会計
+ .1 .バングラデシュの会計制度
バングラデシュの会計制度
■ 会計制度の概要
バングラデシュの会計制度は、日本と同様に会社法や証券取引法等の法律によってその多くが規定されています。会計通貨は、基本的にバングラデシュタカ(BDT)を表示通貨とし、記帳言語はベンガル語もしくは英語にて行います。なお、現地で上場する企業等などが財務諸表を証券取引所に提出する際には、英語で記載されているものを求められることがあります。
会計期間は、12カ月以下またはそれ以上でも可能ですが、15カ月を超えてはならないとされています。親会社との連結決算を考えると12カ月にすることが通常です。
バングラデシュの会計基準は、すべての事業体に適用することになっております。従って、会社の規模及び上場の有無等を問わず、当該基準を遵守していくことになります。
バングラデシュの会計基準は、2006年7月1日より国際財務報告基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)を取り入れています。
【バングラデシュ会計制度のまとめ】
関連法 | 会社法 証券取引法等 | |
担当行政機関 | 商務省 | 基準草案作成等は、バングラデシュ勅許会計士協会が行っている |
会計通貨 | BDT(バングラデシュタカ) | |
会計に関する法律の適用対象 | 全事業体 | 上場・非上場、大企業・中小企業、個人事業を問わず、全ての事業体に適用される 上場企業の場合は証券取引所の規則にも従うことが求められる |
記帳言語 | ベンガル語 英語 | 証券取引所に提出する際は、英語での提出が求められることがある |
帳簿保存期間 | 12年 | |
会計期間 | 12カ月以下または以上でも可(但し、15カ月を超えてはならない) | 会計を開始した日から設定した会計期間に決算を行わなければならず、その後も会計期間ごとに決算を行う。なお、登記局が認める場合には、18カ月まで延長可(会社法183条4項) |
バングラデシュ会計基準の遵守 | 全事業体 | 上場・非上場、大企業・中小企業、個人事業を問わず、全ての事業体に適用される |
財務諸表の登記局への提出義務 | 取締役の署名入り財務諸表の写しを定時株主総会後30日以内に提出する | 監査済財務諸表は、株主総会へ提示後30日以内に署名入りの写しを3部提出する ただし、公開会社の子会社ではない非公開会社の損益計算書の閲覧又は謄写は関係者でない限りできない |
財務諸表様式 | バングラデシュ会計基準 バングラデシュ財務報告基準 会社法 保険法 電力法 銀行法 | 財務諸表の様式は、国際財務報告基準(IFRS)をアドプションしているため、国際的に整合性がとれたものとなっている ただし非営利会社の場合には、収支報告を含めて作成する(会社法183条1項) なお、保険会社や電力会社、銀行等の場合には、別途法律が規定されているため、当該適用される法律に従う |
■バングラデシュの会計に関する法律
バングラデシュでは、会計に関する概括的な定めは会社法に規定されています。当該会社法は、上場・非上場、大企業・中小企業、個人事業を問わず、全ての事業体に適用されます。ただし、会社法以外の法律で開示が求められている業種に限っては、例外的に、会社法以外の法律により財務諸表を作成し、別途定められている法律に従って、一定の事項を開示することが認められています。
■会計期間
バングラデシュでは、会計期間を15カ月以内の期間で任意に決定する事が出来ます。また、会社設立初年度のみ登記局の許可を得た場合には、最長18カ月まで会計期間を延長する事が出来ます(183条4項)。
またバングラデシュにおける法人の課税年度は、原則として7月から6月となりますが、企業の選択により12カ月からなる課税年度を選択することができます(1984年所得税法36条)。したがって、日本の親会社と同様の会計期間を設定することが可能となります。
■会計帳簿
会計帳簿は、登記上で登録されている事務所で保管されるものとし、常に営業時間中は閲覧出来るようにしなければなりません(181条3項)。また、会計帳簿の保存期間は12年とされており、関連する証憑と共に良好な状態で保存しなければなりません(181条5項)。また登記局などの調査が入る際には、帳簿類を提供しなければなりません。
これらの規定に違反した場合、会社役員は1年以下の懲役および10,000タカ以下の罰金が課されることになります(181条6項)。
■通貨・言語
会計帳簿については、ベンガル語と英語で、通貨はバングラデシュタカによる記帳が認められます。ただし、証券取引所への提出は、英語での記載が求められることがあります。
■バングラデシュ会計基準
