線サービス | 10% |
28 | 宅配サービス | 15% |
29 | その他サービス | 20% |
※租税条約の適用によって、軽減税率が適用されるケースがあります。租税条約の項を参照してください。
最終法人税の確定方法は、利益に法人税率である27.5%(2023年7月時点、非公開会社の場合)を乗じて算出された額と、前払法人税の納付累計額のいずれか高い方となります。サービス業等のある一部の業種はこの適用外となり、利益に対し法人成立を乗じた額が法人税となります。しかし、売上毎に前払法人税を納付することになるため、納付額が法人税額を上回る場合もしばしば発生します。この場合は、制度上還付は行われておらず、資産として次期以降に繰り越されていきます。この場合、前払法人税の繰越に期限はありません。次期以降、法人税額が納付額を上回った場合、繰り越された前払法人税で相殺することが可能です。
■罰則規定
法人及び個人の確定申告に関する罰則規定は主に所得税法第266条~284条に規定されています。
<法人及び個人の確定申告の遅延に係るペナルティ(所得税法第266条1項)>
前年度の税額の10%もしくは1,000BDTいずれか高い方がペナルティ額となります。また1日あたり50BDTを遅延金となります。
また、ペナルティ合計の限度額も定められており、前年度の税額の50%がその上限となります。
<源泉税申告の遅延に係るペナルティ(所得税法第266条2項)>
前回の源泉税申告額の10%もしくは5,000BDTいずれか高い方がペナルティ額となります。また、遅延が1ヵ月以上継続する場合は、1ヵ月あたり、1,000BDTのペナルティが加算されます。
<源泉税の納付に係るペナルティ(所得税法第143条)>
源泉徴収に係るペナルティには、以下の様な場合があり、状況に応じてペナルティ額が設定されています。
(1)源泉税の徴収漏れ
ペナルティ額は源泉税額に対して毎月2%となります。
(2)過少の源泉徴収及び過少納付
ペナルティ額は過少に源泉徴収された額に対して毎月2%となります。
(3)源泉徴収後の未納付
ペナルティ額は未納付額に対して毎月2%となります。
なお、上記ペナルティについては24ヵ月以上は加算されないものとされています。
その他の租税
■ 富裕税 (Surcharge)
富裕税とは、総資産から総負債を差し引いた純資産に対して課税される税金のことで、純資産があるすべての個人に対して課税されることになります。そのため、個人納税者用の申告書には、資産と負債を記入する項目があり、その差額として純資産額が計算されるようになっています。
富裕税は6月30日を評価日として計算された純資産額に対し、以下の純資産額別に規定されている累進税率を乗じて税額が算出されます。
富裕税率
純資産額 | 税率 |
~40,000,000BDT | 0% |
以下の条件を満たす場合 (1) 4,000,001~100,000,000BDT (2) 8,000 sq.ft以上の広さの家を保有 (3) 複数の車両を所有 | 10% |
100,000,001~200,000,000BDT | 20% |
200,000,001BDT~500,000,000BDT | 30% |
500,000,001BDT~ | 35% |
日本バングラデシュ二国間租税条約
日本は、
バングラデシュとの二重課税防止条約(Double Taxation Avoidance Agreement: DTAA)を1992年に締結しています。
この二国間租税条約では、日本とバングラデシュでの租税の解釈や適用税率の上限を定めています。一方でバングラデシュ国内税法も同時に存在し、国内税法で定められている解釈や税率も存在します。
例として、以下項別で説明している二国間で発生するロイヤリティに係る所得税があります。バングラデシュ国内税法では、非居住者に対するロイヤリティ(バングラデシュから非居住者に支払うロイヤリティ)に係る所得税率は20%とされていますが、二国間租税条約では本税率は10%が上限と定められています。租税条約の締約国である日本は、租税条約で定められている上限税率(10%)を適用することができます。
ただし、この租税条約の適用を受けるには日本とバングラデシュ間の取引であるとの証明が必要となり、バングラデシュ所得税法は、バングラデシュ税務署より軽減税率適用の許可証を事前に取得するよう求めています。この許可証の効力は通常に1年(7月から翌年6月末まで)となっているため、毎年取得する必要があります。
なお、この許可証取得にあたって、バングラデシュ現地法人の過去の税務申告が完了しているか証明するために納税証明書の提出が求められます。また、租税条約適用を受けるために日本法人の居住証明書(Residency Certificate)の提出も求められるため、日本の税務署に居住証明書を依頼する必要があります。
