高度化貿易
■ 貿易自由化とタイの産業競争力
ASEAN域内では、1980年代末以降のBBC(ブランド別自動車部品相互補完)やAICO(ASEAN産業協力)を通じて製造業の域内分業が進みました。その後、CEPT-AFTAによる関税削減が進められ、2009年に署名されたASEAN物品貿易協定(ATIGA)が2010年5月17日に発効しました。こうした制度は、自動車をはじめ、部品を国境を越えて調達する製造業の域内サプライチェーン形成を後押ししました。ただし、自由化の利益を最も多く受けた産業を一つに特定するには、産業横断の比較資料が必要です。
また、タイとインドは2003年の枠組協定に基づき、包括協定に先行して一部品目の関税を削減するアーリーハーベストを実施しました。これは、協定批准前に一般的に関税の減免を適用する制度ではなく、包括交渉に先行して特定品目を自由化する措置です。
ミャンマーでは2011年以降に民政移管が進みましたが、2021年2月1日の軍事クーデター後、政治・人権・治安上の不確実性が高い状態が続いています。タイにとってミャンマーは国境を接する重要な相手国ですが、投資先としての評価では政治・制裁・人権・サプライチェーン上のリスクを併記する必要があります。2001年に発足したタクシン政権はFTAを積極的に推進しました。
タイは二国間・地域間の経済連携を拡大してきました。日タイ経済連携協定は2007年4月3日に署名され、同年11月1日に発効しました。タイ・豪州FTAは2004年7月5日に署名され、2005年1月1日に発効しています。
一方、バーレーンとの2002年の合意はCloser Economic Partnershipの枠組協定であり、完成した包括的FTAと同列に扱うべきではありません。協定を列挙する場合は、枠組協定、署名済み協定、発効済み協定を区別する必要があります。
EUとタイのFTA交渉は2013年3月に始まり、2014年に停止した後、2023年3月に再開されました。EFTA(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)との交渉は2024年11月29日に妥結し、協定は2025年1月23日にダボスで署名されました。2026年7月14日現在、EFTA・タイFTAは発効待ちです。英国とは2024年9月にEnhanced Trade Partnershipが締結されましたが、これはFTAではありません。
1997年のアジア通貨危機後、タイの経常収支は貿易黒字を主因として概ね黒字基調へ転じました。ただし、危機の原因を貿易収支の悪化だけに求めることはできません。経常赤字に加え、短期対外債務の増加、外貨準備とのミスマッチ、為替リスク管理の不足、不動産・金融部門の脆弱性、固定的な為替制度への投機圧力などが重なりました。2012年の輸出動向については、統計の定義を特定できないため、「前年比2.3%増」との数値および中国経済の低迷だけを原因とする記述を削除しました。
EUとタイのFTA交渉は2013年3月に開始され、2014年に停止した後、2023年3月に再開されました。
タイは輸出先の多様化と貿易収支の安定化を図るため、二国間・地域間の経済連携を進めてきました。
EFTAとの交渉は2022年に再開され、2024年11月29日に妥結し、2025年1月23日に協定が署名されました。2026年7月14日現在、協定は発効待ちです。
ASEAN経済共同体(AEC)は2015年に発足し、物品・サービス・投資の自由化、熟練労働者の移動円滑化、資本移動の一層の自由化を目標として統合を進めました。ただし、非関税障壁や国内規制は残っており、完全な自由流通を実現した単一市場ではありません。
RCEPはASEAN10か国と中国、日本、韓国、豪州、ニュージーランドの15か国が2020年に署名し、タイについては2022年1月1日に発効しました。参加国のGDP合計などの尺度で世界最大規模のFTAとされます。関税削減や原産地規則の共通化を通じ、域内取引と供給網の円滑化が期待されますが、タイの輸出を「大幅に拡大した」と評価するには事後データによる検証が必要です。
EUとタイのFTA交渉は2023年3月に再開されました。また、EFTAとの交渉は2024年11月29日に妥結し、2025年1月23日にダボスで協定が署名されました。これはタイにとって初の欧州地域とのFTAです。協定15.5条に基づく各国の批准・受諾・承認手続きを経る必要があり、2026年7月14日現在は発効待ちです。