バングラデシュ会計基準(BAS:Bangladesh Accounting Standards)及び財務報告基準(BFRS:Bangladesh Financial Reporting Standards)は、国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)を全面的に採用しています。
2003年以前のBASは、わずか16号までしか基準として規定されていませんでした。そのため、2003年度の世界銀行によるレビューでは、「国際的に受け入れられる基準に沿っていない」という指摘を受けました。また、世界銀行は、国内の会計基準を変更してIFRSに近づけるのではなく、直接的にIFRSを採用し、さらに監督機関(ICAB)を設定する事で、会計のフレームワークを改善するように促したという経緯があります。
これを踏まえバングラデシュでは、IFRSについてアドプションする部分と、コンバージェンスする部分とを評価する監督機関(ICAB)を設定し、IFRSに継続的に近づくように基準の設定と改廃を行ってきました。
■国際財務報告基準(IFRS)とは
国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)とは、かつての国際会計基準(IAS:International Accounting Standards)から発展した、ロンドンを拠点とする民間団体の国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)が設定する会計基準のことをいいます。「世界共通の会計基準」を目指して始まり、2005年にはEU域内上場企業に適用義務化され、現在は110以上の国と地域で採用されており、今後も広がっていくといわれています。
■国際財務報告基準(IFRS)と日本会計基準(JGAAP)の主な違い
ここでは、バングラデシュで適用されている国際財務報告基準と日本の会計基準の相違点を紹介します。
現在日本企業が主に用いている会計基準は、以下の3つになります。
・IFRS:欧州をはじめ、アジアでも採用されている国際財務報告基準
・JGAAP:日本の会計基準
・USGAAP:米国の会計基準
日本会計基準と国際財務報告基準の考え方の違いは、大別すると下記の2点になります。
1.細則主義と原則主義
2.損益計算書重視と貸借対照表重視
1.細則主義と原則主義
細則主義とは、細部までしっかりと規定し、恣意性をなるべく排して判断することを想定しています。一方原則主義は、細則主義とは反対に基本的な枠組みのみを規定し、細部についてはケースバイケースで判断することを想定しています。日本会計基準では細則主義を採用しており、会計処理のための判断基準や規定の内容を細部まで厳密に定め、企業会計の透明性を高めるように設計されています。
国際財務報告基準で採用されている原則主義は、原則のみを統一した基準のため、企業間での基準の認識の違いから、細部の比較可能性が損なわれてしまう可能性があります。また、企業の経理担当者が会計処理に対して、自ら基準適用の判断を行い、判断の根拠を示さなければならないという点において、経理担当者又は責任者が会計基準について精通している必要があります。また、原則主義であるため、どの会計基準を採用したか、なぜその採用を判断したか、どのように測定したか等、詳細な情報を開示する必要があります。
2.損益計算書重視と貸借対照表重視
日本会計基準で採用されている収益費用アプローチとは、損益計算書(IFRSでは純損益及びその他の包括利益計算書として表示される)を重視した考え方で、一会計期間の収益と費用の差である当期純利益を利益と考えます。一方国際財務報告基準で採用されている資産負債アプローチとは、貸借対照表(IFRSでは財政状態計算書として表示される)を重視した考え方で、資産と負債の差の増分を「利益」として考えます。
収益費用アプローチでは、企業の収益力を明確にすることを目的としています。つまり、一会計期間に区切って算出される純利益によって企業がどれだけの利益獲得能力があるかを明確にします。それに対し、資産負債アプローチは企業価値を明確にすることを目的としています。つまり、一会計期間での期首の純資産残高と期末の純資産残高を比較して、どれだけ増加したかという企業の存続性、成長性を明確にします。
日本で収益費用アプローチが採用されてきた理由としては、成長経済過程にあり、ものを作れば売れるという成長経済が続いていたために存続性、成長性は暗黙の前提として存在し、重要なのは一会計期間でどれだけの利益を出したか、という部分に債権者や投資家が注目していたためです。しかし、日本やほとんどの先進国で成長に限界が見え始め、債権者や投資家にとって重要な要素が利益を生み出す能力から存続性、成長性といった企業価値となっていき、単年度の利益よりも長期的な企業価値を重視する考え方に変わっていきました。そのため国際財務報告基準では、企業価値の開示を目的とする資産負債アプローチを採用しています。