■ 恒久的施設の定義(日本バングラデシュ租税条約 第5条)
日バングラデシュ租税条約の第5条において、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義が定められており、事業の管理の事務所、支店、事務所、保管のための倉庫、6カ月を超える期間存在する場所(建設PE)などがPEとして規定されています。
ただし、バングラデシュにおいて日本企業に属する物品または商品の保管または展示のためにのみ施設を使用する場合、物品等を展示のためにのみ保有し、または他の企業による加工のためにのみ保有する場合や、日本企業から独立した地位を有する仲立人、問屋などの代理人を通じてバングラデシュで事業を行っている場合、支配関係という事実だけでは、PEとはされない旨が租税条約に記載されています。
バングラデシュでビジネスを行う場合には、この租税条約上のPEに該当しないよう、活動内容につき注意する必要があります。
■ 特殊関連企業(日バングラデシュ租税条約 第9条)
移転価格税制に関する規定は、財務省令で詳細が定められていますが、日バングラデシュ租税条約においても規定されています。
内容としては、一方の締約国の企業または同一の者が、他の締約国の企業経営、支配または資本に直接もしくは間接に参加している場合に、その取引条件が独立企業との間での取引条件と異なるときは、その条件が無いものとした場合に一方の締約国の企業等が本来得られたであろう利益について、一方の締約国で課税をするというもので、要約すると「関連会社間で取引を行う場合には、第三者取引条件によらなければいけない」ということが記載されています。
また、第2項に移転価格課税後の相互協議についても、両国の権限のある当局同士が合意した場合には、課税された税額について適当な調整を行うという旨が記載されています。
■ 配当(日バングラデシュ租税条約 第10条)
一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課すことができるとされています。配当を受ける法人株主が、当該事業年度終了までに6ヵ月間以上の期間を通じ議決権のある株式の少なくとも25%以上を保有する場合、その法人株主の配当に係る租税は10%を超えないものとする。それ以外のケースでは15%とする。
■ 利子(日バングラデシュ租税条約 第11条)
バングラデシュにてビジネスを行う際に、一時的な運転資金や資産・資材調達のため、親会社(株主)より借入を行うケースがあります。その親子ローンに係る利子についても、返済の際に租税を納税する対象となります。租税条約では、当該利子に係る租税は10%を超えないものとすると定められています。
■ 使用料(ロイヤルティ等)に対する課税(日バングラデシュ租税条約 第12条)
日本とバングラデシュとの間で、ノウハウなどの提供の対価として使用料(ロイヤルティ)が収受されるケースがあります。
この使用料に対して、租税条約においては「当該使用料が生じた国において課税することができる」とされています。つまり、日本からの技術提供により、バングラデシュから日本へロイヤルティが支払われる場合には、その支払の際に源泉徴収により課税されることとなります。
租税条約においては、源泉税率は使用料の額の10%を超えないものとされているため、その範囲内において支払時に源泉課税がされることとなります。
また、第7項には移転価格税制に関する記載があり、関係会社間での取引について、第三者価格を超える部分については、租税条約上の税率は適用されず、通常の税率で課税されることになります。
■ 短期滞在者に対する人的役務所得(日バングラデシュ租税条約 第15条)
租税条約において、給与収入については、実際の勤務が行われている国でのみ課税されると記載されています。つまり、給与の発生源泉である勤務が行われていない場合には、給与収入に対してその国で課税が行われることはなく、実際の勤務地において課税されることになります。
日本からバングラデシュに出張する場合、以下3つの要件を満たす場合には、支払われる報酬または給与についてバングラデシュ側で課税がされないこととなります(短期滞在者免税)。
・ 滞在日数基準
課税年度における滞在日数が183日を超えないこと
・ 給与支払地基準
報酬または給与が日本側で支払われていること
・ 給与負担基準
報酬または給与がバングラデシュ国内におけるPE等において負担されていないこと
したがって、いくら滞在日数が短期であっても、バングラデシュにおいて給与が支払われた場合や、その給与をバングラデシュ側で負担した場合には、この規定は適用されません。