英国とは2024年9月18日にEnhanced Trade Partnershipが締結されました。これはFTAではありませんが、両国間の貿易・投資関係の強化に向けた協力枠組みです。
このように、タイは多国間協定や二国間の協力枠組みを活用し、輸出市場の多様化と域内取引の円滑化を進めています。
全体として、タイの自由貿易政策は、経済発展と国際的な経済連携を支える重要な手段となっています。
タイは、アジア地域の近隣国をはじめとする各国との貿易円滑化を進めています。
タイはメコン地域の製造・物流拠点の一つとして位置づけられています。なお、タイ周辺諸国への輸出額が上位3か国との差を縮めたとの記述は、比較年、対象国、金額および根拠となる統計を特定できないため削除しました。
タイの製造業では、部品等の一部を日本から輸入する取引構造がみられます。対日貿易の品目構成や収支を説明する場合は、対象年、輸出入の向き、品目分類および財務省貿易統計の表番号を明示する必要があります。
タイの対日貿易に関する図表は、出典、データ年、単位、作成者および転載許諾の確認が必要です。
■ 変化を遂げたタイの産業構造
タイ経済は、農業中心の構造から、輸出型製造業とサービス業の比重が高い構造へ移行してきました。1980年代後半以降は海外直接投資が増え、自動車、電子・電機などの製造業集積が進みました。
近年はサービス業がGDPの過半を占める一方、製造業は約3割、農業は1割未満となっており、製造業の高度化とサービス生産性の向上がともに重要な課題です。
存在感を増すタイの自動車産業
タイはASEAN最大級の自動車生産拠点で、「アジアのデトロイト」と呼ばれることがあります。自動車産業を支えるサプライヤーの裾野が広いことは、タイの製造業集積の特徴の一つです。
2011年の東日本大震災やタイの大洪水は、自動車部品のサプライチェーンに大きな影響を及ぼしました。
タイの四輪車生産は2005年に100万台を超え、2012年には2,453,717台に達しました。その後は年ごとの変動があるものの、2015年約191万台、2016年約195万台と推移しました。
四輪車生産台数は、2017年約199万台、2018年約217万台と推移しました。企業別の電動化戦略については、モデル名、工場および量産開始日を各社の公式発表で確認できない記述を削除しました。
四輪車生産台数は、2019年約201万台、2020年約143万台と推移しました。2020年はCOVID-19の影響により生産が減少しました。
その後の四輪車生産台数は、2021年約169万台、2022年約188万台、2023年約184万台と推移しました。2024年の生産は1,468,997台で、前年から約20%減少しました。タイ政府は、2030年に自動車生産の30%をZEV(ゼロエミッション車)とする「30@30」目標を掲げ、投資優遇や需要喚起策を進めています。ここでいう目標は広義の「電動車」全体ではなく、原則としてZEVを対象とします。企業別の生産動向を記載する場合は、モデル名、工場、量産開始日を各社の公式発表で確認する必要があります。シリーズ式ハイブリッドであるe-POWERなどをBEVと同一視してはいけません。
タイの電子産業
タイは電子・電機の主要な生産・輸出拠点の一つであり、政府はBOIの投資優遇等を通じて産業の高付加価値化を促進しています。
2010年代以降、政府は「Thailand 4.0」やBOIのスマート電子分野への投資促進策などを通じ、従来型の電気・電子産業から、研究開発や高付加価値分野への移行を促してきました。
2011年の洪水後には、復旧支援や水管理・事業継続の見直しが進みました。ただし、その成果を評価するには、具体的な政策名、実施機関、開始日、予算および成果指標の確認が必要です。
2020年代には、スマート電子、半導体、IoTなどの高付加価値分野への投資促進が進められています。
環境配慮型の製造やエネルギー利用に関する取り組みについて成果を論じる場合は、政策名、実施時期および成果指標を示す必要があります。
2021年のBOI資料では、AI、機械学習、ビッグデータ、データ分析を用いた生産性向上投資も支援対象として示されています。タイが電子・電機の主要拠点の一つであることと、政策がその地位を確立したという因果評価は分けて記述し、成果を論じる場合は輸出額、生産額、投資額などの指標を示す必要があります。