次に、日本会計基準と国際財務報告基準の、一般的な論点、貸借対照表、損益計算書項目等の違いについて紹介します。
[一般的な論点の相違]
論点 | 国際財務報告基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
公正価値の測定 | 公正価値とは、測定日時点で市場参加者間の秩序ある取引 において資産を売却するために受け取る価格また は負担を移転するために支払う価格と定義されている 公正価値の測定は、評価の対象となる資産または負債が取引される主要な市場(主要な市場がない場合には、当該資産または負債に関する最も有利な市場)を参照する | 公正価値が使用される複数の会計基準において、それぞれ時価が定義されている 時価評価するにあたって参照すべき市場についての一般的な考え方は示されていないが、1つの金融資産が複数の取引所に上場されている場合には、当該金融資産が最も活発に取引されている取引所の取引価格を用いるものとされている |
会計方針の統一 | 親会社及びグループ企業において類似の状況における同様の取引は、統一された会計方針を用いて連結財務諸表を作成しなければならない | 同一環境下で行われた同じ性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は原則として統一しなければならない ただし、在外子会社が国際財務報告基準または米国会計基準で財務諸表を作成している場合、当面の間、特定の項目について重要性が乏しい場合を除き日本会計基準に修正することを条件として連結手続上利用することが認められている(会計方針を統一する必要はない) |
外貨建取引の 換算レート | 原則として外貨建取引を取引日の為替レートで当初認識するが、為替レートが著しく変動している場合を除き、平均レートを用いることができる 決算日の為替レートで換算する項目に対し、特定の平均レートを用いることは認められない | 原則として外貨建取引を取引日の為替レートで当初認識する。平均レートを用いることもできるが、為替レートが著しく変動している場合においても、平均レートの使用は禁止されていない 決算時の為替レートとして、決算日の為替レート以外に決算日前後の一定期間の為替レートに基づいて算出された平均レートを用いることができる |
[貸借対照表(IFRSでは財政状態計算書)項目関連の相違]
論点 | 国際財務報告基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
有形固定資産の 範囲 | 交換部品等有形固定資産の定義を満たす場合は、有形固定資産として会計処理される | 国際財務報告基準のような明確な規定はない |
耐用年数及び 残存価額 | 会計上の見積りによって決定される | 会計上の見積りによって決定される。ただし不合理と認められる事情のない限り、法人税法の規定に基づいて決定することが、実務上認められている |
有形固定資産取得の借入コスト | 有形固定資産か適格資産に該当する場合、借入費用を取得原価に算入する | 原則費用として計上する ただし、自家建設の場合、建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、取得原価に算入することができる |
のれんの償却 | のれんの償却は認められておらず、最低でも毎年一回、同時期に減損テストを実施しなければならない | のれんの計上後20年以内の期間にわたって、定額法又はその他の合理的な方法により規則的に償却する また、のれんは固定資産の減損に係る会計基準の適用対象資産となり、減損の兆候がある場合に減損テストを実施する |
棚卸資産の範囲 | 販売活動及び一般管理活動において短期的に消費される事務用消耗品等の取扱いについては、基準上明記されていないため、生産過程またはサービスの提供にあたって消費される原材料等に該当するか否かで判断する 交換部品等の取扱いは、1年を超えて使用すると予測される主要交換部品及び予備器具は、有形固定資産に含めて計上する サンプル品、カタログは、企業が広告宣伝活動及び販売促進目的のために、無償で提供することを意図したサンプル品に係る製造、購入コストは、販売用製品の製造に要したものではないため、棚卸資産ではなく発生時に費用処理する 企業の製品またはサービスについて記載したカタログも、広告宣伝・販売促進用資料の一種とみなされるため、棚卸資産には該当せず、発生時に費用処理する | 棚卸資産には、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる 交換部品やサンプル品、カタログに関しては、国際財務報告基準のような規定はない |
[損益計算書(IFRSでは純損益及びその他の包括利益計算書)項目関連の相違]