例外として、国際運輸に係る報酬や、俳優、ミュージシャンその他芸能人及びスポーツ選手がバングラデシュ国内で行う個人的活動によって取得する所得に関しては、バングラデシュ側で課税されます。
■ 役員報酬にかかる課税(日バングラデシュ租税条約 第16条)
給料等に関しては、原則としてその国において勤務が行われていない場合には、税金は課税されないこととされています。つまり、日本からバングラデシュへ従業員が出向した場合、日本で勤務が行われない限り、日本側で課税問題が生じることはありません。
しかし、日本側の法人の役員がバングラデシュに居住者として駐在する場合、もし日本の会社から役員としての報酬を得ている場合には、仮に日本側で非居住者であり、かつ、国内勤務が無い場合であっても、日本側において課税がされるため注意が必要です。
また、これとは逆に、バングラデシュ法人で役員となっている者については、仮に日本の居住者であってもバングラデシュで給与が発生する場合、バングラデシュにおいて課税がされることとなります。
つまり、役員として報酬を受け取る場合には、前15条の短期滞在者免税の適用は無く、居住性などに関わらず、現地国において課税されることになります。
■ 二重課税の排除(日バングラデシュ租税条約 第23条)
バングラデシュ・日本の両国における、二国間の二重課税排除の方法について、同条項に記載がされています。それぞれが、各国の税法に基づいて計算された税額を限度に、それぞれの国において納付すべき税額から控除することを認めています。
また、日本企業がバングラデシュからの配当、使用料、利息により租税の減額又は免除が行われる場合には、その減額等がされた税額についても、バングラデシュで納付した税額とみなして、外国税額控除を行うことができます。
■ 二重課税に対する二国間協議(日バングラデシュ租税条約 第25条)
日本又はバングラデシュのいずれかの国の税法に基づき、この租税条約の規定に適合しない課税を受けた場合、居住国において、権限のある当局に対して申し立てを行うことができます。
この場合、両国の権限のある当局は、この租税条約の規定に適合しない課税を排除するため、お互いに当局同士が連絡を取り合い、相互に協議を行うことになります。
この規定が租税条約において定められていない場合、又はバングラデシュと租税条約が締結されていない国については、それぞれの国で定められている税法に基づき課税が行われる事になります。
その他の二国間租税条約
バングラデシュ政府は、外国直接投資の促進を目指し、以下の34の国と二国間租税条約(DTAA:Double Taxation Avoidance Agreement)を締結しています。
Sl. | 国名 | 発効日 | Sl. | 国名 | 発効日 |
1 | イギリス | 7/1/1978 | 18 | ベルギー | 7/1/1998 |
2 | シンガポール | 1/1/1980 | 19 | タイ | 7/1/1999 |
3 | スウェーデン | 7/1/1984 | 20 | ポーランド | 7/1/2000 |
4 | 韓国 | 7/1/1984 | 21 | フィリピン | 7/1/2004 |
5 | カナダ | 7/1/1982 | 22 | ベトナム | 7/1/2005 |
6 | パキスタン | 1/1/1980 | 23 | トルコ | 7/1/2004 |
7 | ルーマニア | 7/1/1989 | 24 | ノルウェー | 7/1/2006 |
8 | スリランカ | 7/1/1989 | 25 | インドネシア | 7/1/2007 |
9 | フランス | 7/1/1989 | 26 | アメリカ | 7/1/2007 |
10 | マレーシア | 1/1/1982 | 27 | スイス | 7/1/2008 |
11 | 日本 | 7/1/1992 | 28 | オマーン | 7/1/2009 |
12 | インド | 7/1/1993 | 29 | ミャンマー | 7/1/2012 |
13 | ドイツ | 7/1/1990 | 30 | モーリシャス | 7/1/2012 |
14 | オランダ | 7/1/1995 | 31 | サウジアラビア | 10/1/2011 |
15 | イタリア | 7/1/1980 | 32 | アラブ首長国連邦 | 7/1/2012 |
16 | デンマーク | 7/1/1997 | 33 | ベラルーシ | 7/1/2014 |
17 | 中国 | 7/1/1998 | 34 | クウェート | 2014年2月14日署名済、未発効 |