論点 | 国際財務報告基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
収益の表示 | 収益には、企業の計算により受領したか、受領しうる経済的便益の総収入だけが含まれる 代理人とし回収した金額は収益ではなく、手数料の額が収益となる。代理取引の判断指標が示されており、在庫リスクや価格決定権、経済的便益の流入に関するリスクの状況等を勘案して、本人か代理人かを判定することになる | 収益は総額によって記載することを原則とされている 消費税に関して、税抜方式が適当とされているが、一定の場合には税込方式についても認められている |
収益の認識 (物品販売) | 1. 物品の所有に伴う重要なリスクと経済的便益を買手に移転している 2. 販売された物品に対して、通常所有とみなされるような継続 的な管理上の関与も実質的な支配も保持していない 3. 収益の額を、信頼性をもって測定できる 4. その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高い 5. その取引に関連する原価を、信頼性をもって測定できる以下の要件のすべて満たす場合、収益を認識する | 実現主義の原則通り、商品等の販売によって実現したものに限り売上高を計上することとされるが、国際財務報告基準のような規定はない |
収益の認識 (サービスの提供) | 以下の要件のすべてを満たす場合、取引の進捗に応じて収益を認識する 1. 収益の額を、信頼性をもって測定できる 2. その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高い 3. その取引の進捗度を、期末日において信頼性をもって測定できる 4. その取引に関連する原価と取引の完了に要する原価を、信頼性をもって測定できる 取引の成果を、信頼性をもって見積ることができない場合には、収益は、費用が回収可能と認められる範囲内でのみ認識しなければならない | 原則として実現主義に従い、売上を認識するが、サービスの提供に係る収益の認識についての詳細な規定はない |
収益の認識 (工事契約) | 工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることができる場合は、進捗に応じて収益を認識する 工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることができない場合であっても、発生した工事原価のうち回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識する 工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることを妨げていた不確実性が存在しなくなった場合には、進行に応じた収益を認識する また、工事契約から識別される履行義務は、一時点において充足されるのではなく、あくまで一定期間にわたり充足されると見なすため、工事完成基準は適用されない | 工事契約の途中において、成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、確実性が認められない場合には工事完成基準を適用する 工事進行基準の適用要件を満たさないために工事完成基準を適用している工事契約について、その後に工事が進捗し、事後的に成果の確実性が増した場合であっても工事進行基準への変更は行わない ただし、本来工事の着手に先立って定められるべき工事契約の基本的内容が、事後的に決定された場合などは、その時点から工事進行基準を適用する |
[損益計算書(純損益及びその他の包括利益計算書)表示の相違]
国際財務報告基準 | 日本会計基準 |
収益 | 売上高 |
売上原価 | 売上原価 |
売上総利益 | 売上総利益 |
その他営業収益 | |
販売費及び一般管理費 | 販売費及び一般管理費 |
その他営業費用 | |
営業利益 | 営業利益 |
金融収益 | 営業外収益 |
金融費用 | 営業外費用 |
経常利益 | |
特別利益 | |
特別損失 | |
法人税等 | 法人税等 |
当期純利益 | 当期純利益 |
(比較のため単純化して表示しています)
・営業利益
日本会計基準と大きく異なる点は、国際財務報告基準での営業利益の考え方です。国際財務報告基準では金融収益及び費用を除いた、日本会計基準における営業外利益及び費用も営業利益に含まれます。
・経常利益
この項目は日本会計基準特有のもので、国際財務報告基準(及び米国会計基準)には存在しません。
・特別利益及び損益
国際財務報告基準では、特別利益及び損益の記載は認められていません。
■バングラデシュのIFRS導入状況
バングラデシュの会計基準は2019年8月現在、公表されているIFRSを採用しています。
なお、バングラデシュ会計基準は、商務省直下のバングラデシュ勅許会計士協会(ICAB:Institute of Chartered Accountants of Bangladesh)が主導となって設定されています。
【IFRS導入経緯】
BAS | タイトル | 経緯 |
7 | キャッシュ・フロー計算書 | 1999年1月1日から施行 |
11 | 工事契約 | |
12 | 法人所得税 | |
20 | 政府補助金の会計処理 及び政府援助の開示 | |
34 | 中間財務諸表 |
BAS | タイトル | 経緯 |
19 | 従業員の給与 | 2004年1月1日から施行 |
BAS | タイトル | 経緯 |
36 | 資産の減損 | 2005年1月1日から施行 |
38 | 無形固定資産 |
BAS | タイトル | 経緯 |
1 | 財務諸表の表示 | 2007年1月1日から施行 |
2 | 棚卸資産 | |
8 | 会計方針、会計上の見積もり 変更及び誤謬 | |
10 | 後発事象 | |
16 | 有形固定資産 | |
17 | リース資産 | |
18 | 収益 | |
21 | 外国為替レート変動の影響 | |
24 | 関連当事者の開示 | |
26 | 退職給付制度会計及び表示 | |
28 | 関連会社に対する投資 | |
31 | ジョイントベンチャー | |
33 | 1株当たり利益 | |
37 | 引当金、偶発債務及び偶発資産 | |
40 | 投資資産 | |
41 | 農業 |
BAS | タイトル | 経緯 |
23 | 借入費用 | 2010年1月1日から施行 |
27 | 連結及び個別財務諸表 | |
32 | 金融商品:表示 | |
39 | 金融商品:認識及び測定 |
BAS | タイトル | 経緯 |
29 | 超インフレ経済下における財務諸表 | 2015年1月1日から施行 |
BAS | タイトル | 経緯 |
1 | 国際財務報告基準の初年度適用 | 2009年BFRS1号として採用 |
2 | 株式報酬 | 2007年BFRS2号として採用 |
3 | 企業結合会計基準 | 2010年BFRS3号として採用 |
4 | 保険契約 | 2010年BFRS4号として採用 |
5 | 売買目的保有資産 | 2007年BFRS5号として採用 |
6 | 鉱物資源の探査及び評価 | 2007年BFRS6号として採用 |
7 | 金融商品:開示 | 2010年BFRS7号として採用 |
8 | 事業セグメント | 2010年BFRS8号として採用 |
9 | 金融商品 | 現在採用していない |
10 | 連結財務諸表 | 2013年BFRS10号として採用 |
11 | 組織再編 | 2013年BFRS11号として採用 |
12 | 他企業への関与の開示 | 2013年BFRS12号として採用 |
13 | 公正価値測定 | 2013年BFRS13号として採用 |
出所:バングラデシュ勅許会計士協会(ICAB)
■バングラデシュ会計基準の適用対象会社
バングラデシュ会計基準は、バングラデシュで事業を行う全ての会社に適用されます。ただし、2003年に実施された世界銀行のレビューにより、中小規模の事業体のための簡略化されたフレームワークを開発するよう勧められました。今後中小企業においては、会計基準の一部除外規定が検討されています。
■運用上の留意点
バングラデシュの会計基準は、2019年1月1日より国際財務報告基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)が取り入れられています。しかし、バングラデシュでは法律・税制度・会計などを含めた社会的なインフラが整然と確立されているわけではありません。また同時に、バングラデシュでは会計に関しての人材も十分ではなく、現地の会計事務所に会計業務を委託していたとしても、後々の税務調査などで帳簿等を確認された際に、記帳などの会計処理が適正に行われておらず、莫大な追徴課税を課せられるということも実際に起きています。また、進出直後の企業にとって会計などの管理業務にかけられるコストは決して高くなく、低コストで経験の浅い経理担当者を雇い業務を進めるケースがあります。こうした場合に、進出直後の会計記録等の不整備により、結果として数年後に修正のための追加コストや、税務調査等で不備を指摘され、莫大な追徴金を請求されるケースも散見されます。
バングラデシュは国際財務報告基準に準拠しているとはいえ、実際に会計実務に携わる人材のレベルが追いついていないため、進出直後は、本社の経理部門による監督を行い、現地の専門家をしっかり比較し信頼できる会計事務所等に依頼をするなど、留意する必要があります。
また近年では、現地税務署も企業の税務コンプライアンスに力を入れており、税務調査なども頻繁に行われているため、税務対策を重視する傾向が見られます。そのため、企業側も税務リスクに対する意識に傾倒し、社内の会計、経理関係の整備に意識が向いていかない傾向にあります。しかし、税務の基本は会計となるので、適切な人材又は専門家の選択が、リスクを回避する最も有効な対策となります。
+ .2 .会計の基礎知識とバングラデシュにおける会計
会計の基礎知識
■会計とは
金銭収支、財産の売買を中心とした経済的取引事象を、貨幣数値によって一定の方式により記録・計算・報告する制度又は行為をいいます。つまり、資金の流れだけでなく、資金と物の交換によって資金が増加したり、物が減少したりなどの記録も全て会計にあたります。
■経理とは
経理とは、経営管理の略称です。経営管理には明確な定義というのは存在しませんが、より企業の業務に繋がる資金の処理のことを指します。伝票の起票、帳簿記帳、請求、支払い、税金の申告、決算書の作成などが経理の仕事にあたります。また、経理が企業の資金を処理することにより、組織の目標達成のために、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を有効活用の仕方が見えてきます。最高経営層の意思決定となる役割を担っています。
■財務とは
財務とは、企業の資金繰り、予算管理、資金調達を担当する業務のことを言います。資金調達(銀行融資、債権・株式発行など)や、資金の運用(投資、M&Aなど)計画を考え、金融機関と折衝したりするため、専門知識だけでなく企画的な要素が含まれます。
企業によっては、経理担当者が財務も担当していること場合や、経理担当と財務担当を同じ部署(経理・財務部門)に配属させていることがありますが、経理と財務は役割が異なります。
しかしながら、財務担当が資金調達を行う時には、経理担当が作成した決算書をもとに仕事が進められることが多く、この2つの業務は密接な関係にあります。
■会計の基礎知識
会計は、「財務会計」「管理会計」「税務会計」と分けることができます。これらの3つは目的が異なり、依拠する法律も異なります。
財務会計 | 管理会計 | 税務会計 | |
会計の目的 | 会社の収益性・財政状態を適正に表示 | 会社の収益性・財政状態を適正に管理 | 税額算定の基準を作る |
保護対象 | 投資家や企業外部の利害関係者(投資家や債権者など) | 企業内部 | 国、納税主体 |
機能 | 企業の収益性を適正に投資家や債権者等の企業外部の利害関係者へ報告する。これにより、外部の利害関係者が企業に対し誤った判断を行わないようにする | 企業の情報を適正に管理、分析をすることで、企業内部の経営者や従業員の意思決定に資する情報とする | 税法を公平に反映させた会計という客観的な情報を元に、税額を計算することによって、税額徴収の恣意性を排除する |
[財務会計]
財務会計とは、企業の収益などの財務状況を企業の利害関係者へ可視化して伝えることを目的とする会計のことです。利害関係者は、投資家や株主、債権者、取引先、仕入先などのことを指します。外部関係者は、企業から得たその企業の財務状況の情報を元に投資や取引の意思決定を行います。
財務会計の公表は、決算書(財務諸表)を元にして行われます。これは、貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書などを含みます。
[管理会計]
管理会計とは、企業の内部の人が意思決定をするときに参考にする会計のことです。企業内部向けとなるため、法的な規定はなく、企業によって自由に会計処理の仕方を工夫することが可能です。
管理会計のための資料は、作成が義務とされていないため不必要あるいは優先順位が低いと思われがちです。しかしながら、商品やサービスの価格設定や戦略、その他の費用などの企業内での資金の使い方などの意思決定をする際、管理会計上の資料は重要な位置づけとなります。
[税務会計]
税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。法人税法などの規定に従って行われ、国および地方自治体が課税する税金を計算するうえで用います。つまり、税務申告などで必要とされるといえます。
■バングラデシュの会計実務
[会計ソフトウェア]
バングラデシュでも経理を行う上で、会計ソフトを利用することができます。バングラデシュで主に利用されているソフトウェアは、TallyやQuickBooksです。
< QuickBooks >
アメリカのIntuit社が提供している会計ソフトで、アメリカでも中小企業の8割が利用しているといわれています。
バングラデシュでも最も知られている会計ソフトです。外貨にも対応しており、CustomerやVendorの取引が見やすくなっています。また他のシステム(給与システムや在庫管理システムなど)と連動しやすくなっています。
もともとはアメリカ発祥で、かつ外貨対応しているという面もあり、アメリカ通貨を利用しているバングラデシュでは利用しやすい会計ソフトだといえます。
<Tally>
Tally Solutions Pvt. Ltd.が販売しています。インドでは最も普及している会計ソフトで、他にインドネシアでも利用されています。
企業の成長に伴って様々な機能を追加していくことができる柔軟性を持ちます。また、Tallyの在庫管理システムは、企業ごとの異なったニーズに対しても柔軟に対応することができるため、どのような企業にも広く受け入れられやすい会計ソフトだといえます。
■バングラデシュ会計制度の課題
勅許会計士不足
バングラデシュは、以前に世界銀行のレビューにおいて、「バングラデシュの人口はおよそ1億5,000万人いるが、会計士の数はおよそ750名しかおらず、経済成長中としては少なすぎる」と指摘されました。
これを受けてバングラデシュでは、バングラデシュ勅許会計士協会(ICAB: Institute of Chartered Accountants of Bangladesh)と英国の同協会と提携して会計士の養成を目指すこととなりました。2011年度には、会計士の数も1,000名を超え、近年では約2,000名を超えるまでに増加しており、今後も経済成長と共に会計士の数も増加していくことが期待されています。
+ .3 .バングラデシュの開示制度
バングラデシュの会計収支開示制度
■開示制度の概要
バングラデシュの開示制度は、会社法や証券取引法を核としたダッカ証券取引所ルール、チッタゴン証券取引所ルールにより規定が定められています。また、有価証券報告書の内容は、バングラデシュ会計基準に準拠する事が求められています。
■バングラデシュの証券取引所
バングラデシュには1954年に設立されたダッカ証券取引所(DSE:Dhaka Stock Exchange Ltd.)と1995年に設立されたチッタゴン証券取引所(CSE:Chittagong Stock Exchange Ltd.)の2つの証券取引所が存在します。上場数としては、DSEの方が多く650社規模(2023年4月時点)の市場になっており、CSEは370(2023年4月時点)社規模の市場で構成されています。
DSEではインターネット取引システムは導入されていませんが、バングラデシュで最大規模の市場になっていますので、国内の資金調達に有用です。CSEにはインターネット取引システムが導入されているため、海外にネットワークを拡大していますので、海外からの資金調達に有用な市場になっています。
全ての会社に対して会計監査人による監査を要求しています。そのため、中小企業であってもIFRS及びIASの原則を理解し、実務に適用していかなければなりません。
■開示内容とスケジュール
バングラデシュで活動する全ての企業は、年度末に財務報告を中心とする年次報告を行う義務を負います。バングラデシュの会計期間は任意で、15カ月以内の期間(登記局で18カ月まで延長する事が可能)を設定することができます。そして、定時株主総会は1年に一度以上かつ前回の定時株主総会から12カ月以内に開催されなければなりません(会社法81条1項)。
開示の内容は、国際的にも整合性のとれたものとなっています。
(1)開示スケジュール
非上場企業の場合、定時株主総会への年次報告書の提出とその後の登記局への通知が必要となります。
会社は、監査人による監査報告書を添付した財務諸表等を定時株主総会に提出、承認を受けた後、当該定時株主総会終了後30日以内に、登記局へ開示書類の提出をします(190条1項)。
また、財務諸表については、定時株主総会開催前の21日間以上の期間、登記局に登録された事務所に備え付けておかなければなりません。
(2)開示内容
貸借対照表(Balance Sheet)
損益計算書(Income Statement)
株主資本等変動計算書(Statement of changes in equity)
キャッシュ・フロー計算書(Cash flow Statement)
会計方針及び注記(Accounting policies and explanatory notes)
経営者報告書(Board Reports)
上記は、開示内容になりますが、公開会社の子会社以外の非公開会社の損益計算書については、登記局に提出しても、関係者以外の閲覧、謄写は禁止になっています(190条1項)。
経営報告書の内容は1.事業内容の説明 2.留保利益の金額 3.配当金額 4.重要な後発事象などの記載が求められています(184条1項)。また上記の内容は、監査人からの監査を受けている必要があります。
※2022年頃より、DVS(Document Verification System)が導入され、監査人が監査を行った財務諸表に対しDVC(Document Verification Code)というコードを発行するようになりました。そのシステム・コードは商業登記所内の基幹システム、バングラデシュ監査法人協会のシステムと連動しており、二重帳簿やその他不正の撲滅、監査基準の維持を目的としています。
また上述の開示内容に加え、以下の書類を商業登記所に届出る必要があります。
・Schedule-X (商業登記所所定フォーマット)
・定時株主総会決議書
・監査人委任状
・Form23B
上場企業の場合、定時株主総会及び登記局への開示については、非上場企業と同様のスケジュールとなっています。
加えて、上場企業は事業年度終了後120日以内に監査を終了しなければならず、監査期間終了後、21日以内に証券取引所へ開示書類を提出する必要があります。
■設立時開示スケジュール
バングラデシュの会社法によれば、会計期間は任意で15カ月以内の期間で設定することができます。また、登記局が認める場合には、会計期間を18カ月まで延長することが可能です(会社法183条4項)。
会社は設立後18カ月以内に、最初の定時株主総会を開催しなければならず、登記局が認める場合には、この開催期限からさらに90日間の延長が認められます(会社法81条1項)。
設立時株主総会においては、貸借対照表、損益計算書)を作成しなければなりません(会社法183条2項)。
■開示業務に関する罰則規定
バングラデシュ会社法には、開示業務に違反する者に対する罰金又は禁錮刑の規定があります。これらの様々な規定に対して罰金又は禁固の規定があります。
Ⅰ.定時株主総会の開催期間又は備置期間が法律に違反する場合
◇違反した取締役は5,000タカ以内の罰金が科されます。
Ⅱ.財務諸表の様式が法律に違反する場合
◇6カ月以下の禁固(故意によらない場合を除く)又は5,000タカの罰金もしくは双方が適用されます。
Ⅲ.財務諸表等への署名
◇署名義務に違反した者は、6カ月の禁固又は2,000タカの罰金もしくは双方が適用されます。
Ⅳ.登記局への財務諸表等の写しの提出
◇違反期間につき、1日当たりにつき200タカの罰金が適用されます。
■監査制度
バングラデシュでは、バングラデシュ勅許会計士協会(ICAB:Institute of Chartered Accountants of Bangladesh)が監査主体として機能しています。ICABは、バングラデシュの勅許会計士の養成及び試験を行い、現地の勅許会計士のスキル向上に寄与しています。この結果、徐々に勅許会計士の数が増加している状況です。
バングラデシュの監査基準は、国際監査基準とのコンバージェンスを進めていますので、国際監査基準と整合的な基準になっています。また、実質的にも国際化に対応できる会計士を育成するという趣旨で、全ての試験は英語で行われます。
バングラデシュでは、全ての会社に対して会計監査人による監査を要求しています。そのため、中小企業であってもIFRS及びIASの原則を理解し、実務に適用していかなければなりません。
+ .4 .バングラデシュの監査制度
バングラデシュの監査制度
■監査対象企業
バングラデシュでは、国内で事業を行う全ての法人(外資企業を含む)が監査を受けることが義務づけられています。(186条)
■監査人の資格
バングラデシュ公認会計士学会より資格を得た人に監査資格があります。(212条)
+ .5 .参考文献
参考文献
・e-standard forum –financial standard foundations
http://www.estandardsforum.org/
・ APPLICATION OF INTERNATIONAL ACCOUNTING STANDARDS (IAS)IN BANGLADESH
http://accountingpapers.blogspot.com/
・ The Institute of Chartered Accountants of Bangladesh:ICAB
http://www.icab.org.bd/
・ International Financial Reporting Standards:IFRS
http://www.adoptifrs.org/
・ Office of the Comptroller and Auditor General of Bangladesh:OCAG
http://www.cagbd.org/
・ Securities and Exchange Commission, Bangladesh
https://sec.gov.bd/
・THE WORLD BANK
http://www.worldbank.org/
・ BLiTZ: Comprehensive Tabloid Weekly
https://www.weeklyblitz.net/1236/red-signal-for-bangladeshi-government
・Companies (2nd Amendment) Act, 2020
